日プロ賞で大林宣彦が高畑勲に感謝「あなたの分も引き継いでがんばる」

第27回日本映画プロフェッショナル大賞の授賞式が4月26日に東京・テアトル新宿にて行われ、特別功労賞を受賞した大林宣彦が登壇した。

最新作「花筐／HANAGATAMI」に出演した満島真之介らに支えられて舞台に上がった大林は「控室でずいぶん仲間に会いました。映画人に囲まれているといつもいい顔になって幸せになります」と笑顔で挨拶。続けて「私はいつも1人のアマチュアとして映画作家と名乗り、自分が信じることだけをやればいいのですごく自由に映画を作らせていただいていたんです。今日功労賞をいただけたということで、皆さんの中で個人的に考えて責任を持ってやることが一番いいことなんだという時代になってきたのかなと思います」とゆっくりと語る。

さらに大林は「同世代の仲間はどんどんいなくなってきています。親友の高畑勲さんを亡くしたばかりですが、この喜びは高畑さんとも分け合いたい」と話し、上を見上げると「高畑勲さん、ありがとうね。よくがんばってくれた。僕より少し先に行っちゃったけどあなたの分も引き継いでがんばるから。若い人たちが僕らのあとを引き継いで、映画のかなたには平和があるというフィロソフィを持った素晴らしい作品を作ってくれると思います」と天国の高畑に向けて呼びかけた。プレゼンテーターを務めた選考委員で映画評論家の樋口尚文は「花筐／HANAGATAMI」について「監督とは41年くらいのお付き合いなのですが、私が知っている大林さんの中でもっとも若く、生とエロスが爆裂しているものをお撮りになった」と驚嘆し、「みんなただ崇めるんじゃなく、血湧き肉躍る監督に挑発されてがんばると思います」と述べた。

舞台には「愚行録」で新人監督賞に輝いた石川慶も登壇した。同作の出演者でプレゼンターとして登場した満島ひかりは、撮影を振り返り「すごく新鮮な現場でした。今までの監督さんたちと違う感じの危うさがあって。エチュードが多くてほかの俳優さんと一緒に悩みながら撮影した。一番苦しい場面でも静かに見守ってくださっていたのが印象的です」と語る。そして、「また一緒にやりたくて、すでにいくつか台本を渡されています」と明かす。本作が長編第1作となった石川は「満島さんが来るのを直前まで知らなかったので、考えてきたことが頭から飛んでいます」と動揺を見せるも、「（本作と）心中するくらいのつもりで撮らせてもらった。満島さんと妻夫木（聡）さんが楽しんでくれたので成り立ちました。役者さんと一緒に悩みながら作らせていただいて大事な作品になりました」と感謝を述べた。

そのほか特別賞にはピンク映画を作り続けるOP PICTURESの長年の活動に対して大蔵映画常務取締役・田中信が選出され、女優の友田彩也香がプレゼンターを務めた。観客賞は「あゝ、荒野」が受賞し、企画・製作を担当したスターサンズ代表取締役の河村光庸が主演・菅田将暉のメッセージを読み上げた。菅田は「『「あゝ、荒野』には個人的な強い思いが1つありました。それは人と人が交わったときにのみ起こる熱量をどうか忘れないでほしいということです。生きている人間が本気でやったからこそ作れたものが好きです。叫びすぎて枯れた声、泣きすぎて腫らした目、僕らを支えてくれるスタッフさんの目の下の隈があってこそ人は感動します。嘘だと思っているにも関わらず映画を観て涙を流します。僕らの汗臭い熱量が観客の皆さんに伝わり、このような素敵な賞を受賞できたのだと思います。これからも皆さんが熱くなれるものを作るよう精進していきます」とコメントした。