ナタリードラマ倶楽部 Vol. 20 [バックナンバー]
「企画書はどう通す?」「攻めた作品とは?」若手ドラマプロデューサーが“ドラマの今”を語り尽くす座談会
ドラマの企画はセルフブランディングが鍵
2026年3月13日 13:30 3
今、若手プロデューサーが作るドラマがアツい!
日々さまざまな価値観がアップデートされる中、20代~30代前半の作り手ならではの感覚で、ヒーリングドラマと呼べる優しい物語や“王道だけど令和らしい”アプローチの作品が多数生まれている現代のドラマ業界。ドラマについて取り上げる連載「ナタリードラマ倶楽部」のVol. 20では、キャリア10年目以下のプロデューサーたちに“ドラマ業界の今”を語ってもらう座談会をお届けする。
参加者は高橋眞智子(共同テレビ)、
取材・
座談会参加者プロフィール
高橋眞智子(共同テレビ / 2016年入社)
担当作品:「
佐井大紀(TBSテレビ / 2017年入社)
担当作品:「
※映画監督として、ドキュメンタリー「
南野彩子(NHK / 2018年入社)
担当作品:「
加瀬未奈(テレビ東京 / 2019年入社)
担当作品:「
局・会社ごとに異なるドラマプロデューサーまでの道のり
──今日はドラマプロデューサーとして活躍されているキャリア10年目以下の皆さんに、会社の垣根を越えていろいろとお話しいただきます! まずはそれぞれ入社されてからどんな職種を経験されてきたのか、簡単に教えていただけますか?
高橋眞智子(共同テレビ) 就活の際に部門別採用で分かれていたので最初からドラマ部志望で受けて、同期4人がプロデューサー志望かディレクター志望かで分かれることになり、私はプロデューサーコースになりました。AP(アシスタントプロデューサー)を約5年やったあと、担当した連ドラのスピンオフ作品のプロデューサーを初めて担当させてもらい、その後もAPとPをやりながら年次を重ねて今に至る感じです。運とタイミングによりますが、弊社では5、6年目ぐらいでプロデューサーデビューする人が多いです。
南野彩子(NHK) 私はディレクター職で採用されました。私が採用された年は、1年目から東京以外の各地に配属されることが多かったです。100人くらいいるディレクターの同期が、研修後に順番に呼ばれて、人事から「あなたは北海道」「あなたは福岡」と配属地が発表されるんです。待機場所に戻ってきた人からホワイトボード上の日本地図に名前を書いていく、みたいなことがありました(笑)。
佐井大紀(TBS) ダーツの旅みたい(笑)。
南野 出身は東京なんですが、最初の配属は滋賀県の大津局。2年半くらいは報道の仕事で高校野球の中継や台風中継、ドキュメンタリーを作ったりして、そのあと大阪に異動してからはニュースの立ち上げや「バリバラ」という福祉番組を担当しました。ドラマ部に行けたのは4年目で、朝ドラ「カムカムエヴリバディ」(2021年度後期)が初めて参加した作品。扮装担当として、「何話くらいから昭和何年になって、服の流行りはこう変わって……」といったことを監督や扮装部さんと一緒に考えていました。助監督から始まって、自分で企画を出した特集ドラマ「忘恋剤」の演出をやり、2023年に「パーセント」というドラマで初めてプロデューサーを務め、そこからはプロデューサー業をメインにやっています。脚本を作るときって取材がすごく重要なのですが、その題材やテーマを深掘りしてどう物語にするか作家さんにご提案するときに、滋賀での報道経験はめちゃくちゃ大事だったなと思っています。
加瀬未奈(テレビ東京) 私はずっと映画、演劇、ドラマ、アニメ、マンガ、ゲームが全部好きで、アニメ志望でテレビ東京に入りました。最初の面談で「何がしたいの?」と聞かれて、「とりあえず新しいことがしたいです」と言ったら、初配属がビジネス開発部という新しい事業を生み出す部署。4年間の間にVTuberドラマ「四月一日さん家と」(2020年)のAPをやったり、お笑い×映画バラエティ「アルコ&ピースのメガホン二郎」(2022~2023年)のプロデューサーをやったりして、5年目にドラマを志望して異動してきました。ドラマを志望したのは、番組の一貫で松居大悟監督とショートフィルムをご一緒させていただいたのがきっかけです。1番最初に通った企画がドラマ「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」(2024年)で、続けて「ひだまりが聴こえる」(2024年)という作品も企画しました。
──ではドラマの制作現場での下積み期間は……?
加瀬 ほとんどないので大変です(笑)。最初は現場の苦労が見える範囲でしかわからなかったので「もっと想像力を働かせないとダメだ」と思いましたし、自分が勉強を怠ってはいけないなと感じました。今、ショートドラマにも携わっているんですけど、予算が少ない分、香盤表をプロデューサーが作ったりすることもあるんです(※編集部注:本来は制作部の助監督が作る場合が多い)。なので今ショートでようやく勉強できているという状況。順番が逆になっちゃったんですけど、現場で助監督さんの動きを見て、自分でも手を動かしたほうがいいのかな……とかいろいろ考えています。
佐井 僕はドラマ志望でTBSに入社して制作の部署に配属され、最初の半年間はバラエティ番組「マツコの知らない世界」のADをしていました。ドラマ制作部では、一番下のADとして出番の役者さんを呼びに行ったり、スタッフにトランシーバーを配ったりする仕事を最初の1年半ぐらい、美術や小道具の準備・管理をするサードADを1年ぐらいやって、APになり、ちゃんとプロデューサー表記されたのは妻夫木聡さん主演の日曜劇場「Get Ready!」(2023年)が最初です。その間、社内の公募で朗読劇の企画をやったりドキュメンタリー映画を撮ったりもしてきましたが、基本はドラマ部で仕事をしてきました。働き方改革やコロナ以降でペースが変わってきて、プロデューサーに上がる速度は早まっていますが、それでも6、7年目で上から3番目のプロデューサーぐらい。自分の企画が通るか、あるいはそれまでの仕事が認められるとチーフプロデューサーを任されるんですけど、それも早くて9、10年目じゃないですかね。
──話を進める前に読者のためにもイメージを共有しておきたいのですが、すっごく雑な聞き方なんですけど、プロデューサーの仕事ってドラマ「ブラッシュアップライフ」(2023年)の主人公・近藤麻美の3周目の感じで合っていますか?
高橋 友達から「なんの仕事してるの?」と聞かれたら「『ブラッシュアップライフ』の主人公みたいなイメージ」って言っています。もちろんあの中には描かれていない、地味で泥臭い仕事もあるんですけど(笑)。
リアリティとフィクションのバランスが変わってきた?
──では、ドラマを企画したり、脚本家や監督たちと脚本の打ち合わせをしたり、撮影現場でのトラブルに対応したり……と、そんなに雰囲気は外れていない前提で進めさせていただきますね。もともと皆さんドラマ志望で、世代も近いですが、学生時代に熱中したのはどういった作品ですか?
加瀬 最初は「探偵学園Q」(2007年)ですね。小学校5年生のときだったんですけど、あの頃の日テレドラマをめちゃくちゃ観ていた世代です。「マイ☆ボス マイ☆ヒーロー」(2006年)とか。
佐井 土曜日の21時からですね!
加瀬 そうです! あれで一気にドラマ好きになりました。自分が“人が死ぬドラマ”が好きだと気付いたのは高校~大学ぐらいの頃で、「ウロボロス~この愛こそ、正義。」(2015年)とか、最近の作品だと「MIU404」「テセウスの船」(ともに2020年)とかも好きですね。
──だから殺し屋(「ベイビーわるきゅーれ エブリデイ!」)や、表社会では解決できないトラブルを引き受ける裏用師(りようし / 「俺たちバッドバーバーズ」)の物語を企画されるんですね(笑)。
高橋 私は小さい頃から「やまとなでしこ」(2000年)を観て“CAさんいいな”と思ったり、「anego[アネゴ]」(2005年)を観て“
南野 激しく同意です! ドラマの主人公が着ている衣装が欲しくなるし。「獣になれない私たち」(2018年)の主人公・晶(
佐井 小学生のときはフジテレビの「ランチの女王」(2002年)とかを観ていましたね。中学ぐらいからはテレ東のドラマ24枠をよく観ていて、
──当時熱中したドラマと最近のドラマで、違うなと思うところはありますか?
加瀬 最近のドラマはよりリアルさを求められるなと感じます。昔って、カウボーイとギャルが恋したり(「ギャルサー」 / 2006年)、とんでもない設定のドラマが普通にゴールデン帯で放送されていたじゃないですか。今それをやらないのはなんでなんだろうと考えていたのですが、SNSが普及して1人の意見がどんどん拡散される時代に、細かい設定の粗さが気になる人の拡散力が大きくなってきていることも1つの要因なのかなと。リアリティとフィクションのバランスみたいなものが変わってきたのかなと思っていました。
南野 当時流行っていた作品って学園ドラマが多かったですよね。「花より男子」シリーズ(2005年~)や「花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~」(2007年)など……。すっごくお金持ちな登場人物や、華やかな家や衣装に、子供の頃は「素敵だなあ」と憧れていたんですけど、いざ自分が作る立場になると“20代女性キャラクター”の生活を“20代女性の自分”と照らし合わせて「こんな家には住めないな」と考えてしまう。東京タワーが見えるマンションなんて!と(笑)。一方で、ドラマとして楽しんでもらうためには衣装やお部屋が心ときめくものであることも求められている気がしています。「大豆田とわ子と三人の元夫」(2021年)の主人公の部屋にあったおしゃれな水色の壁紙とオレンジのソファみたいな。リアルとときめきのあんばいを探っている感覚ですね。
佐井 思ったのは、「もう“お茶の間”というものがないのかもしれない」ということ。僕らは小さい頃、面白い番組やドラマについて次の日学校で「あれ観た?」という話をしてきましたが、今はリビングでYouTubeを観ている子供も多いですよね。音楽業界で言うと、サブスクなどの登場によってCDが売れるサイクルが崩壊したのと同じように、今はドラマも「ヒットしている」ことの定義自体がかつてより不明確で、誰に向けて作ればいいのかわかりづらくなってきたところが一番大きな違いなんじゃないかなという気がします。逆に言うと、作ったら一定数には必ず届いてSNSには支持する声があるから、大ヒット作もないけど大失敗もないのかもしれない。数字的には大失敗もあるのでしょうが、作品数が少なくないので均一化されている印象もあります。ずっとそういうフィールドで作っていくのか、変わっていくのかはわからないけど……。
高橋 エンタメの媒体が多すぎるのですが、時間が有限なことは変わらないし、どこか1つの媒体に集中することはないはず。みんな取捨選択して自分の好きな作品を観るから、さっき佐井さんもおっしゃっていたように大ヒットもなければ大コケしている作品も少ないのかなと感じています。ただ、私は「silent」(2022年)の情報が解禁されたとき、あそこまでヒットするとは予想できませんでした。気付いたらSNSから火がついて、あんなに若い人たちが観るドラマになっていたのはすごいなと。こんなに世を動かし、若い子が行動するきっかけになったドラマがあることで、昔ほどテレビドラマが主流ではない現代でも、爆発的にヒットする作品が今後も出てくる可能性はあるのかも、と信じたくなりました。
企画を通すためには“セルフブランディング”が鍵
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結騎 了 @slinky_dog_s11
「配信・ネットだと地上波より攻めた描写が許される(作り手と受け手にうっすらこの共通認識が存在する)」という肌感の見事な言語化だ。
>配信だと、自分の欲求のもと選んで観ているから“同意”があると思うんですけど、地上波の番組は同意がない状態で目に入る可能性もある。 https://t.co/MNow6Qna3A