チョ・ジョンソクが主演を務める映画「PILOT ー人生のリフライトー」が、4月3日より全国で公開される。韓国で観客動員数470万人を超えるヒットを記録した本作は、一夜にして人生が墜落したスターパイロットが妹になりすまして再起を図る物語だ。「賢い医師生活」シリーズのチョ・ジョンソクが主人公ハン・ジョンウを演じ、イ・ジュミョン、ハン・ソナ、シン・スンホ、ソ・ジェヒが出演。監督は「最も普通の恋愛」のキム・ハンギョル、脚本は「結婚はしていませんがバツイチです」のチョ・ユジンが担当した。なおチョ・ジョンソクは本作での演技が高く評価され、第61回百想芸術大賞 最優秀男性演技賞(主演男優賞)を受賞している。
映画ナタリーでは、映画好きで知られるドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダにインタビューを実施。男尊女卑、ジェンダー格差、セクシュアルハラスメント問題といったテーマをコメディタッチで描いている「PILOT ー人生のリフライトー」をどう観たのか。チョ・ジョンソクの“女装”、女性らしい表情やしぐさには「合格!」と太鼓判を押す。撮影では本作のポスターをイメージして、ドリアンが表現する“変身の魔法”“個の美しさ”をカメラに収めた。フォトギャラリーにも注目を。
なおインタビュアーは、ドリアンと親交の深い映画ライター・よしひろまさみちが担当。2人の仲が垣間見える掛け合いもお楽しみに。
取材 / よしひろまさみち撮影 / 清水純一
映画「PILOT ー人生のリフライトー」本予告公開中

観る人の心をホッとさせるような作品
──チョ・ジョンソクが女性に偽装するパイロット役を演じた「PILOT ー人生のリフライトー」。率直にご感想は?
肩の力を抜いてクスッと笑ってしまうような、全体的に優しい、観る人の心をホッとさせるような作品ですよね。最近、いわゆるクィア映画は、いろいろな風合いのものがあります。シリアスなものからコメディまで、さまざまなものがある中で、こういう「フフフ」って笑えるような作品はあまりなかったですし、むしろこういう軽快な作品も必要だと思うんです。
──映画をたくさんご覧になっているドリアンさんですが、韓国映画はどれくらいご覧に?
それがですね……。どちらかというとハリウッドの作品を中心に拝見しているので、それほどたくさん観ていないんですよ。ただ、一時期集中的に韓国映画を観ていたことがあります。韓国近現代を描いた作品を中心に。例えば「光州5・18」や「タクシー運転手 ~約束は海を越えて~」、「1980 僕たちの光州事件」とか。あとは「トガニ 幼き瞳の告発」とか、「コンクリート・ユートピア」とか。
──軍事政権時代、光州事件、実際の事件ベース、大災害もの……。全部重めですね。
重いの、わりと好きなんですよ(笑)。
──とすると、韓国のコメディ映画はドリアンさんには珍しいチョイスでしたね。
そうなんですよね。コメディといっても一癖あるタイプのものが好みで。ハリウッドだと「キューティ・ブロンド」とか大好物です!
──この作品はかなりお好みでしたか?
はい。テンポ感がすごくいいですし、重くなりそうなシーンでも重くなりすぎず、ハッピーエンドが待っている安心感もあって。最近こういう作品には触れてなかったわ、と思いました。まるで「サザエさん」を観ているような安心感(笑)。

陽の光の下でもちゃんときれい!もうこれは嫉妬ですよ
──安心安定の韓国コメディですよね。しかもドリアンさんは、2019年にJALチャーター便でフライトアテンダント(CA / 客室乗務員)的なこともされた経験があるだけに、ちょっとしたシンパシーを感じたのでは?
運行している飛行機の中で、ドラァグクィーンとしてフライトアテンダント的なことをしたのは、日本では当時私だけじゃないかしら。あれは沖縄で行われた「ピンクドット沖縄」というイベントのために企画された「JAL LGBT ALLYチャーター」という特別便で、通常の運航便ではなかったんですが、ピンクの制服を作って飛行機に乗ることができたのは最高の経験でした。そのあと、2021年には東京オリンピックの公式動画プログラムに参加して、JALの訓練センターにも入れていただいたんですよ。
──そのときもCAさんのコスチュームを?
そうなんです。訓練用の機材でいろいろ撮影させていただきましたし、パイロットの制服でフライトシミュレーターにも座らせていただきました。私に限ったことではありませんが、いわゆるパイロットやフライトアテンダントのような制服職に憧れる方は多いと思うんです。だから「JAL LGBT ALLYチャーター」も訓練センターも本当に楽しかったです。それこそ飛行機が好きなドラァグクイーンの方もたくさんいらっしゃるんですよ。
──そんなドラァグクイーンのドリアンさんからすると、本作での女性装のクオリティはいかがご覧になりました?
そこ、一番大事だと思っていたんです! この物語だと、女装のクオリティがゆるいとすべてが総崩れになっちゃうじゃないですか。だから作品を観る前は、ちょっと半信半疑だったんです。中途半端な女装なんかしたら許さないよ、って。でも(チョ・ジョンソク演じる主人公のハン・ジョンウが)お化粧してワンピースを着て、初めて外を歩くシーンで驚いたんです。陽の光の下でもちゃんときれい! もうこれは嫉妬ですよ。悔しかったあ。
──女性専門ピラティスの勧誘をしている男性から「広くてガッチリした肩ですね」「喧嘩が強そうだ」などと声を掛けられるシーンですね。
そう。肩はガッチリしていますし、ヒールを初めて履いているから歩き方がぎこちないんです。けど、顔面に関しては本当に文句なし。だって、チョ・ジョンソクさんってそれほど線が細い方じゃないでしょ。それがメイクの力であそこまで変えられるのか、と。私の化粧はもはや図画工作か塗装レベルですが(笑)、あのようなナチュラルメイク風の化粧でちゃんと女性に見えるのは素晴らしかった。それに物語が進むにつれて、所作や表情がどんどん変わっていくところも、ちゃんと研究されて演じられているんだなって思いましたね。ただ、声質でバレないのは「そりゃないでしょ!」って思いましたけど(笑)。
──声質と喉仏は隠しようがないですからね。
本当にそう。
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笑うだけじゃない作品に仕上げているのが、とても現代的






