ミルクボーイ駒場孝の「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」第30回ビジュアル

映画超初心者・ミルクボーイ駒場孝の手探りコラム「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」 第30回 [バックナンバー]

かつては映画のタイトルであることも知らなかった「2001年宇宙の旅」

思わず映画の歴史について調べました

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これまで名作をほぼ観たことがないまま育ち、難しいストーリーの作品は苦手。だけど映画を観ること自体は決して嫌いではないし、ちゃんと理解したい……。そんな貴重な人材・ミルクボーイ駒場孝による映画感想連載。文脈をうまく読み取れず、鑑賞後にネット上のレビューを読んでも「えっ、この映画ってそんなこと言うてた?」となりがちな彼が名作を気楽に楽しんだ、素直な感想をお届けする。

第30回のお題は「2001年宇宙の旅」。SF映画の基礎を作ったと言われる一方で、セリフやカット割りを少なくした演出や、人類の進歩をテーマとした哲学的な内容から、難解という評価もある作品だ。本コラムの連載前に行われたこがけんとの対談では、「駒場くんが観ると寝てしまうのでは(笑)」と言われていたが、そこから29回の連載を経て、満を持して挑戦した駒場はどんな感想を持つのか。

/ 駒場孝(コラム)、松本真一(作品紹介、「編集部から一言」

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映画のタイトルなのか、本当にただの宇宙の映像なのかもわかってなかった

こんにちは、ミルクボーイ駒場です。この連載の初回に、そもそもこのコラムをやらせてもらうきっかけを作ってくれたこがけんさんと対談をさせてもらいました。そしてその中でこがけんさんが「『2001年宇宙の旅』とかね。今の駒場くんに観せたら最後のほうは寝てるでしょうね(笑)」と言ってはりました。僕はそのとき「2001年宇宙の旅」が、おそらく映画のタイトルなのだろうけど、もしかしたら「スター・ウォーズ」とかの続編的なもののサブタイトルとかなのか、下手したら映画好きが最終的に行き着く、本当のただの宇宙の映像なのか、などまったくわからず「そうですね」と答えていました。そしてそれがコラムでも残っており、文字で見ても目が泳いでいるのがわかるくらいのわかってないやつの相槌でした。

コラム

そして今回ついにその「2001年宇宙の旅」というものを観ることになりました。結論から言うと、もちろん「2001年宇宙の旅」は映画のタイトルでした。そんなわけで事前情報はもちろんなく、タイトルを見て、「『2001年宇宙の旅』の2001年って、壮大な感じで言ってるけど2026年現在から考えたらけっこう前の話だなぁ」と思いましたが、“1968年公開の映画”だということを考えると「そのときからしたら33年後の未来を描いてるということになるので、まぁそんなもんか」と思い、でも「どうせなら『2068年宇宙の旅』とかにして100年後くらいの未来でもよかったのにな」と思いながら、「まぁでもそれは別にいいか」と一瞬でいろんなことを考えました。

「2001年宇宙の旅」場面写真(写真提供:MGM / Photofest / ゼータ イメージ)

「2001年宇宙の旅」場面写真(写真提供:MGM / Photofest / ゼータ イメージ) [高画質で見る]

こんなに攻めたことをしてもいいんですね

140分超の作品ということでなかなか長いので気合い入れて観始めました。結論から言いますとこの作品、長さどうこうじゃなくて、内容の攻め方が半端じゃないですね。そういう意味でこがけんさんも『駒場くん寝てしまうんじゃないか』と言ったんやと納得しました。コラム開始から30本目で観てよかったです。確かに序盤に観てたら、寝てるどころかこのコラム自体存続できるかどうかの話になっているところでした。この先映画を観ていく心を折られた可能性もありました。「映画ってこのレベルまでいってるの?」とくじけていました。ただ、これまでコラムを通して29本観てきたので、僕も多少映画の器はでかくなったつもりです。今回、まぁ器の周りは溢れまくってびしょびしょになりはしたものの、なんとか「観てられません、お手上げです」状態にはならずにすみました。

でも、です。でもなんですかこれは。こんなに攻めたことをしてもいいんですね。映画の表現の幅を感じまくった気がします。そしてこれが1968年になされていたということに怖さすら覚えます。あまりにもびっくりしすぎて映画の歴史を簡単に調べました。無声映画が1800年代後半から始まり、1927年以降に有声映画が普及していったとありました。ということは有声映画が普及して40年後くらいにこれを撮っているということですよね? 早い早い早い。早すぎます。映画が何周もして大体のことをやられて満を持して放出するような作品ですよね。怖すぎて監督も調べました。スタンリー・キューブリックさん。なんとこのコラムで観た「シャイニング」もこのキューブリックさんなんですね。そして「時計じかけのオレンジ」もこのキューブリックさんなんですね。「時計じかけのオレンジ」は、大学の頃先輩に「観たほうがいい」と言われ、レンタルしたものの最初うっすら観てすぐやめて、7泊8日寝かせて返す、というのを3回くらい繰り返した思い出があります。そりゃこんな人の作品は当時の僕には無理だというのが今わかりました。こんな攻めた監督の作品だったとは。

観始めた最初は真っ暗で、再生されてるか何度も確認しました。そして始まって20分くらい、「吹替で観るか字幕で観るか、別に選ばなくてよかったやん」と思うシーンが続きました。そしてようやく色々始まって、本当に宇宙空間に行ってしまったのかと思えるくらい静かな場面があったり、途中から、「この時代にこんな問題をテーマにしていたの?」という驚きがあったり。そしてラスト30分、唖然としました。「なんやねん」の連続で、ここまでなんやねんをされると途中笑えるのですがそれを越して最後は感心しました。

ジャンルは違えど表現する立場にいる者として尊敬

別にわかったつもりもないですし、たぶんわかってないですし、そもそも正解とかあるのかわかりませんが僕が感じたのは「私はこんなことをやりたいからやる」ということを愚直にやり切るところがキューブリックさんはすごいなと思いました。伝わる伝わらないはどうあれ、自分はこんなことを考えていると発信する姿勢を、ジャンルは違えど表現する立場にいる者として尊敬しました。そしてそれに対して周りも賛同して付いて行くところ、付いて行かせるところもキューブリックさんのすごさだと思いました。キューブリックさんが誰にも相手にされてなかったら「意味わかりません」と一蹴されて終わりですよね。そんなことを考えさせられる作品でした。

そして今回の「そんなこと言うてた?」ですが、今作に関しては何かを言ってた言ってなかったと言うこと自体が野暮な気がして、まったく何も思いませんでした。唯一僕から言えることといえば、宇宙船で冷凍睡眠させられていた「カミンスキー博士」。“長く眠らされている”のに、名前が“カミンスキー(仮眠好き)”とは。ということくらいしかありませんでした。キューブリックさんに言ったらどつき回されるかもしれません。でも本当に宇宙くらい広くて魅力的な作品でした。コラム30回目にして、いろんなことを超越した作品に出会えました。また強くなれた気がします。これからもいろんな作品を観ていこうと思います!

編集部から一言

この連載は「映画が理解できなかったときはそのことを素直に書く」というコンセプトのため、実際に「よくわからなかった」ということを面白おかしく書いていただいた回が何回かあります。編集部的には難しいと思ってない作品であってもそうなることがありました。今回の「2001年宇宙の旅」も「もしわからなかったときは、どれぐらいわからなかったかを書いてもらえれば……」と思っていた部分もあるのですが、まさか「キューブリックさんはすごい」というところまでたどり着くとは。失礼な例えですが、「2001年宇宙の旅」が映画のタイトルかどうかもわからなかったという第0回の状態が言葉もわからない類人猿だとしたら、キューブリックを尊敬している現在は、武器を持って戦えるようになったどころではない急速な進化ではないでしょうか。

「2001年宇宙の旅」(1968年製作)

「2001年宇宙の旅」場面写真(写真提供:MGM / Photofest / ゼータ イメージ)

「2001年宇宙の旅」場面写真(写真提供:MGM / Photofest / ゼータ イメージ) [高画質で見る]

400万年前の人類創世紀から新人類の誕生まで、人類の知恵の進歩を暗示するかのように不気味に姿を現わす謎の黒石板・モノリス。その謎を解くため、宇宙船ディスカバリー号が木星に向かって飛び立つが、コンピュータのHALが乗組員たちに対して反乱を起こす。その闘いをかろうじて生き残ったボウマン船長の前にモノリスが現れ、彼は異次元のトリップに巻き込まれる。監督はスタンリー・キューブリック、脚本はキューブリックとアーサー・C・クラーク。第41回アカデミー賞では特殊視覚効果賞を受賞した。

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駒場孝

1986年2月5日生まれ、大阪府出身。ミルクボーイのボケ担当。2004年に大阪芸術大学の落語研究会で同級生の内海崇と出会い、活動を開始。2007年7月に吉本興業の劇場「baseよしもと」のオーディションを初めて受け、正式にコンビを結成する。2019年に「M-1グランプリ2019」で優勝し、2022年には「第57回上方漫才大賞」で大賞を受賞。現在、コンビとしてのレギュラーは「よんチャンTV」(毎日放送)月曜日、「ごきげんライフスタイル よ~いドン!」(関西テレビ)月曜日、「ミルクボーイの煩悩の塊」「ミルクボーイの火曜日やないか!」(ともに朝日放送ラジオ)など。またミルクボーイが主催し、デルマパンゲ、金属バット、ツートライブとの4組で2017年から行っているライブ「漫才ブーム」が、2033年までの10年を掛けて47都道府県を巡るツアーとして行われている。

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読者の反応

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松本 @matsushin1978

ミルクボーイ駒場さんの連載、「2001年宇宙の旅」です!かつて「最後のほうは寝てるでしょ(笑)」とこがけんさんに言われた作品に満を持して挑戦!とはいえやはり難しいのでは……と思っていたら予想外の着地になったので感動しています https://t.co/E9uOHEolps

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