韓国映画「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」特集 | 監督キム・ヘヨンが語るイ・レ、チン・ソヨン、ソン・ソックの魅力 是枝裕和やイ・ビョンホンの影響

第74回ベルリン国際映画祭Generation Kplus部門の最優秀作品賞にあたるクリスタルベア賞を受賞した韓国映画「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」が4月10日より全国で公開される。本作は、ソウルの芸術団を舞台に⺟を失くした⼥⼦⾼⽣イニョンと完璧主義で“魔女”と呼ばれる芸術監督ソラの⼼の交流を描いたハートフルストーリー。「ソウォン/願い」のイ・レがイニョン、「毒戦 BELIEVER」のチン・ソヨンがソラを演じ、イニョンを陰ながら支える町の薬剤師ドンウクにドラマ「私の解放日誌」のソン・ソックが扮した。

映画ナタリーでは本作の公開を記念し、来日した監督のキム・ヘヨンにインタビューを実施。メインキャストの魅力やキャスティング経緯に加え、是枝裕和、イ・ビョンホンから受けた影響などを語ってもらった。

取材・文 / 西森路代撮影 / 谷俊政

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韓国映画「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」予告編公開中

是枝裕和監督の作品を観て、心に響く映画を作りたいと考えるようになった

──キム・ヘヨン監督は「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」が長編デビュー作だということですが、監督になりたいと思ったのは、どんなときだったのでしょうか?

実は最初は作家を目指していたんです。中学2年生のときに「文章には人を癒やす力がある」というフレーズを見て、小説を書きたいと思いました。でもさまざまな映画を観るようになると、脚本に書かれた言葉がどのように映画で表現されるんだろうと気になり始めたんです。スタッフとして映画の現場に参加しながら監督になりたいと思うようになりました。もう20年ほど前の話です。また、私は是枝裕和監督の映画が大好きなんです。なぜなら、私たちの周りにいそうな平凡な人たちがたくさん登場するし、私たちが目を背けてしまったり、まるで世の中にいないかのように扱われている人たちが出てくるからです。是枝監督の映画では、登場人物たちの感情が深く描かれています。大学生の頃に監督の作品を観て、私もそんなふうに人の心に響く映画を作りたいと考えるようになりました。

長編デビュー作「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」が第74回ベルリン国際映画祭Generation Kplus部門の最優秀作品賞にあたるクリスタルベア賞を受賞したキム・ヘヨン

長編デビュー作「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」が第74回ベルリン国際映画祭Generation Kplus部門の最優秀作品賞にあたるクリスタルベア賞を受賞したキム・ヘヨン

──その後、ドラマ「恋愛体質~30歳になれば大丈夫」や「私が死ぬ一週間前」の演出を手がけることになるまでにはどのような経緯があったのでしょうか?

私は大学で映画を専攻していたわけではなかったので、最初から演出家や監督を目指していたわけではありませんでした。撮影現場で試行錯誤をしたり、経験を積み重ねながらここまで来たんです。知らないことも多く、現場で怒られることも多々ありました。つらいこともたくさん経験したのですが、映画を作る過程そのもの、俳優やスタッフと一緒に協力して1つのものを作り上げていくことがとても面白くて、あきらめることなく続けてこれたのだと思います。映画って観客の方に観てもらって、感情の変化を呼び起こすことができるところも素敵ですよね。

イ・ビョンホン監督から現場の空気作りを学んだ

──「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」を作ることになったのは、どういういきさつだったんでしょうか?

是枝監督のような作品を作りたいと思い始めてから、周囲の人に絶えず、そういう映画を撮ってみたいとアイデアを伝えていました。この映画に関して言うと、制作会社の方から声を掛けていただいたのがきっかけです。最初の企画は、「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」とは違った内容でした。でもそのときに、私から「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」のようなストーリー案があると伝えたところ、その案が採用されたんです。

──そのように映画のアイデアが実際に具体化できた背景には、やっぱりドラマの世界での実績が関係しているのでしょうか?

私のプロフィール上では、ドラマの演出でデビューしたことになっていますが、それ以前の20年間はずっと映画の世界で助監督の仕事をしていたんです。助監督生活をしていたときに、ドラマの仕事をオファーしてくださった方がいて、そこで演出をしてみたところ、新鮮で面白く感じられました。それからは、映画とドラマの世界を行き来する形で仕事をするようになりました。

「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」より、左からイ・レ演じるイニョン、チン・ソヨン演じるソラ

「大丈夫、大丈夫、大丈夫!」より、左からイ・レ演じるイニョン、チン・ソヨン演じるソラ

──映画とドラマの演出で違いを感じることはありますか?

やはり、映画は映画館という閉じられた空間で作品を観るので、一気に最後までストーリーに集中することができます。でも、ドラマは家の中で観るものですし、1話、1話と時間を掛けて観ていく。次回を楽しみにしてもらえるような作り方にする必要があります。映画とドラマでは作り手のストーリーの伝え方も、視聴者の見方も違うと思います。

──韓国でも、映画とドラマ、どちらの仕事も手がけられる方は増えていますよね。特に、「恋愛体質~30歳になれば大丈夫」で脚本を担当されたイ・ビョンホンさんは、映画「サニー 永遠の仲間たち」で脚本を書いたり、「エクストリーム・ジョブ」では監督をされたりしていますよね。

そうなんです。私はずっとイ・ビョンホン監督の映画で助監督をしていて、「恋愛体質」の前からWebドラマや映画も含めて、4本ほどご一緒してきたんです。イ・ビョンホン監督の作品は台本もとても面白く、仕事に対するスタンスもずっと参考にしてきました。特に監督の集中力や、現場を楽しませるウィットに富んだ空気作りなどを学ばせていただきました。監督は私の提案をたくさん聞いてくださいましたし、現場で動くチャンスもたくさんくださりました。