韓国ドラマ「アイショッピング~返品された子どもたち~」の配信が、動画配信サービス・TELASA(テラサ)で4月1日にスタートした。本作は、養父母に捨てられた子供たちが、過酷な運命に抗いながらも生き抜くさまを描いたアクションスリラーだ。復讐へと向かう彼らの前には、養子となる赤ん坊をオークションに出品し、気に入らない子供に育った場合には無料で返品に応じる違法組織の存在があった。
キャストには「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」のヨム・ジョンア、「ただ愛する仲」「シークレット・メロディ」のウォン・ジナ、Netflixの恋愛リアリティシリーズ「脱出おひとり島」のキム・ジニョン(DEX)、「A-TEEN」シリーズのイ・ナウン、「賢い医師生活」「ヴィンチェンツォ」のチェ・ヨンジュンらが名を連ねる。脚本はアン・ソジョン、監督はオ・ギファンが担当した。
映画ナタリーでは、韓ドラライター・にこによるレビューを展開。全8話の「アイショッピング~返品された子どもたち~」をどう観たのか。「子供(養子)を返品する」という衝撃設定に込められたメッセージを紐解く。
レビュー / にこ
「アイショッピング~返品された子どもたち~」予告編
衝撃設定で問い掛ける“子供の価値と愛の意味”
「子供を返品する」──。脳がバグりそうな言葉だ。多くの人が思わず耳を疑うだろう。衝撃的な設定の韓国ドラマ「アイショッピング~返品された子どもたち~」は、子供をオークションで購入し、気に入らなければ返品するという衝撃的な世界を描いたアクションスリラーだ。人気Webtoonが原作の本作は、その強烈な設定で、韓国では初回から視聴者の倫理観を揺さぶり、“感情ジェットコースタードラマ”として反響を呼んだ。
オープニング映像からして、このドラマはただのスリラーではない。不穏な劇伴が流れるなか、豪邸が映し出され、豪華な食卓に並ぶ母と娘のシルエットが浮かび上がる。象徴的なのは、母が真っ黒なシルエットで描かれていることだ。闇に浸った存在であることが、ひと目で伝わってくる。
対照的に、娘は血の通った人間であることを示すメタファーのように赤いシルエットで描かれる。その赤はワインや高級な肉、果物と同じ色であり、子供もまた「選ばれて購入された商品」であることを示唆している。食事を終えた母親はベルを鳴らし、ショッピングへ向かう。だが、そこに並んでいるのは服や宝石ではない。まるで「人形」のように、子供たちが商品として売られている。品定めの末、母親はショッピングカートに“棚の子供”を入れ、いらない子供は破棄してしまう──。
タイトルに隠されたダブルミーニングと「理想の子供」とは
本作のタイトル「アイショッピング(原題:아이쇼핑)」には、背筋が凍るようなダブルミーニングが隠されている。韓国語の「아이(アイ)」は「子供」、「쇼핑(ショピン)」は「ショッピング」を表す。また「Eye(目)+Shopping(ショッピング)」を組み合わせた韓国独自の外来語で「ウィンドウショッピング」の意味にも。つまり闇のブローカー組織が提供する養子縁組のサービスを指すと同時に、“理想のものを選び取る消費行為”としての意味も重なっている。子供さえ理想の商品として求める、韓国社会の熾烈な競争の価値観の象徴でもあるのだろう。
物語は2011年、チェ・ヨンジュン演じるウ・テシクが、いかにも“アジト”という不穏な場所に到着する場面から動き出す。兄貴分(キム・スロ)から「あのカバンの中に何が入ってると思う?」と告げられる衝撃の掴みは、想像力を一気に加速させる。静まり返った空気や微かな物音、先の読めない緊張感──。手に汗握る一瞬が、序章として完璧に機能し、ドラマ全体への期待をさらに高める。
テシクは、養子縁組の違法ブローカーの組織の中で、複雑な立場に揺れる人物だ。「返品」された子供たちとの関わりを通して、彼らを守ろうとする一面を見せ、単なる構成員以上の存在として物語に深みを与えている。そんなテシクを慕う、ウォン・ジナ演じる子供たちのリーダー、アヒョン。彼女は、同じ境遇にいるソミ(イ・ナウン)ら捨てられた子供たちとともに、復讐へと向かっていく。
ウォン・ジナの生存本能とジニョン(DEX)の身体能力が激突!
漆黒の支配に抗う“復讐者”アヒョンを熱演するのは、キャリア初のアクションに挑んだウォン・ジナ。ドラマデビュー作「ただ愛する仲」などで見せた繊細で可憐なイメージを鮮やかに裏切り、生き延びるために牙を剥く姿を見せる。彼女が本来持つ静かな透明感が、本作の泥臭く鋭いアクションと鮮やかなコントラストを成し、抑えきれない心の痛みをより切実なものとして昇華させている。
一方、彼女と対峙するジニョン(DEX)は、Netflix「脱出おひとり島」シーズン2で視聴者の視線を釘付けにした圧倒的なビジュアルと底知れぬカリスマ性を携えて、本作で待望のドラマデビューを飾った。彫刻のように整った容姿から放たれるクールな色気はそのままに、UDT(海軍特殊戦旅団)出身の経歴を活かし、違法組織のチョン・ヒョン役を体現する。銃器やナイフさばきは、まさに“実戦レベル”のリアルな戦闘スキルで、一瞬たりとも目が離せない緊迫感を生む。ジニョンの甘いマスクの裏に潜む鋭利な殺気と野性味あふれるアクションのギャップは、観る者の心拍数を跳ね上げる。手に汗握るアクションシーンの連続で、その圧倒的な存在感は強烈な華となり、画面を支配している。
アヒョンと共に行動するソミを演じるイ・ナウンは、「A-TEEN」の清廉なイメージを覆す複雑な感情の揺れを披露。そして、子供たちの守護者テシクを演じるチェ・ヨンジュン(「賢い医師生活」)は、冷たい世界に温かい体温を刻む演技で、悲哀と慈愛が交錯する瞬間を生み出している。
本作の格を決定づけるのは、画面に現れた瞬間、空気が凍りつくような圧倒的存在感を放つ名優、ヨム・ジョンアだ。「SKYキャッスル~上流階級の妻たち~」で教育狂騒曲の頂点を極めた彼女が、今回は闇の組織の頂点、キム・セヒを怪演。華やかなセレブ医師としての優雅さを纏う聖母のような姿と、悪魔的な冷酷さを行き来する。その佇まいは、韓国では「彼女が画面にいるだけで作品の質感が変わる」と評されるほど。自身が演じるセヒについて、制作発表で「この人はただの人間ではない、悪魔だ」「表と裏が違う人を演じるのが面白いと思った。実際も楽しみながら演技した。私はただ善良な人なのに」と語り、子供たちの悲劇性を際立たせるために悪役に徹したことを明かした。
螺旋の階層から見下ろす“選別”の眼差し…完璧の果てに何を見るのか
オ・ギファン監督は、闇ブローカー・セヒの歪みを「螺旋状のオークション会場」という視覚的メタファーで描いている。仮面を纏った参加者たちが、“子供を買う”ために詰めかける会場。螺旋状の最上階から、セヒが冷徹に下層を見下ろす。その眼差しは、打算と階級意識にまみれた富裕層たちが、子供を愛の対象ではなく「ステータスを飾る備品」として、あるいは優秀な遺伝子の所有物として扱う冷酷さを象徴している。垂直の構図は、韓国の苛烈な階級社会そのものの写し鏡のようでもあり、同時に「DNAの螺旋構造」をも彷彿とさせる。
オ・ギファンは、このドラマを「人間のすべての感情を扱った、もっとも根源的な問いを投げる作品」と語っている。熾烈な競争社会が生んだ、打算と階級層による「完璧な子供」への執着は、現代社会の病理を容赦なく抉り出していく。エリート社会が生み出した歪みは、親と子供を追いつめ、狂気の螺旋をのぼる。観る者は、この螺旋のどの目線に自分を重ねるのだろうか。完璧を追う者か、それに抗う者か。あるいは、ただ見守る観客か──。本作は冒頭で一気に引き込まれ、子供たちの戦いと圧倒的なアクションの連続に思わず息をのむ。心揺さぶる群像劇でありながら、人間の価値と愛の意味を問うこのドラマが放つ熱量は、観る人の数だけの余韻を残すだろう。
「アイショッピング~返品された子どもたち~」ハイライト映像
TELASA(テラサ)
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