凛として時雨、独自のスタイルを貫いた地元凱旋公演
2010年4月21日 11:24 1
バンド史上初のアリーナ会場単独公演というだけでなく、埼玉出身の彼らにとっては凱旋公演となったこの日のライブ。会場には各地から約7000人のファンが足を運び、白熱のライブパフォーマンスを目撃した。
定刻の18時を迎えると、ピエール中野(Dr)による前説がスピーカーから流れ始める。だがこの大舞台でありきたりの前説が行われるわけがなく、「今日のライブはLIVとJAYWALKのガチンコ2マンライブの振替公演です」という嘘の混じったアナウンスが響く。また「飲食、カメラ、ビデオでの撮影、MDMA、大麻の使用はかたく禁じられていますから。ダメ。ゼッタイ!」と注意事項が伝えられると、それに賛同するように観客たちは大きな拍手で応えた。最後はおなじみのバイブスコールで会場の士気が高められ、奇妙な一体感に包まれ前説は締められた。
それから十数分後、客電が静かに落ち、TK(Vo,G)、ピエール、345(B,Vo)が順番にステージに姿を現わす。大歓声が沸き起こる中、ライブの幕開けを飾った「鮮やかな殺人」から場内のボルテージはピーク状態。TKのかき鳴らす鋭いカッティングギターと、ピエールと345の叩き出す太いリズムに合わせて床が上下に揺れる。そして切なげな345のボーカルと狂気を帯びたTKのシャウトの応酬が聴きどころの「Sadistic Summer」「ハカイヨノユメ」が続くと、フロアの動きは一層激しさを増していった。
ライブの定番曲「DISCO FLIGHT」では、真っ赤に染められたステージとサーチライトのような照明演出が、楽曲のドープな雰囲気を倍増。TKはメロディラインを乱すこともいとわず絶唱し、前方エリアではそのパフォーマンスに呼応するようにクラウドサーファーが飛び出す。またツアーを経て磨き上げられた新曲「I was music」は、音がよりタイトになりオーディエンスの耳を引きつけていた。
自分達のペースを作り上げたところで、TKがアコースティックギターをかき鳴らし「Tremolo+A」がスタート。軽やかなドラミングと流麗なストロークが絡み合い、それに乗る345とTKのボーカルが会場を美しく包む。曲が終わってからも観客は、3人の放った音の余韻に浸るように声も上げずにステージを見つめた。
中盤ではTKのシャウトが何度も会場に響きわたった「想像のSecurity」、ピエールの鮮やかなスティックさばきが見どころの「テレキャスターの真実」と攻撃的な楽曲が連続投下されていく。「a 7days wonder」では天井につるされた2つの巨大なミラーボールがまばゆい光を落とし、ダンサブルなサウンドを盛り上げた。
その後に続いたのはワンマンライブには欠かせない「moment A rhythm」。通常ライブハウスでは張り詰めた空気が漂うことが多いこの曲だが、会場の広さもあいまって幻想的な雰囲気が強調されることに。穏やかだが狂気をはらんだTKのボーカルとシンクロするように、スモークがステージを覆い、3つのレーザー光線がゆっくりと動き会場を彩る。オーディエンスはスケール感あふれる演出とパフォーマンスをじっと見守り、曲が終わると一瞬の静寂の後、力強い拍手を響かせた。
ここでTKと345が退場し、ピエールにスポットが当てられる。そして始まったのは彼の独断場のドラムソロ。スティック回しを華麗に披露しながら、破壊的なドラミングを展開する彼の卓越したパフォーマンスに大きな拍手が贈られた。エネルギッシュな演奏に続いては、ドラミングとは別方向で破壊的なMCが始まる。「埼玉の皆さんこんばんは!」と元気いっぱいに挨拶した彼は、のっけから暴走トークで会場を沸かせる。「今日は両親が来てます! 両親にコール&レスポンスを聞かせたいのでよろしく」と言いつつも話はどんどん脱線。ネット上で話題になっている自身のコールや、地元の駅で遭遇した友人の父親とのエピソード、さらにはテレビ番組収録中に起きた珍事件にまで話はおよび、会場は爆笑で包まれた。
ライブとは一切関係のない脱線トークを締めくくったのは、会場を巻き込んでのバイブスコールや彼がうれしいときにやってしまうという「らんらんるー」のポーズ、Xジャンプ、上島竜兵(ダチョウ倶楽部)ネタなど。観客は忠実に彼の要求に応え、迷走だらけのMCコーナーをおおいに盛り上げた。
その後再びドラムソロが始まり、ライブモードへと完全に戻るとTKと345がステージに再登場。メンバーが揃ったところで後半戦の幕開けを飾ったのは「JPOP Xfile」。さらに「Telecastic fake show」「nakano kill you」とスピーディな轟音ナンバーが立て続けに演奏されると、オーディエンスの狂騒はさらに加速していった。
いよいよライブも佳境に入ったところで、今度は345にスポットが当てられ恒例の物販紹介コーナーに突入。大勢の観客を前に緊張した様子を見せていた彼女だったが、「カワイイ!」「345!」という声援を受けながら無事に役目を終了。「聞いてくれてありがとうございました」と彼女が細い声で挨拶すると、あたたかな拍手が響いた。
ライブのラストナンバーとして届けられたのは「傍観」。青い照明で染められたステージに3人の姿が浮かび上がり、楽曲の持つ静謐な雰囲気を際立たせる。冒頭ではささやくようだったTKの声は、クライマックスが近づくに従い壮絶な絶叫へと変わり、オーディエンスはそれを息をのんで見つめた。
曲が終わっても、自分たちの存在をステージに刻み付けようとするかのように長い間それぞれの楽器を鳴らし続けた3人。会場が轟音で満たされたとき、345がベースを置き、ピエールがドラムセットから去っていく。2人が消えたステージにひとり残されたTKは、両手をあわせオーディエンスに挨拶をすると、ギターノイズを置き土産にステージの下手に消えていった。そして誰もいなくなったステージではすさまじい残響だけが響き続け、凛として時雨初のアリーナ公演は実に彼ららしい形でフィナーレを迎えた。
「凛として時雨 TOUR 2010 "I was music" SUPER FINAL」セットリスト
01. 鮮やかな殺人
02. Sadistic Summer
03. ハカイヨノユメ
04. DISCO FLIGHT
05. I was music
06. Tremolo+A
07. 想像のSecurity
08. CRAZY感情STYLE
09. テレキャスターの真実
10. ラストダンスレボリューション
11. a 7days wonder
12. moment A rhythm
13. JPOP Xfile
14. Telecastic fake show
15. nakano kill you
16. 感覚UFO
17. 夕景の記憶
18. 傍観
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音楽ナタリー @natalie_mu
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