「あらしのよるに」は、オオカミのがぶとヤギのめいの友情を描いた、きむらゆういちの絵本を原作にした新作歌舞伎。2015年に京都・南座で初演されて以来、東京・歌舞伎座や福岡・博多座でも上演が重ねられてきた。絵本の発刊30周年記念として、約8年ぶりに歌舞伎座で上演される今回は、獅童が初演時より演じているがぶ、菊之助が初役でめいを勤める。
獅童は「今回は5度目の上演となります。配役も一新しました」と述べ、菊之助へのオファーは、昨年上演の「新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX」(以下FFX歌舞伎)での共演時だったことを明かす。「めいは、もしかしたらメスかもしれない、と思われるキャラクター。菊之助さんは、女方の修行もされていますし、また立役もおやりになるので、ぜひめいをやっていただきたいと思っていました」と瞳を輝かせる。また菊之助との共演について「FFX歌舞伎での共演までは、実は10年近くご一緒する機会がなかったのですが、FFX歌舞伎以降、お話やお食事をすることも増え、6月には『上州土産百両首』で共演と、ここに来て“急接近”いたしました(笑)。今回、非常に新しい『あらしのよるに』ができると思っております」とうれしそうに語った。
菊之助は「FFX歌舞伎の、ちょうど昼夜公演の間に、獅童さんが楽屋にいらしてくださり、このお話をいただきました」と振り返り、「獅童さんが、私の出演している地方の劇場に来てくださったこともございましたし、FFX歌舞伎以降、ずっと親密にさせていただいております。今年の6月に『上州土産百両首』で、兄弟分という役どころで共演させていただきましたが、普段の関係が舞台に生かされていたように感じておりました。今回は、オオカミとヤギという、“食う・食われる”の関係ではございますが(笑)、2匹がどのように仲良くなっていくのか、そしてめいをどのように立ち上げていくか、お稽古で獅童さんからお話を伺いながら作っていきたい」と意気込みを述べる。なお菊之助の隣には、自身がめいに扮装したパネルが置かれていた。報道陣より「とても可愛らしい」と感想を受けた菊之助は、自身の扮装姿をまじまじと見つめ「原作の絵本を読むと、めいはやはり、“美味しそう”に見えないといけないなと……(笑)」とコメントし、会場の笑いを誘う。まためい役について「怖いながらも、がぶに近寄っていく芯の強さがないと、この役は成立しません。そういったところを出していければ」と語った。
取材会では、「あらしのよるに」にまつわる、獅童の母のエピソードも明かされた。獅童は「2003年に、NHK教育テレビの読み聞かせの番組で『あらしのよるに』を読んだのが、この作品との出会いでした。当時、若手公演の新春浅草歌舞伎で、狐が出てくる四の切(『義経千本桜』より『川連法眼館』)をやっていたこともあり、家で母と『この作品も、歌舞伎化できるね』なんてお話をしていたんですね。そこから時が経ち、2015年に『南座で新作を』という話をいただいたとき、母と話していた『あらしのよるに』をやらせていただきたいと提案したのが、この企画の始まりです。京都は母の故郷でもあったので、亡くなった母に親孝行ができたかな、なんて思っていたのですが、初日の前日に松竹の方から、実は母が2003年に、手書きの『あらしのよるに』の企画書を松竹に持ってきていたという話を伺って。『もし獅童が自分の責任興行を打てるような俳優になれたら、これをいつかやらせてほしい』と。また母に助けられていたんだなと実感しましたね」と作品への思い入れを語る。菊之助は「このお話を先日伺ったとき、『何としてでもこの作品の力になりたい』という思いがさらに強くなりました」とうなずいた。
今回は、幼いころのめい役で中村陽喜、幼いころのがぶ役で中村夏幹と、獅童の息子たちも出演する。獅童は「初演の2015年には、2人はまだ生まれておりませんので、まさか自分の息子と『あらしのよるに』で共演するとは思ってもいませんでした。私が演じるがぶは、いじめられっ子で、気が弱くてお人好しなオオカミ。そんな彼がめいと出会うことで成長していくのですが、作品のテーマとして描かれる、“自分を信じて、自分らしく生きていく”ことは、まさしく私が二十代の頃、歌舞伎で役がつかない時代に、母から言われていたことと重なります。母の言葉が、私にとって心の支え、そして勇気になったので、陽喜と夏幹が、いつかこの作品の持っているテーマ性に気づいて、彼らにとっても、俳優をやっていくうえでの"勇気"にしてくれたらうれしいですね」と思いを述べた。
「十二月大歌舞伎」は、東京・歌舞伎座で12月3日から26日まで。チケットの一般販売は11月14日10:00にスタート。
「十二月大歌舞伎」第一部
2024年12月3日(火)~2024年12月26日(木)
東京都 歌舞伎座
スタッフ
発刊30周年記念「あらしのよるに」
原作:きむらゆういち(講談社)
脚本:今井豊茂
演出・振付:藤間勘十郎
出演
発刊30周年記念「あらしのよるに」
がぶ:
めい:
たぷ:坂東亀蔵
みい姫:中村米吉
はく:市村竹松
のろ:市村光
幼いころのめい:中村陽喜
幼いころのがぶ:中村夏幹
ばりい:澤村國矢改め澤村精四郎
山羊のおじじ:市村橘太郎
絵師:市川門之助
がい:河原崎権十郎
狼のおばば:市村萬次郎
ぎろ:尾上松緑
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🎀川添史子👀 @fumiko_kawazoe
今日のお二人のお着物は、ガブとめい、それぞれのお役をイメージされて選ばれたそうです
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