「科白劇 舞台『刀剣乱舞/灯』綺伝 いくさ世の徒花 改変 いくさ世の徒花の記憶」(2020年)、「舞台『刀剣乱舞』綺伝 いくさ世の徒花」(2022年)で細川ガラシャ役を務めた七海ひろきが、刀剣男士の歌仙兼定として登場し話題となった「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」(2023年)。「舞台『刀剣乱舞』」(以下刀ステ)の中でも人気の1作が、「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語~再演~」として新たに上演される。
再演には、刀剣男士6振りと光源氏を務めるキャストが続投。このたびステージナタリーでは、初演に続き姫鶴一文字役を演じる澄輝さやと、南泉一文字役を務める汐月しゅうにインタビューを行った。宝塚歌劇団出身という共通点のある2人は、汐月が90期生、澄輝が91期生と、1期違いの先輩後輩。公私共に交流がある2人に、互いの俳優としての印象や「禺伝~再演~」にかける思いを聞いた。
取材・文 / 興野汐里撮影 / 藤田亜弓
ヘアメイク / 田中沙季(澄輝さやと)、岸本すみれ(汐月しゅう)衣裳協力 / UNITED TOKYO
“一文字一家”のチーム感を出したい
──お二人は「舞台『刀剣乱舞』禺伝 矛盾源氏物語」(2023年)で初めて刀ステシリーズに参加されました。刀ステに出演して、または刀ステの別作品を観劇して、刀ステシリーズにどのような印象を抱きましたか?
澄輝さやと 「禺伝」初演に出演するにあたって、刀ステを観に行かせていただいたとき、ワクワクするような迫力ある殺陣、歴史上人物と刀剣男士の物語が絡み合った緻密なストーリーなど、さまざまな魅力が詰まった作品だと思いました。
汐月しゅう 末満(健一)さんの、1つのキーワードを拾って膨らませる脚本の力って本当にすごいよね。
澄輝 そうなんですよ! 「あれ……この物語とこの物語ってつながっているよね?」というような、物語全体の見せ方が素晴らしいなと思いました。刀ステシリーズには、観れば観るほどハマってしまう魅力がありますよね。
──澄輝さんと汐月さんはそれぞれ、福岡一文字の作とされている姫鶴一文字役、南泉一文字役を演じます。上杉景勝秘蔵の太刀である姫鶴一文字は、研師の夢に“ツル”と名乗る姫君が現れ、磨り上げないよう嘆願したという伝説があり、“一文字一家”からは訳あって距離を取っている刀剣。また、大磨上無銘の打刀である南泉一文字は、触れた猫が真っ二つに斬れた逸話と故事「南泉斬猫」から名付けられた刀剣だと言われています。お二人は、ご自身が演じるキャラクターをどのように捉えていますか?
汐月 南泉一文字は猫というワードから、可愛く見られることが多いかもしれないのですが、「刀剣乱舞ONLINE」におけるビジュアルは割とがっしりした青年ですよね。大人になりたい、強く見られたいと思っているけど、その思いが空回りして可愛く見えてしまうのかな。山鳥毛にも「子猫」と呼ばれてるし(笑)。だから、彼の自認は“猫”ではないと思っています。“ご本刀”の意思を尊重して、なるべく“猫を出さない”ようにしているんですが、殺陣のシーンで無意識に「にゃー!」という声が出てしまって(笑)。そこは再演でさらに深めたいポイントの1つですね。
澄輝 私が演じる姫鶴一文字はとにかくマイペース。一文字一家と距離を置きたい感じはありますが、気だるそうにしつつも、一応みんながいる輪の中には加わっています。
汐月 ほかの本丸の姫鶴一文字、すべてがそうではないかもしれないのですが、「禺伝」本丸の姫鶴一文字は、何かをお願いしたらムッとしながらも、ちゃんと聞き入れてくれそうな、少し押しに弱そうな感じがある(笑)。
澄輝 ははは! そうですか!?(笑) 個人的な目標として、再演では“一文字一家”のチーム感を出したいですね。どう表現するのか難しいところではあるのですが、誰かのセリフに対する反応をにじませられたら良いなと思います。
汐月 自分が演じるキャラクターの感情って、相手があってこそ引き出されるところが多いもんね。「禺伝」の初演を改めて振り返ってみると、自分のお芝居のことだけで精一杯になってしまっていたので、今回はもっとほかの刀剣男士との関係性を大事にして、柔らかいお芝居ができるように心がけたいなと思います。
猫好きの澄輝、稽古中の“猫ロス”を汐月で埋める
──「禺伝」では、「源氏物語」の作者である紫式部の周辺歴史に異常が見られたことを受けて、歌仙兼定を隊長とした大倶利伽羅、一文字則宗、山鳥毛、姫鶴一文字、南泉一文字の6振りが、歴史と物語が反転した平安時代へ出陣する様子が描かれます。先ほど、初演でご自身の役と対峙した印象や、再演ではどのような点を意識したいかについてお話しいただきましたが、作品全体でアップデートされているポイントについて教えてください。
汐月 アクション監督の栗田(政明)さんから新しい殺陣をつけていただいて、殺陣がほとんど変わったんです。殺陣つけのとき、光源氏役の瀬戸かずやが“宇宙猫”みたいな顔になっていました。情報を詰め込みすぎて、頭がパーン!となっていたのかも(笑)。
澄輝 「ここは確実に覚えているけど、ここはまったく覚えていないな……」のような部分が入り混じっているから、再演のお稽古はとても難しいなと感じます。
汐月 そうだね。光源氏で思い出したのですが、私は「禺伝」の中で光源氏戦が一番好きなんですよ! 1人きりで戦うシーンが多いぶん、光源氏戦では刀剣男士みんなで助け合いながら戦うことができるので、やっていてすごく楽しいです。あと、「禺伝」って実は本丸で過ごすシーンがなくて、刀剣男士たちはずっと任務に就いているんですよ。ほっこりするシーンがあまりないから、少し寂しいなと思っていて。なので、後半に登場する歌仙兼定、大倶利伽羅、姫鶴一文字、南泉一文字がコミカルなシーンを膨らませてみたらどうかな?と考えています。シリアスなシーンがさらに引き立つように、面白いシーンはメリハリをつけて楽しく演じられたら良いなと。
──「舞台『刀剣乱舞』虚伝 燃ゆる本能寺」やその再演(参照:軍議も充実!舞台「刀剣乱舞」再演に鈴木拡樹「戦い続ける座組でありたい」)で、刀剣男士たちが軍議中におはぎを食べるシーンのように、クスッと笑ってしまうような心温まるシーンも刀ステシリーズの見どころの1つですね。今、歌仙兼定や大倶利伽羅といったキャラクターの名前が挙がりましたが、「禺伝」には6振りの刀剣男士と、「源氏物語」の登場人物といった個性豊かなキャラクターが多数登場します。
汐月 「禺伝」本丸の大倶利伽羅は、さまざまな本丸の中でもかなり味わい深い部類に入る個体なんじゃないかと思います。ネタバレになってしまうのであまり詳しくは言えないですが、「禺伝」本丸の大倶利伽羅はとある別のキャラクターになるシーンがありますからね。しかも、実はノリノリでやっているのでは?という様子です(笑)。
澄輝 プライベートで猫を飼っていることもあって、私は南泉一文字が好きですね。お稽古中の“猫ロス”は、南泉一文字役のしゅうさんに埋めてもらっています(笑)。先ほどしゅうさんが「再演では“猫感”を抑える」とおっしゃっていましたが、前回よりも“猫感”を全面に押し出した殺陣もあると思っていて。バージョンアップした可愛らしい“猫感”を、お客様にも楽しみにしてもらいたいですね。
汐月 確かに、初演で爪を使うのは決戦のときだけだったけど、再演ではバシバシ使っているかも。でもあれは、敵がヒラヒラと煽ってくることによって、自然に出てしまう“猫”だから、“仕方のない猫”とでも言うべきかな(笑)。
あとは、やっぱり「源氏物語」に登場する姫たちがとても魅力的なキャラクターばかりだと思います。初演キャストの皆さんは、しっとりとした湿度の高い演技をする姫が多数だったのですが、再演に出演する新キャストの方々は、力強い演技をする姫が多いなと。彼女たちの個性の違いに注目していただくのも面白いのではないかと思います。今回、姫を演じるキャストの皆さんは初演を参考にしているのかな、それともあえて観ないようにしているのかな? 私は初演を観てしまったらそれをなぞってしまうかも。
澄輝 私は以前の映像を観ると反省点ばかり見つけてしまうので、あまり観ないまま臨むことが多いですね。
汐月 私とあきちゃん(澄輝の愛称)は「禺伝」のキャストの中でも随一の“落ち込み隊”なんですよ(笑)。
澄輝 実はそうなんです(笑)。しゅうさんと一緒に稽古場の端で反省会をしています。
汐月 「禺伝」のキャストは真面目な人が多いよね。たとえば、あやなちゃん(一文字則宗役を演じる綾凰華の愛称)は「あっ! ここはこうじゃなかった! もう1回! そう! ここはこう!」と1人で練習をしていることが多くて、本当に可愛らしいなと思います。
澄輝 すごく微笑ましいですよね!
互いの得意分野は…
──お二人は宝塚歌劇団在団中から、歌やダンス、芝居、殺陣やアクションなど、クオリティの高いパフォーマンスで注目され、近年では刀ステをはじめとした作品で新たなフィールドの作品に挑戦するなど、さらに活躍の幅を広げています。舞台に立つうえで、ご自身の強みはどのようなところにあると考えていらっしゃいますか?
汐月 ……お芝居、いっちょんわからん! 得意な方がうらやましいです。自分自身のことはあまりわからないのですが、あきちゃんの得意分野はすぐ言えますよ! あきちゃんは普段ポワッとしているから、「優しいお芝居をする人なのかな?」と見せかけて、大きな声でがなるお芝居がめちゃめちゃ上手でカッコいいんです。ぜひ注目してみてください!
澄輝 ははは! ありがとうございます。しゅうさんはとにかく殺陣を覚えるのが早いですよね。刀剣男士にとって一番の見せ場、決戦のシーンの稽古のときに、私がなかなか殺陣を覚えられずにチーン……となっていたら、しゅうさんは「いやー! 殺陣楽しい!」って笑顔でおっしゃっていて。「殺陣がついたばかりなのに、もう自分のものにできてるの!? しかもそれを楽しめているってすごい!」と驚きました。
汐月 ははは!(笑) 動いてると、自分に価値が生まれる気がするんだよね。
澄輝 ステージ上や舞台裏でも、タタタ!と素早く階段を駆け上がっていて、本当に身軽だなあ、うらやましいなあと思いながら見ています。南泉一文字は敵を翻弄する素早い殺陣が多いのですが、しゅうさんはそれをしっかりと体現できていて、素晴らしいなあと。私も負けずに殺陣をがんばります! 殺陣やアクションもそうですし、姫鶴一文字のお芝居に関しても、初演の反省を踏まえて、より良いものをお見せできるように精進します。新たなキャストを迎え、演出もバージョンアップした「禺伝~再演~」、初演を観てくださった方にも、今回初めてご覧になる方にも、楽しいと思っていただける作品にできればと思います。
汐月 今回初めて「禺伝」をご覧になる方は、おそらく初演の評判を聞いて観に来てくださる方だと思うので、皆様の期待を裏切らないようにがんばりたいですね。「初演と同じことをするから、再演って楽なんでしょう?」と思われがちなんですが、実は再演のほうが難しんです。なので、より一層気合いを入れて、健康に気を付けて臨みます! ぜひ劇場へ足を運んでいただけたらと思います。
プロフィール
澄輝さやと(スミキサヤト)
兵庫県生まれ。2005年、宝塚歌劇団に入団。花組公演「エンター・ザ・レビュー」で初舞台を踏み、宙組に配属にされた。2011年「『クラシコ・イタリアーノ』-最高の男の仕立て方-」「『NICE GUY!!』-その男、Yによる法則-」新人公演で初主演、2015年「バウ・ショーケース『New Wave! -宙-』」で宝塚バウホール初主演を務める。2019年のミュージカル「オーシャンズ11」をもって宝塚歌劇団を退団した。
澄輝さやと (@sayato_sumiki_official) | Instagram
汐月しゅう(シオツキシュウ)
福岡県生まれ。2004年、宝塚歌劇団に入団。雪組公演「詩劇『スサノオ-創国の魁(さきがけ)-』」「グランド・レビュー『タカラヅカ・グローリー!』」で初舞台を踏み、星組に配属にされた。2014年、「Musical『The Lost Glory -美しき幻影-』」「ラテン・グルーヴ『パッショネイト宝塚!』」をもって宝塚歌劇団を退団。その後、ミュージカル「美少女戦士セーラームーン」シリーズ、演劇女子部シリーズなどに出演している。



