獅童とミクによる宙乗りも、多彩な演目並ぶ「十二月大歌舞伎」幕開け

歌舞伎座新開場十周年「十二月大歌舞伎」が去る12月3日に東京・歌舞伎座で開幕した。

公演は3部構成で、第1部ではまず「旅噂岡崎猫」が披露された。“日本三大怪猫伝”の1つ、“岡崎の猫”の怪奇譚をもとにした本作では、坂東巳之助がおさん実は猫の怪を勤める。岡崎の無量寺に由井民部之助（中村橋之助） と幼子を連れたお袖（坂東新悟）は主君の病気平癒祈願のための道中で、お袖の母親であるおさんの死を知るが……。また歌舞伎座で初の上演となる「超歌舞伎 Powered by NTT『今昔饗宴千本桜』中村獅童 初音ミク 宙乗り相勤め申し候」では、中村獅童の次男・小川夏幹が初お目見えするほか、超歌舞伎初参加の中村勘九郎、中村七之助も名を連ねた。クライマックスでは獅童とミクによる宙乗りも披露。初日は鳴り止まないアンコールの声に応えて獅童が再び姿を現し「ミクさんファンの皆様、超歌舞伎ファンの皆様がここに導いてくださいました。伝統を守りつつ、革新を追求する！ これが中村獅童の生き方、これが超歌舞伎!!」と喜びを表現した。

第2部の「爪王」は中村屋所縁の舞踊劇。勘九郎が狐、七之助が鷹、橋之助が庄屋、坂東彦三郎が鷹匠を演じ、鷹と人間の絆がじんわりと描かれた。一方の「俵星玄蕃」は、脚本を竹柴潤一、演出を西森英行が手がける新作。尾上松緑演じる槍の名手・俵星玄蕃のもとへ、坂東亀蔵演じる夜鳴きそば屋の十助が訪ねて来て……。なお歌舞伎座では松緑主演の「赤穂義士外伝」を2カ月連続で上演。1月には昨年上演された「荒川十太夫」を再演する。

第3部は、国に伝わる水中に棲む霊獣・猩々をモチーフにした「猩々」で幕開け。松緑と勘九郎が披露する“猩々舞”に、客席は温かな笑いに包まれた。また、七之助が富姫を勤め、演出も担う坂東玉三郎が富姫の妹分・亀姫を初役で勤めることでも話題の「天守物語」では、“異形の世界の住人”たちの妖艶さと、亀姫に仕える朱の盤坊（獅童）と舌長姥（勘九郎）らの奇怪さが物語に深みを与えたほか、城主播磨守の白鷹を探しに現れた、中村虎之介演じる姫川図書之助と富姫の物語が観客を魅了した。公演は12月26日まで行われる。