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ワールドコンペ開幕、J.ビノシュ「新しさは私たちの未来を助けるものだと思いたい」

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左からジュリエット・ビノシュ、宮城聰、夏木マリ。

左からジュリエット・ビノシュ、宮城聰、夏木マリ。

「東京芸術祭ワールドコンペティション2019」の会見が、本日10月30日に東京・東京芸術劇場で行われ、東京芸術祭総合ディレクターの宮城聰と審査員長のジュリエット・ビノシュ、副審査員長の夏木マリが登壇した。

宮城は現在の社会状況の中で、他者の文化に対するリスペクトを持つことの重要性を感じている、と切り出す。さらに宮城は「今、社会は経済面での交流は盛んになっています。しかし経済面の相互依存が進むと、人は自分とは違う価値観を持っている人が地球上にいるという視点が退いてしまって、あたかもみんな同じ土俵のうえにいるような錯覚に陥りがちです。そのような状況下では、力の大きい、小さいだけが前面に出てきてしまう。今はそのような状況なのではないでしょうか」と分析。そのうえで、「東京芸術祭のコンペティションを通じて演劇を測る物差しを増やすことで、他者の価値観を知り、それを面白いと思ったり、敬意を払ったりするきっかけを発信したいと思います」と述べ、「審査員の皆さんが審査の過程で異なる物差しを提示され、それを審査会を通じ、観客である演劇に興味のある人たちに共有することで、『こんな物差しがあるのか』と発見していただくことが大事だと思います」と語った。

審査員長のビノシュは「今回のコンペティションは重要なミッションに満ちた試みだと思います。新たな価値観に対する思考を考えていこうという取り組みです。新しさとは、私たちの未来を助けるものだと思いたいです」と述べる。さらに「私たちアーティストには社会に警鐘を鳴らすという責任があると思っています。私たちが今まさに直面している問題として、まず気候の変動があります。そのような状況をサバイブしていくには過去に立ち戻らなければいけないというのは明らかであり、今回のコンペティションは大きな価値、意味を持つと思います」と続けた。

夏木は、副審査員長を引き受けた理由について「このコンペティションでは、2030年以降の舞台芸術の価値観を見るということで、今まで演劇をやってきた人間としては、これまで曖昧だった演劇、芸術の世界基準が複数化、基準化されていくのではないかと感じたからです」と説明する。また「私個人は、印象派を25年くらいやっており、世界で自分の作品を観てもらいたいと思ってきましたが、世界とのつながりがなかったのでとても苦労してやっています。でも以前世界の演劇祭に参加したときに、(日本人として参加していることで)コンプレックスを感じる部分はありつつも、日本を見つめ直すという機会にも恵まれました。今回、ワールドコンペティションという場に各国の作品が集まって、(価値観が)シャッフルされることが未来につながっていくのではないかと思います」と思いを述べた。

「東京芸術祭ワールドコンペティション2019」は、「東京芸術祭2019」の1プログラム。世界各地のディレクターから推薦を受けたアジア、オセアニア、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、日本の若手アーティスト6チームが作品を上演し、上演作の中からアーティスト審査員賞、批評家審査員賞、観客賞が決定される。

演目には中国・北京より戴陳連(ダイ・チェンリエン)「紫気東来-ビッグ・ナッシング」、オーストラリア・シドニーよりシドニー・チェンバー・オペラ「ハウリング・ガールズ」、スペイン・バルセロよりエル・コンデ・デ・トレフィエル「可能性は風景の前で姿を消す」、ブルキナファソ・ワガドゥグよりシャルル・ノムウェンデ・ティアンドルベオゴ「たびたび罪を犯しました」、チリ・サンティアゴよりボノボ「汝、愛せよ」、日本・大阪よりdracom「ソコナイ図」がラインナップされた。

ステージナタリーでは「東京芸術祭ワールドコンペティション2019」を特集。東京芸術祭ディレクター・横山義志へのインタビューを掲載している。

「東京芸術祭ワールドコンペティション2019」

2019年10月29日(火)~11月4日(月・振休)
東京都 東京芸術劇場

戴陳連(ダイ・チェンリエン)「紫気東来-ビッグ・ナッシング」

11月2日(土)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
演出・出演:戴陳連

シドニー・チェンバー・オペラ「ハウリング・ガールズ」

10月31日(木)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
演出:アディナ・ジェイコブス、ダミエン・リケットソン

エル・コンデ・デ・トレフィエル「可能性は風景の前で姿を消す」

10月30日(水)
東京都 東京芸術劇場 シアターイースト
作:パブロ・ヒスベルト
演出・ドラマトゥルク:タニヤ・バイエラー、パブロ・ヒスベルト

シャルル・ノムウェンデ・ティアンドルベオゴ「たびたび罪を犯しました」

10月30日(水)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
コンセプト・演出・舞台美術・キャスティング・ドラマトゥルク:シャルル・ノムウェンデ・ティアンドルベオゴ

ボノボ「汝、愛せよ」

11月2日(土)
東京都 東京芸術劇場 シアターウエスト
作:パブロ・マンジ
演出:アンドレイーナ・オリバリ、パブロ・マンジ

dracom「ソコナイ図」

11月2日(土)・3日(日・祝)
東京都 東京芸術劇場 プレイハウス
作・演出:筒井潤

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