カンパニーの実力と魅力を4作品から引き出した、Kバレエ「New Pieces」

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Kバレエ カンパニーの新作「New Pieces」が2月27・28日に東京・ Bunkamura オーチャードホールにて上演された。ステージナタリーではその初日、27日の公演の模様をレポートする。

熊川哲也 新作「死霊の恋」より。(c)Hidemi Seto

熊川哲也 新作「死霊の恋」より。(c)Hidemi Seto

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「New Pieces」は、芸術監督・熊川哲也をはじめとする、振付家4人の新作を一挙上演する企画。まず披露されたのは、宮尾俊太郎が振付を手がけた「Piano Concerto Edvard」だ。

宮尾俊太郎 振付「Piano Concerto Edvard」より。(c)Hidemi Seto

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青で彩られた空間に、同じく青の衣装をまとった小林美奈、山本雅也をはじめとする男女5組のダンサーが姿を現わす。彼らはグリーグ作曲「ピアノ協奏曲」のメロディに乗せて、ピアノの音1つひとつをそのまま身体で表すように、繊細な踊りを繰り広げる。やがて楽曲の盛り上がりに合わせて動きも大きくなっていき、曲が持つ表現の豊かさを身体で見せるようなダイナミックな作品となった。

山本康介 振付「Thais Meditation」より。(c)Hidemi Seto

山本康介 振付「Thais Meditation」より。(c)Hidemi Seto[拡大]

続けて上演されたのは、山本康介振付の「Thais Meditation」。幕が上がると、そこには満天の星がきらめく夜空が。熊川が山本に託した「織姫と彦星」というキーワードをベースに、荒井祐子と宮尾俊太郎演じる恋人らしき男女が、マスネ作曲「タイスの瞑想曲」に乗せて、寄り添ったり離れたりしながら切ないダンスを披露する。幻想的な空間で繰り広げられる、儚くも美しい作品世界に、客席からは感嘆の声が上がった。

渡辺レイ 新作「FLOW ROUTE」より。(c)Hidemi Seto

渡辺レイ 新作「FLOW ROUTE」より。(c)Hidemi Seto[拡大]

3作目に登場したのは、前2作とは対照的に、力強く生命力に満ちた振りが印象的な、渡辺レイ振付の「FLOW ROUTE」。冒頭はブラックボックスの中、ベートーベン作曲「コリオラン序曲」に乗せて、男性ダンサー5人がテーブルを使って、あるゲームを始める。ダンサーたちはそれぞれ個性的で、声を出したりマイム的な動きも取り入れたりしながら、スピーディで細やかな動きを展開した。そして女たちと出会った男は、舞台を駆け回るようにさらに激しい動きを繰り広げる。後半はブラックボックスから一変し、太陽を感じさせる黄色いスクリーンをバックに、遅沢佑介率いる半裸の男性ダンサーと、矢内千夏率いるシンプルな白い衣装を着た女性ダンサーが、力をぶつけ合うように躍動感あふれるダンスを繰り広げる。音楽の高まりとともに最後のポーズが決まると、客席からは大きな拍手が起こった。

最後に上演されたのは、熊川哲也の新作「死霊の恋」。ショパン作曲「ピアノ協奏曲第1番第1楽章」に乗せて、テオフィル・ゴーティエの同名短編小説の作品世界が繰り広げられる。若き聖職者のロミュオーは、亡くなった高級娼婦のクラリモンドが忘れられない。ロミュオーに密かな恋心を抱く先輩聖職者のセラピオンは彼を案じているが、そこへ亡くなったはずのクラリモンドが現れ、ロミュオーの血を吸い……。

浅川紫織演じるクラリモンドの人間的でない動き、堀内將平演じるロミュオーが苦悩で身動きできなくなっていく姿、石橋奨也演じるセラピオンが届かぬ思いに引き裂かれていく様が、3人の動きだけでドラマチックに描かれる。人間の愚かさと業の深さ、美しさと儚さを描いた本作は、演出家・熊川の確かな手腕を感じさせただけでなく、「New Pieces」4作を締めくくるプログラムとして強い印象を残した。

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Kバレエ カンパニー2018「New Pieces」

2018年2月27日(火)・28日(水)※公演終了
東京都 Bunkamura オーチャードホール

芸術監督:熊川哲也

演目

熊川哲也 新作「死霊の恋」
出演:浅川紫織、堀内將平、石橋奨也 
渡辺レイ 新作「FLOW ROUTE」
出演:矢内千夏、遅沢佑介 ほか
山本康介 振付「Thais Meditation」
出演:荒井祐子、宮尾俊太郎
宮尾俊太郎 振付「Piano Concerto Edvard」
出演:小林美奈、山本雅也 ほか

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