世田谷パブリックシアター20周年、萬斎「大きな先人のパンツを生かして」

本日4月6日に東京・世田谷パブリックシアターにて開場20周年記者発表会が行われ、公益財団法人せたがや文化財団理事長で世田谷パブリックシアター館長事務取扱の永井多恵子、同劇場芸術監督の野村萬斎が登壇した。

まずは永井が、20年前の開場時を振り返り、「演劇とダンスを特徴とする劇場にしよう、アクチュアリティのある劇場にしようということだけ決めましたが、あとは手探りで、世田谷区も私も手探りで始めました」とコメント。そしてこけら落としの式典で、萬斎に「三番叟」を依頼したことに触れ、「歌舞伎踊りの『三番叟』か狂言の『三番叟』かで迷い、そこで萬斎さんに、と思ったことが今日につながったのではないでしょうか」と感慨を述べる。

萬斎は、2002年に36歳という若さで芸術監督に就任。以来15年にわたり劇場に携わってきた理由として、「世田谷パブリックシアターが掲げる色が、私が思い描いてた“劇場像”と非常に近かったからではないかなと思います」と語る。芸術監督としては「狂言は『このあたりのものでござる』で始まりますが、そういった狂言の精神を盛り込んで、世田谷を中心に地域同心円的に考えられるような、ある種普遍的なものをテーマにして、時代を写すような劇場にしたいということを骨子に考えてきました」と思いを述べた。

伝統芸能の世界に身を置きながら、芸術監督として、また演出家、俳優として、常に新しい出会いに積極的な萬斎。そんな彼の姿勢を反映するように、同劇場では「現代能楽集」シリーズや、前川知大が手がける「奇ッ怪」シリーズなど、古典と現代劇の融合を目指す作品群も多数ラインナップされている。萬斎は「パンツの話で恐縮ですが（笑）」と前置きしながら、「先人のパンツはとにかく大きくて、太らないとパンツが落ちてしまうんですよね。伝統芸能はそのように全方向的に埋めていかないと、という気持ちにさせてくれます。伝統芸能と現代演劇のどちらがいいということはありませんが、伝統芸能の知恵を（現代の演劇人にも）ぜひ生かしてもらいたい」と希望を述べた。

また今後の劇場の展開について、萬斎は「ほかでは観られないものが観られる劇場という方向性は死守したい」と述べ、永井も「この劇場独自のコンセプトを守りながら、今後はほかの公共劇場と組んでいく、一緒に作っていくこともあるかと思っています」と語った。