100年以上の歴史を持つOSK日本歌劇団を代表する演目「レビュー 春のおどり」が、初演から100周年を迎えるのを記念し、南座と新橋演舞場で上演される。「春のおどり」というタイトルのもと、趣向に富んださまざまなチャレンジを繰り広げてきたOSKは今回、アニバーサリーにふさわしい、自分たちの新境地となる作品を世に送り出す。
ステージナタリーでは2月9日に大阪府内で行われた「レビュー 春のおどり」記者会見、そしてその後、翼和希ら11名の劇団員たちが臨んだビジュアル撮影の模様をレポート。舞台の上はもちろん、どんなときも全力でポジティブ、高いプロ意識とチームワークを見せるOSKの魅力をたっぷりと伝える。
取材・文 / 熊井玲撮影 / 井川由香
正装で記者会見に臨む「全力で取り組んでまいりたい」(翼和希)
2月9日、大阪府内にてOSK日本歌劇団「レビュー 春のおどり」の製作発表記者会見が行われた。風が冷たい日だったが、劇団員たちが緑の袴の“正装”で会見場に姿を現すと、会場にぱっと明るさが増し、和やかな空気が流れた。
この日の会見では、OSKの伝統演目「レビュー 春のおどり」の2026年公演の詳細が発表された。1926年にスタートし100周年を迎えた「レビュー 春のおどり」は、4月10日から19日まで京都の南座にて上演ののち、30日から5月5日まで新橋演舞場でも上演され、さらに7月には「レビュー 夏のおどり」として福岡の博多座でも上演される。会見場には多くの記者が集まり、公演の注目度の高さを感じさせた。
2026年の「レビュー 春のおどり」では、第一部に和物ミュージカル「たまきはる 命の雫」、第二部に洋物レビュー「Silenphony─サイレンフォニー─」が上演される。「たまきはる 命の雫」は2000年に奈良県橿原文化会館にて1日限定で上演された作品で、OSKでは「陰陽師 闇の貴公子☆安倍晴明」(☆は五芒星が正式表記)や翼和希トップスター就任記念「レゼル Les Ailes」などを手がけた北林佐和子が作・演出を担当。古代ヤマトの時代を舞台に、ウィリアム・シェイクスピア「ロミオとジュリエット」の作品世界が繰り広げられる。また平澤智が作・演出を担当する「Silenphony─サイレンフォニー─」では、“silence”と“symphony”を掛け合わせた造語をタイトルに、OSKの新境地を拓く。平澤は、OSKでの初演出作「STORM OF APPLAUSE」で“新時代のOSK”を感じさせるスタイリッシュ&エネルギッシュな作品世界で好評を博した。今回も、固定観念に捉われない、斬新な作品作りに期待が高まる。
会見には翼、千咲えみ、華月奏、城月れい、登堂結斗、天輝レオ、壱弥ゆう、椿りょう、唯城ありす、羽那舞、そして平澤が登壇。北林も出席予定だったが、雪により移動が間に合わず、司会がメッセージを代読する形での参加となった。北林は「本作品はおよそ25年前に奈良県のとある記念イベントのためオリジナルに製作された作品です。その際も、そのときの自分の精いっぱいの経験と情熱で取り組んだ作品ではありましたが、こうして長い年月を経て再びOSK作品として、翼和希、千咲えみはじめ魅力的なキャストを得て皆様にご覧いただくことができること、大変うれしく光栄に思います。とは言え、改めて当時の脚本を読み返しますと、やはり時代の変化は抗いようもなく、今回はシェイクスピアの普遍的なテーマを捉えつつ、かつ日本の様式美、歌劇の魅力を結集し、現代のエンターテインメントとして見応えのあるものを目指したいと存じます。昨今のエンターテインメントでは劇場離れの傾向も危惧されておりますが、南座、新橋演舞場、博多座、それぞれ日本を代表する劇場で、劇場でしか見られないステージをお楽しみいただけましたら幸いです」と意気込みを述べた。
続いて平澤があいさつ。「『春のおどり』を手がけるのは、これで3作品目になります。『STARt』(2021年)を演出してから5年ぐらい経っているそうなので、今回また新たな気持ちでクリエーションに臨みます。ちなみに私事ではありますが……実は昨年の『春のおどり』も振付に入る予定だったのですが、直前でアキレス腱が切れまして、悔しいことに参加できなくなりました。なので、今回はその悔しさもバネに、この作品に全勢力を傾けて取り組んでいきたいと思います!」と茶目っけたっぷりに語ると、劇団員たちが笑い声で応え、平澤とOSKメンバーの仲の良さが感じられた。
続けて劇団員たちもあいさつ。翼は背筋をピンと伸ばしてから「今年は『春のおどり』上演100周年という大変おめでたい年でございます。そのような節目の年に、伝統ある『春のおどり』を上演することができて、本当にうれしく思っております。100年間この演目を守り続けてくださった先輩方、それを支えてくださった皆様の思いも背負って、私たちもそれを受け継ぎ、そしてまた未来につなげていけるように、今回の作品に全力で取り組んでまいりたいと思います」と意気込みを述べる。
千咲は「OSKの大切な大切な演目である『春のおどり』を、4月に関西圏で上演できますこと、本当に松竹様のお力添えあってこそ、と感謝しております。今年もまた『春のおどり』に出演できますこと、私個人ももちろんですが、劇団として新たな一面を皆様にお見せできるよう、一丸となって頑張ってまいりますので、どうぞ皆様お力添えいただけたら大変うれしく思います」と笑顔を見せた。
ビジュアル撮影前半は登堂・羽那・桐生・唯城・城月
1時間ほどで会見が終わると、本公演のポスターやパンフレットで使用するビジュアルを撮影するため、劇団員たちはすぐに大阪府内の撮影スタジオへ移動した。撮影は、著名なアーティストを多数撮影しているディレクター、フォトグラファーの永石勝が担当。劇団員たちが撮影用のメイク・衣裳を準備し始めた頃、永石の準備はすでに万端で、撮影開始をスタジオの一角で静かに待っていた。
舞台やイベント、ラジオ出演など、それぞれが多様な役割を担うOSKの劇団員たちは、スケジュールもそれぞれ。撮影は、その日の夕方にラジオ出演を控えていた登堂から始まった。
ステージメイクを施し白燕尾に着替えた登堂は、やや緊張した面持ちでスタジオ内に入ってきた。そして撮影の進行について説明を聞き、青の背景紙を垂らした白ホリの中央に立った。平澤もスタジオに駆けつけ、撮影したカットがすぐ見られるよう、モニターの近くに立つ。「まずはダンスシーンの一部を切り取ったような、動きのあるカットが撮りたいです」と永石が説明すると、登堂は自由に踊り始めた。しばらくその様子を見ていた平澤は「もうちょっとパッ!というイメージで」と言いながら、自らその場で踊ってみせ、登堂がそれに続く。また動きを止めたポーズの撮影では、カメラに集中して表情が固くなっている登堂に、永石が「にこやかに!」と声をかけた。その後、カメラに向かってまっすぐ歩く撮影や、宣伝動画用の動画撮りなども行い、登堂の撮影は終了。ふと腕時計を見ると、撮影開始からまだ10分しか経っていなかった。先の会見で登堂は「『春のおどり』がこの桜咲く季節にできること、そして出演させていただけること、本当に心から幸せに思っております」と語り、第一部で演じるロレンス神父役について「今までになかったお役をさせていただけるので、これからいろいろな方の演技を拝見して、少しでも技を盗めたら」と真摯に語っていた。撮影に真剣に臨む登堂の姿を見ていると、ロレンス神父役はとても似合いそうに感じた。
次にスタジオに現れたのは柔らかなエメラルドグリーンのドレスをまとった羽那。白い肌に真っ赤なルージュが映える羽那は、カメラを前にニッと笑顔になった瞬間、華やかさが倍増した。平澤が「スカートをもっとふわっとさせてみて」と言うと、軽やかにスカートを振り始める。「目線を意識してアチチュード……今度はスパニッシュ系ダンスのような感じで、激しくスカートを振ってみて」と平澤が言うと、羽那はさっとその声に応えていく。会見で羽那は「OSK日本歌劇団がより多くのお客様に知っていただけるような、そんな爆発的な公演にできたらいいなと意気込んでおります」と力強く語り、第一部で演じるモンタギュー夫人については、「翼さんのお母さん兼、華月さんの妻というなかなかない役です(笑)」と話していた。羽那の奮闘に、ぜひ注目したい。
今回の公演には特別専科の桐生麻耶も出演する。白燕尾で現れた桐生は、そこだけライトが当たっているかのような眩しさを放つ。カメラの前で自然と踊り始めた桐生の動きは、どのカットも「ベストショット!」と言いたくなるほど美しい。またどの動きも大きく余裕があって、撮影を見ていたスタッフが思わず「カッコいい……」と呟くと、永石と平澤も「いいね!」とうなずき、スタジオにいる全員が桐生の動きに見惚れた。が、撮影が終わった瞬間にリラックスした表情で冗談を言い始め、周りにいる人たちみんなを和ませる桐生。そのギャップとサービス精神も桐生の大きな魅力だ。
4人目は唯城。大きな瞳と華やかさが魅力の唯城は、「お願いします!」と可愛らしい声を響かせながらスタンバイ。「スカートを振ってみて」と言う平澤の指示に、最初は普通にスカートを振ってみせたが、途中でパッと手を離してスカートの裾を“遊ばせる”動きをつけ始めた。「お! うまいね!」と平澤が笑顔で声をかけると、さらに振り方をアレンジしてさまざまなバリエーションを披露した。カメラに向かって歩いてくる撮影では、しなやかな歩き方で魅せる。「たまきはる」でジュリエットの侍女・マリア役を演じる唯城は、「マリアはずっとジュリエットのそばにいたと思うので、千咲さんのジュリエットを支えられる存在になれれば」と意気込む。さらに「春のおどり」について「私にとってとても特別な公演ですし、絶対に毎年出たい!と思っている1つの目標となっている公演ですので、先生方や上級生の方々について精いっぱいお届けできますようにがんばります」と思いを込めた。
次は城月。動画コメント撮影時に城月が「ダンスを極限までがんばりたいです」と言ったのを聞いていた平澤は、「極限って言ったな……?」とニヤリ。平澤が次々と動きの指示を出すと、城月はロングヘアを揺らしながら最初は可憐に、しかし徐々に大胆な動きを披露した。長い手脚が魅力の城月は、自身の長所をきちんと心得ていて、どんなポーズを取るときにもその魅力を最大限に生かす。まっさらな空間に細筆で絵を描いていくような動きの美しさに見惚れた。城月は「春のおどり」について、「OSKといえば『春のおどり』だと思っておりますので、今年も『春のおどり』が開催できますこと、とてもうれしく思っております。特別専科にいらっしゃる朝香櫻子さん、桐生さん、そして初舞台生の5人も含めた今回の出演メンバーで『春のおどり』をお届けいたしますので、皆様ぜひ観に来ていただけたらなと思います」と語った。また第一部で演じるキャピレット命婦については「先入観にとらわれたくないので、台本を見るまではあまりこれから自分の中で入れないようにしています」と、控えめながらキッパリと述べた城月。舞台に対する真摯な姿勢は、この一言にもあふれていた。
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