谷川さん(左)と竪山隼太。(撮影:平岩享)

隼太からHAYATAへ 第11回 [バックナンバー]

竪山隼太に初めての撮影依頼!旧友のアーティスト写真を撮る

ミュージシャンの“名刺代わりの1枚”を

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俳優の竪山隼太が、もう1つの夢であるカメラマンへの道を目指す本企画。プロカメラマン・平岩享の指導のもと、第1章では竪山と親交がある俳優たちが被写体となり、それぞれの魅力を引き出す撮影に挑んだ。第2章ではより実践に近い形で、竪山にとって初対面の相手、初めて訪れる場所での撮影に奮闘している。

今回は、なんと竪山に初の撮影依頼が。依頼主は、竪山の中学からの同級生でドラマーの谷川賢二さん。「すごく面白いヤツなんです!」と竪山が何度も話すその理由は、出会ってすぐ、納得できた。

取材・/ 熊井玲

限られた条件でベストを探す

谷川さんから指定された待ち合わせ場所は、新宿駅から少し離れた場所にある雑居ビルの地下。そこはとある音楽スタジオで、谷川さんにとって思い入れのある場所なのだとか。狭い階段を降りていくと、ドラムの音が小さく聞こえてきた。

今回の被写体・谷川さんは竪山の中学時代の同級生。現在も親交が続く2人だが、竪山がカメラを始めたことをSNSで知り、「ドラマーとしてのプロフィール写真を撮影してくれないか」と谷川さんから竪山に依頼があった。ミュージシャンの撮影だから演奏風景はぜひ撮りたい、ということで、平岩と竪山は事前ミーティングで、演奏風景とプロフィールカットを分けて撮影することに決めた。

谷川さん(左)を撮影する竪山隼太。(撮影:平岩享)

谷川さん(左)を撮影する竪山隼太。(撮影:平岩享)

まずは演奏風景から。決して広いとは言えないスタジオには、2台のドラムセットが向き合うような形で置かれている。壁にはいくつかのライブのポスター、部屋のあちこちにメトロノームや音響機材などが雑然と置かれている。「わー! バンドマンの部屋って感じがする!」と竪山はワクワクした表情でスタジオの中に踏み入った。一方、室内の状況を確認して大きな照明機材が組めないことを確認した平岩は、小さめなライトを1つ準備して、まずはこのスペースでどんな写真が撮れそうかを、竪山にアドバイスした。竪山はその一言一句に頷きながら、カメラの設定を変更したり、立ち位置を変えたりしてテスト撮影を始めた。が、いつもに比べると動けるスペースは限られているし、窓のない蛍光灯の部屋では自然光で撮るような面白さが出せない。竪山がなかなかしっくりときていない様子を見て、「部屋の蛍光灯は消せますか?」と平岩が尋ね、部屋の電気が消された。

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

真っ暗な室内で、照明が当たっている谷川さんの手元と顔だけがぼんやりと写し出されると、それまでにない表情や温かみが感じられた。さらに部屋全体が暗くなったことで背景も暗さに溶け込み、スペースの狭さや室内の様子も気にならなくなる。「あ、なんかカッコいいかも……」と竪山は小さな声でつぶやいて、谷川さんの演奏風景を黙々と撮影していった。ふと、竪山のカメラのプレビューをのぞき込んだ谷川さんが「おお! いつものスタジオがこんな風に……!」と感嘆の声を上げると、竪山もホッとした表情を見せ、2人は軽口を叩きながら、ドラムとカメラのセッションを続けた。

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

部屋の照明を落として竪山隼太が撮影した谷川さん。(撮影:竪山隼太)

興味の矛先を信じてきた谷川さん

そんな谷川さん。出会って10分もしないうちに、飛び抜けたオープンマインドの持ち主であることはわかったが、来歴を聞いてさらに驚いた。中学から大学まで続けていたバンド活動を、大学卒業と同時に辞めた谷川さんは、まず京都のゲーム会社に就職。人間関係には恵まれたが、数年働いたのち違う仕事もやってみたいと思い始め、「飛行機が好きだったから」という理由で航空会社の整備管理の仕事に就いた。仕事は面白かったが、コロナ禍で航空会社が厳しい状況に追い込まれたことを機に、今度は特技を生かして大手コンサル会社でITコンサルタントとして働く。が、こちらは水が合わず、思い切って会社員という立場を捨て、自分が本当にやりたかったことを突き詰めることにした。

一方で、一度は辞めたドラムを再開。2017年にとあるライブで関慶和さんのキラキラとした姿に見せられ、「帰宅してから必死に検索しました(笑)。それで、関さんと縁があるスタジオをなんとか見つけて連絡を取り、ドラムを教えてもらうようになったんです。実はここは関さんのスタジオで、このドラムセットの音や質感も、基地みたいな空気も好きで。僕の数年の思い出が詰まってます」と語ってくれた。そんな谷川さんは現在、プログラミングの仕事をする一方でドラムを教えたり、複数のバンド活動やミュージシャンのサポートなど精力的にドラマーとして活動を行っている。

谷川さんと竪山は、中学1年のときに共通の友達を通じて知り合った。その頃、谷川さんはゲームセンターでドラムマニアという“音ゲー”にハマり、ゲームからドラムに興味が移り、ついにバンドを結成。竪山もそのメンバーになった(ちなみに竪山はキーボード担当)。「そこから高校3年までずっと一緒にバンドをやっていて、卒業と共に解散しました。でもその後も彼とは関係が続いて、今もよく舞台を観に行っています」と笑顔で話す谷川さんに「学生時代、本当に彼はモテたんですよ! ライブに来た女の子はみんな谷川目当てで!」と竪山が続けると、谷川さんは大きな笑い声で応えた。

思いがけず実現、旧友とのツインドラム

谷川さんが自由に演奏する姿を、20分ほど静かに撮影していた竪山。すると平岩が「谷川さん、このドラムだけずっと叩き続けてくれますか?」とリクエストを出した。さらに「次はここ……その次はここ……」と叩く位置を変えてもらい、手と目の動線に変化をつけていく。しばらくすると今度は竪山が動き始め、部屋の一番奥まで引いて撮影したり、椅子に乗って上から撮影してみたりと体勢を変え始めた。そんな竪山の動きに合わせて、平岩は自ら重たいライトを担いで撮影をサポートする。限られたスペースの中でも位置や照明を変えることで、さまざまなカットを撮影することができた。

初めてドラムを叩いた竪山隼太(左)と谷川さん。(撮影:平岩享)

初めてドラムを叩いた竪山隼太(左)と谷川さん。(撮影:平岩享)

ドラムが楽しくなってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

ドラムが楽しくなってきた竪山隼太。(撮影:平岩享)

と、谷川さんが「叩いてみる?」と竪山にドラムスティックを渡した。「叩いたことないよ?(笑)」と言いながら谷川さんの対面にあるドラムの前に座り、谷川さんのガイドで叩き始める竪山。最初はリズムが狂ってしまいなかなか上手くいかなかったが、5分もしないうちに竪山は感覚をつかみ始めた。思いがけず実現した、旧友とのツインドラム。竪山は、カメラマンとしての真剣な表情からいつもの屈託ない笑顔に変わり、楽しそうにドラムを叩いていた。

カメラを通して見えるもの、つながるもの

その後、場所を移して谷川さんの普段の様子を捉えたプロフィール写真の撮影に。谷川さん到着の少し前に、平岩と竪山はテスト撮影を始めた。いつも通り、竪山が被写体となり、平岩がお手本として数枚撮影すると「あれ! 隼太くん、雰囲気が変わったね!」と驚きの声を上げた。今回に限らず、平岩は被写体の変化にとても敏感で、しかもレンズを通したときにそのセンサーが敏感に反応するらしい。「ハリー・ポッターと呪いの子」や「桜の園」を経験して、竪山の被写体としての魅力も増したようだ。

テスト撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

テスト撮影に臨む竪山隼太。(撮影:平岩享)

そして谷川さんのポートレート撮影がスタート。カメラの前でもまったく緊張せず和やかな表情を見せ、自らポーズも変えてくれる谷川さんに、竪山も徐々に饒舌になっていく。以前、黄色い壁の前で撮影したとき、苦労した記憶があるという竪山は、黄色い壁を使った撮影に最初は苦手意識を持っていたが、谷川さんには黄色の壁がとてもよく似合う。

竪山の「『バンドやろうぜ!』って感じで!」のリクエストに応える谷川さん。(撮影:竪山隼太)

竪山の「『バンドやろうぜ!』って感じで!」のリクエストに応える谷川さん。(撮影:竪山隼太)

竪山の「『バンドやろうぜ!』って感じで!」のリクエストに応える谷川さん。(撮影:竪山隼太)

竪山の「『バンドやろうぜ!』って感じで!」のリクエストに応える谷川さん。(撮影:竪山隼太)

撮ったものをカメラのプレビューで見て竪山も手応えを感じたようで、2人の会話と撮影のテンポがぐんぐん上がっていく。そんな2人を、平岩もカメラで追う。そして大盛り上がりの中、撮影は終了。そのまま3人は、部活帰りの高校生のような爽やかさで「なんか食べてく?」「お昼食べよう!」と去っていった。

谷川さん(左)と竪山隼太(撮影:平岩享)

谷川さん(左)と竪山隼太(撮影:平岩享)

プロフィール

竪山隼太(タテヤマハヤタ)

竪山隼太(撮影:平岩享)

竪山隼太(撮影:平岩享)

1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。現在、、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」にロン・ウィーズリー役で出演中。来年2月に風姿花伝によるプロデュース公演の第10弾「夜は昼の母」に出演。

平岩享(ヒライワトオル)

1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年は個別指導の写真塾や平岩記念写真館(家族写真撮影)にも取り組んでいる。

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竪山隼太 @hayata_tateyama

高校でHARKというコピーバンドを組んでいたのですが、その時のドラマー谷川くんを撮影しました。企画を通して親友とカメラを通して向き合うことが出来てとっても幸せな時間でした。ぜひみてみてやってください!!! https://t.co/LBhY6e93TS

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