「スリー・キングダムス」本日開幕、伊礼彼方「“迷走”していく芝居は新鮮な経験」
2025年12月2日 19:22
1 ステージナタリー編集部
伊礼彼方が主演を務める舞台「スリー・キングダムス Three Kingdoms」が本日12月2日に東京・新国立劇場 中劇場で開幕した。これに先駆け同日、公開フォトコールおよび初日前会見が実施された。
「スリー・キングダムス」は、サイモン・スティーヴンスが執筆したサスペンス劇。ある猟奇殺人を追う2人のイギリス人刑事が、捜査を進めるうち、ヨーロッパ全土に広がる国際的な犯罪組織の存在にたどり着き、イギリスからドイツ、そしてエストニアへと移りながら、資本主義の裏に潜む人間の暗部と対峙していく。日本初演となる今回は、翻訳を小田島創志、演出を新国立劇場演劇芸術参与の上村聡史が担当する。
フォトコールでは2つのシーンが公開された。1つ目はオープニング。白髪に白スーツというミステリアスな出で立ちのトリックスター(音月桂)がスタンドマイクの前に立ち、光と影のコントラストで作られた幻想的な空間で歌う。その神秘的な歌声と、エキゾチックな調べに誘われるように、物語は幕を開ける。2つ目は、場面がイギリスからドイツへと移る一連のシーン。イギリスの自宅でイグネイシアス巡査部長(伊礼)が歳下の妻キャロライン(夏子)と出発前に会話をしていると、突然、1台のスーツケースが舞台上に投げ込まれる。すると静かなシーンから一転、辺りは騒々しい空港へ。舞台奥から現れた大勢の人々が忙しなく動き回る中、中央ではトリックスターがフランク・シナトラの「Come Fly With Me」を力強く歌い上げ、その場は混沌とした空気で満たされる。そのまま、イグネイシアスと相棒のチャーリー警部(浅野雅博)がドイツに降り立つと、今度はドイツ人刑事シュテッフェン(伊達暁)が待ち受けている。この出会いのシーンでは、シュテッフェンのたどたどしいドイツなまりの英語、過去にドイツに住んでいたイグネイシアスの流暢なドイツ語、そしてドイツ語を聞き取れず話せないチャーリーの様子が、俳優たちの日本語の発声の変化で巧みに表現され、笑いを誘った。
会見には、出演者12名全員が登壇した。伊礼は作品について「わかりやすく言うと、本作はイグネイシアスの脳内をほかのキャラクターたちが映像化していくというもの。最終的には、イグネイシアスが現実にいたかどうかを疑ってしまうような不思議な物語」と説明。そして伊礼は「手慣れのキャストばかりで、出てくるたびにそのシーンの視線をかっさらってしまう強さがある。これまでは自分から仕掛ける芝居をすることが多かったのですが、今作では他人の芝居を待ち、影響され、どんどん“迷走”していくという新鮮な経験をさせていただいております」と本作での挑戦を明かした。
音月は「明確な答えが用意されていない作品なので、不条理な世界観にどっぷり浸り、自分の解釈を大事にしていただけたら」と観客にメッセージを送り、夏子も「五感を開いて、“わからないこと”を楽しんでもらえたら」と期待を込める。伊達は「登場人物たちがイギリス、ドイツ、エストニアを旅するので、日本語だけで多言語コミュニケーションをどう表現するのかに注目して」と言い、浅野も「ヨーロッパの西から東まで渡っていく、その妙技を楽しみにしていただければ」とコメントした。
さらにミュージカル作品への出演が多い伊礼は、日本で上演が重ねられているミュージカル「エリザベート」のタイトルを借りて、「ミュージカルファンの方、音月さんの役は“1人『エリザベート』”だと思ってください(笑)」とアピール。本作で人間を超越したトリックスター役としてさまざまな形で登場する音月について、「彼女は今回1人で“ルキーニ”、“トート”、“エリザベート”、“ルドルフ”と何役もやるので、『この瞬間は〇〇だ!』というふうに観ていただけたらわかりやすいと思います」と、伊礼にとっては音月演じるトリックスターが「エリザベート」の登場人物と重なって見えることを説明した。
ほかのキャストたちも本作の魅力をさまざまな側面から紹介。佐藤祐基は「伊礼さんの“燃えカス”っぷりが一番の見どころ(笑)。僕らが伊礼さんをどれだけ燃えカスにできるかが重要」と観客の想像をかき立て、竪山隼太は「音月さんがときどき神様のように見えます(笑)。愚かでも必死に生きている登場人物たちと、それを俯瞰しているトリックスターがいる独特な世界観を楽しんで」と呼びかける。坂本慶介は「ラストシーンが本当に美しく、“気持ちいい”シーンになっているのでぜひ注目を」、森川由樹は「女性キャスト3人のセリフが、他人のセリフでも自分のもののように感じてドキッとする。“この言葉は誰の脳内なんだろう”と考えながら観ていただければ楽しいはず」と、さらに楽しめるポイントを紹介。鈴木勝大は「脚本を読んでいても思い浮かばないような、上村さんの攻めた演出が見どころ。終盤のシーンは芝居をしながら“自分は何しているんだろう”と思うことも(笑)」と明かし、八頭司悠友は「僕は最初のシーンから次の出番まで2時間半空くのですが、その2時間で伊礼さんの顔がまったくの別物になる。顔の変化にも注目してみて」、近藤隼は「何もない箱のような舞台美術。その中でさまざまな変化が起きていく、視覚的にも聴覚的にも楽しめる部分が多い作品」と話した。
上演時間は約2時間55分。公演は12月14日まで行われる。
スリー・キングダムス Three Kingdoms
開催日程・会場
2025年12月2日(火)〜14日(日)
東京都 新国立劇場 中劇場
スタッフ
作:サイモン・スティーヴンス
翻訳:小田島創志
演出:上村聡史
出演
伊礼彼方 / 音月桂 / 夏子 / 佐藤祐基 / 竪山隼太 / 坂本慶介 / 森川由樹 / 鈴木勝大 / 八頭司悠友 / 近藤隼 / 伊達暁 / 浅野雅博
ステージナタリー @stage_natalie
【公演 / 会見レポート】「スリー・キングダムス」本日開幕、伊礼彼方「“迷走”していく芝居は新鮮な経験」
「エリザベート」を引き合いにミュージカルファンにもアピール
▼舞台写真あり
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