十代で「ライオンキング」ヤングシンバ役に抜擢、二十代を蜷川幸雄率いるさいたまネクスト・シアターで過ごし、32歳となった今年、舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」のロン・ウィーズリー役で活躍中の俳優・
第5回は、前回に続き劇作家、演出家、俳優として多方面で活躍中の
構成
第5回の課題「ロケ場所を探そう!」
平岩「プロのカメラマンの仕事は撮影する時間帯と場所が指定されて依頼が来る場合が多いです。屋外で撮影することができる場合も、取材場所から歩いて行ける距離で撮影場所を探さなければいけません。見慣れた街の景色もポートレートを撮る場所として捉えると、発見がたくさんあったりします。今回は実際に取材する場所の周辺で隼太くんに撮影場所を探してもらい、撮影してみました。次に僕から『こう撮ってはどうですか?』と隼太くんに提案することで、新しい発見をしてもらいたかったからです」
1st Trial
撮影場所となったのは、大通りから1本入れば緑道などもある、車通りや人通りが比較的少ないエリア。竪山はあらかじめ考えていた撮影ポイントに小沢をいざないつつ、さまざまな角度から小沢を捉えていく。
竪山「事前に時間を決めて、まず周辺を平岩さんと歩いてみました。『大通りに出ないほう、小道を選択するほうがストーリーがある写真が撮れるよ』とのことで、撮影できそうなポイントに当たりをつけ、ナタリーの本社に戻ってきました。するとヘアメイクの大藤さんが前回のみっちーの様子を見て、パーマが似合うんじゃないかとクリクリ巻いてくださいました。これがまたかわいい。みっちーもうれしそうです。被写体さんのモチベーションを上げるプロの技を、ここでも見られました。僕もがんばらなくては。ラベンダーが綺麗だったので、まず花とみっちーを。また僕が初めて平岩さんに撮ってもらったときも街歩きだったので、それに似た写真を考えました。奥行のある道路とみっちー、また壁を背にして横位置で全身を撮りました。前ボケを使った写真やガラス越しの写真など工夫も自分なりにしてみました」
2nd Trial
撮影が進むにつれ、今回もより大胆な動きを見せ始めた小沢。天を仰ぎながら、指に花弁を絡ませながら、ふと後ろを振り返りながら……何ともフォトジェニックな表情を見せる。そんな小沢に、竪山も「ここに立ってみて」「上を向いて」と自分のイメージを伝え、撮りたいイメージを抑えていった。
竪山「けっこう狙いは悪くなかったみたいです。というかスナップショットがカメラを購入してから一番やってるんですよね。褒めてもらった後に同じルートを平岩さんと歩き直して、『僕ならこう狙うよ』というポイントを教えてもらいました。まずラベンダーとみっちー。みっちーにはその場にいてもらい、みっちーの背中からぐるっとラベンダーが入るようにいろいろな角度から撮影しました。狙うポイントは悪くないのに可能性を狭めてしまっていたなあと。
また画角も空を映すとより空間が拡がります。ガードレールに腰かけてもらい、ちょっと引いて撮ると、ファッション雑誌で見たことがあるショットに様変わりしました。ガラスを使った撮影では、カメラをガラスに近づけることで、反射しているみっちーも明確に映り込むように。黒い柵を使って、よりカッコいいみっちー。前ボケも、より緑を通しやすい葉を選んでみっちーに奥に立ってもらうことで実現。建物の白壁を使うと、もう宣材でも使えそうな写真に様変わりしました」
Review
平岩「1回目は隼太くんに自由に撮影してもらいました。これまで公私にわたり隼太くんに教えてきた構図や前ボケなどをどんどん駆使するのに感心しました。そして被写体の小沢さんも隼太くんの動きに呼応するかのようなポーズや表情を見せてくれてとても良い撮影になりました。最後にガラスに映り込んだ小沢さんを撮ろうとしたときにうまくいかなかったことを除いても、充分な撮れ高だったと思います。2回目は最初に撮影したローズマリーがある場所でいろいろな角度や高さから被写体を撮影する方法を伝授したり、ガラスの映り込みを効果的に撮る方法や同じ場所でも『僕ならこうやって撮るよ』という案を伝えて撮ってもらいました。今回はかなり隼太くんの成長を実感出来た回になりました」
モデル・小沢道成が語る、隼太とHAYATA
今日の撮影で面白いなと思ったのは、最初に隼太くんが独力で撮影したものについて平岩さんがアドバイスする、その内容。「なるほど、カメラマンさんはそういう視点で撮られているんだな」と感じましたし、カメラマンさんの光の使い方や画角の切り取り方でこんなにも表情が違って見えるんだって、撮られる側からしても勉強になりました。メイクの大藤さんも、僕を見てその場で思ったイメージを直感で形にしてくださって、すごいなと思いました。
瞬時に画角や構図がつかめるようになるのって俳優としても大事なこと。カメラと役者って別のフィールドではありますが、やがて俳優の仕事にも返ってくるんじゃないかな。隼太くんは俳優としてもすごいけど、今後いったいどうなっちゃうの?って思いました(笑)。
竪山隼太が語る、表現者・小沢道成
みっちーとは、実は共演したことがありません。ある舞台を観に行き「うまい子おるなあ」と思った記憶があります。そこからみっちーが主宰するEPOCH MANの一人芝居を観たり、虚構の劇団の公演を観させてもらったり、僕の芝居を観てもらったり、飲みに行って仲良しです。ジェンダーを飛び越えるみっちーにしか出せない何かに魅了され続けています。作家、演出家、俳優全部できちゃうんだもんな。ほんとすごい。
実際は一人芝居なのですが、相手役と稽古がしたいとのことで、稽古場にお邪魔したことがあります。ラジオをかけながらセットをみっちー1人で作っていて、「セットはある作品からインスパイアされたんだよー」と教えてもらいました。高校の文化祭の空気を思い出しながら、責任全部背負っている大人のみっちーの顔は、そりゃカッコいいんです。本多劇場で一人芝居成立させちゃうんだもんなあ。早く一緒にやりたいね。といえども俳優は待つのが仕事なので(笑)、誰かお仕事のお話お待ちしておりまーす!
第5回を終えて
竪山「なんか惜しいんですよねー。僕はいつも(笑)!!! アドバイスもらって、『ああーそれは多分気づけていたことだったのに』と悔しい想いでした。でもその惜しいから平岩さんまでの距離が、当たり前に遠いんですよね。すごく視野が広く、画になりそうなポイントを被写体の人と楽しくおしゃべりしながら、探していらっしゃる。僕も初めて平岩さんに撮ってもらったときはこのパターンでした。楽しかった記憶しかありません。あと、いろいろな写真に出会ってその真似をしてみることも重要だと思いました。そしてこれまですべての撮影でヘアメイクをしてくださっている大藤さんの力を強く感じました。みっちーが喜んでくれると、こちらも楽しく撮影できます。スナップはチョットしたときに撮れるし、いろいろな場所に行けるので、これからもいろいろな友達で練習したいなと思いました」
プロフィール
竪山隼太(タテヤマハヤタ)
1990年、大阪府生まれ。2000年に劇団四季ミュージカル「ライオンキング」ヤングシンバ役でデビュー後、「天才てれびくんワイド」にレギュラー出演し子役として活動。2009年に蜷川幸雄率いる演劇集団さいたまネクスト・シアターで活動。最近の出演作に「Take Me Out 2018」、「ガラスの動物園」(上村聡史演出)、さいたまネクスト・シアター最終公演「雨花のけもの」(細川洋平作、岩松了演出)など。7月から舞台「ハリー・ポッターと呪いの子」に出演中。
平岩享(ヒライワトオル)
1974年、愛知県生まれ。フォトグラファー。時代の顔となるポートレートを数多く撮影。岩井秀人が代表を務める株式会社WAREのサポートメンバー。近年はドローンを使った動画など、新しい手法にも取り組んでいる。
小沢道成(オザワミチナリ)
1985年、京都府生まれ。劇作家、演出家、美術家、俳優。虚構の劇団所属、EPOCH MAN主宰。「オーレリアンの兄妹」が第66回岸田國士戯曲賞最終候補作にノミネートされた。9月に舞台「パタリロ!~ファントム~」、10月に虚構の劇団 活動休止公演「日本人のへそ」に出演。
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小沢道成 @MichinariOzawa
【掲載情報その2!!!!】
第5回となるステージナタリー コラム連載『隼太からHAYATAへ』
ヘアメイク大藤さんの遊び心満載、カメラマン平岩さんも楽しさ全開、そして俳優心を持ちながらもカメラを手に持つ隼太くんのセンス炸裂、楽しい撮影になりました。ロンドンボーイ♡
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