アジカンの過去と現在が“誕生の地”横浜で交差、11年ぶり「ファン感謝祭」で高らかに響いた新旧27曲

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ASIAN KUNG-FU GENERATIONのメジャーデビュー20周年と、伊地知潔(Dr)の正式加入25周年を記念したワンマンライブ「ファン感謝祭2024」が、8月24日と25日に神奈川・横浜BUNTAIで行われた。

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

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横浜BUNTAIがある横浜はアジカン誕生の地であり、節目のたびにライブが行われているホームともいえる地。2日間にわたった「ファン感謝祭2024」のセットリストはファン投票をもとに、代表曲から隠れた名曲まで全27曲からなる大盤振る舞いの内容に。各地から足を運んだ5000人とライブの生配信を見守るファンは、自身の思い出や記憶をアジカンの楽曲に重ね合わせながら、1曲1曲を味わい尽くした。このレポートでは25日公演の模様を紹介する。

「ファン感謝祭」リクエスト1位の曲は

後藤正文(Vo, G)(撮影:山川哲矢)

後藤正文(Vo, G)(撮影:山川哲矢)[拡大]

喜多建介(G, Vo)(撮影:山川哲矢)

喜多建介(G, Vo)(撮影:山川哲矢)[拡大]

横浜BUNTAIの設備の1つであるワイドビジョンに「君という花」のミュージックビデオに登場する4棟の集合住宅が等間隔で並び、その下には緑が茂るステージが。木々の間にはドラムやアンプが横一列に設置され、主役であるアジカンの到着を観客同様に待っていた。いつしかビジョンに映し出されていた映像が海岸沿いの風景に切り替わり、ライブの始まりを察した5000人の観客はメンバーを迎えるべく総立ちに。そして2つのアニバーサリーを祝うような温かい拍手で、ステージに足を踏み入れた後藤正文(Vo, G)、喜多建介(G, Vo)、山田貴洋 (B, Vo)、伊地知潔(Dr)を歓迎した。

山田貴洋 (B, Vo)(撮影:山川哲矢)

山田貴洋 (B, Vo)(撮影:山川哲矢)[拡大]

伊地知潔(Dr)(撮影:山川哲矢)

伊地知潔(Dr)(撮影:山川哲矢)[拡大]

「ファン感謝祭2024」の始まりを飾ったのはメジャーデビュー作「崩壊アンプリファー」の1曲目である「遥か彼方」。今年7月リリースのシングルコレクション「Single Collection」に2024年バージョンが収録されているこの曲は、テレビアニメ「NARUTO -ナルト-」のオープニングテーマであり、海外公演でも大合唱を巻き起こすASIAN KUNG-FU GENERATIONの代表曲だ。かつては若さゆえの焦燥と青臭さをはらんでいたこの曲だが、20年の歳月を経て再現されたサウンドは骨太さと包容力をたたえ、メンバーが25年の間に重ねてきた絆をも感じさせるものに。後藤のシャウトがさく裂する大サビの直前に客席が一瞬明るくなると、ステージを囲む形で設置された客席には笑顔が広がっていた。インディーズ時代の人気曲「羅針盤」ではビジョンに「ASIAN KUNG-FU GENERATION」のロゴが浮かび、映画のオープニングさながらのスペクタクルな演出がオーディエンスの高揚感を煽った。

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)[拡大]

「今日は『ファン感謝祭』ということで、リクエストしてくれたトップ10は全部やります。自分らしく楽しんでください。では、リクエスト1位の曲を……」という後藤の言葉に続いたのは、1stアルバム「君繋ファイブエム」より「夏の日、残像」。8月下旬、まだ暑さの残るこの日にはうってつけとしか言いようのないロックチューンが、4人の演奏シーンと夕景をシンクロさせながらパフォーマンスされ、観客のノスタルジーを誘う。その後もメンバーは、「ワールドアパート」「君という花」といった多くのリスナーの心をとらえたシングル曲だけでなく、「バタフライ」「路地裏のうさぎ」といったレア曲も惜しみなくパフォーマンスして、何度となく客席に歓声を巻き起こす。「ファン感謝祭」というタイトルに違わぬ選曲にオーディエンスが歓喜する一方で、後藤は「皆さんの顔がほころんで、待ってました感があるのはうれしいんだけど、俺の喉だけがうれしくない……」と、体の力を振り絞るような歌唱方法を求められる初期曲にぼやき節。しかし、「私の喉を苦しめる選曲が続きますんで、ところどころで手を合わせて、楽しんでください」と柔らかい口調で語りかけた。

後藤ソロとCosmostudioの貴重ステージ

後藤正文(Vo, G)(撮影:山川哲矢)

後藤正文(Vo, G)(撮影:山川哲矢)[拡大]

Cosmostudio(撮影:山川哲矢)

Cosmostudio(撮影:山川哲矢)[拡大]

20代中盤のメンバーが橋の上で踊るMVを背に披露された「君という花」を区切りに、喜多、山田、伊地知が退場し、後藤は土手を模した細長いステージに向かう。階段を登り切った後藤はスタッフからアコースティックギターを受け取ると、開口一番に「最初に断っておきますが、1人で歌いたいと言ったわけじゃないですよ」とエクスキューズ。自分がいるステージが土手をイメージしたものであることを説明してから、「ソラニン」を穏やかに弾き語り始めた。「ソラニン」は2013年に横浜BUNTAIにほど近い横浜スタジアムで行われた「ファン感謝祭」の投票企画で1位を獲得した楽曲。浅野いにおのマンガを原作とした同名映画の主題歌として、浅野が作中に書いた詞にメロディを付ける形で誕生したエピソードを持つ。後藤は「詞を褒められるんだけど、俺が書いた詞じゃないんだよね」と笑いながらも、歌詞の言葉1つひとつを愛おしそうに歌い上げた。

Cosmostudioと伊地知潔(Dr)。(撮影:山川哲矢)

Cosmostudioと伊地知潔(Dr)。(撮影:山川哲矢)[拡大]

後藤のソロコーナーが終わると、今度は喜多と山田の2人によるデュオCosmostudioのコーナーへ。ここでは、喜多が「ウェザーリポート」で持ち前のハイトーンボイスを伸びやかに響かせ、山田が「冷蔵庫のろくでもないジョーク」で端正な歌声で観客の耳を潤す。なお「冷蔵庫のろくでもないジョーク」では、伊地知も加わり「ファン感謝祭」ならではの貴重なセッションが展開された。

Achico(Cho / Ropes)(撮影:山川哲矢)

Achico(Cho / Ropes)(撮影:山川哲矢)[拡大]

George(Key / MOP of HEAD)(撮影:山川哲矢)

George(Key / MOP of HEAD)(撮影:山川哲矢)[拡大]

「意外とカッコよかった」と後藤なりの賛辞が3人に贈られたところで、サポートメンバーのAchico(Cho / Ropes)とGeorge(Key / MOP of HEAD)がバンドに合流。そして「最初はチャラチャラしているやつだと思ってたけど、彼がアジカンにもたらしてくれた音楽的な進化は素晴らしいものだと思っています」という言葉を機に、伊地知にスポットライトが落ちる。まばゆい光を一身に浴びた伊地知は華麗なドラムソロで観客を唸らせ、トリッキーなリズムが象徴的な「ブルートレイン」へつなげる。6人のミュージシャンたちが放つ音が有機的に絡み合う「十二進法の夕景」、Georgeの奏でるシンフォニックな音色が祝祭的なムードを醸し出す「迷子犬と雨のビート」など、成熟したバンドサウンドがたっぷり響いた後半戦だったが、「Re:Re:」のイントロが鳴った瞬間に横浜BUNTAIの時は2000年代へと逆戻り。ビジョンにはかつてのアジカンのアーティスト写真が走馬灯のように投影され、過去と現在のアジカンがオーバーラップしていく。そこから「リライト」になだれ込むと、会場の熱気は爆ぜるように上昇。プリミティブな演奏と後藤の感情をむき出しにした叫びにも似た歌に合わせて、盛大なシンガロングが巻き起こり、強固な一体感が横浜BUNTAIを包み込んでいく。

“戦友”橋本絵莉子とのコラボも

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)[拡大]

「いろんなことがありましたが、潔が入って25年。こういう場所に立てていることをうれしく思います。ステージの上での自分は、スーパーマンじゃないと思わされる。でも、この3人と出会って、自分の中の思ってもないところが開いていく感覚があって。本当にアジカンをやっててよかったなと思います」とメンバーを代表してこれまでの日々を振り返った後藤。だが、その眼差しはすでに未来に向けられており、「転がる岩、君に朝が降る」で彼は、これから先もアジカンが転がり続けることを示唆するように「僕らはきっとこの先も 心絡まって ローリング ローリング」というフレーズに力を込めた。

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)[拡大]

「All right part2」を歌う橋本絵莉子(写真中央)。(撮影:山川哲矢)

「All right part2」を歌う橋本絵莉子(写真中央)。(撮影:山川哲矢)[拡大]

アンコールで後藤は自身が創立した、インディペンデントに活動するミュージシャンやアーティストに対して金銭的、技術的な支援を行うNPO法人「APPLE VINEGAR -Music Support-」を紹介し、スタジオ設立に向けてのサポートを呼びかける。そして、「この人たちがいなかったら、私の人生はなかったと言っても過言ではない」とメンバーをステージに呼び込み、“アジカンの新しい10年”にふさわしい鷹揚な新曲「MAKUAKE」をオーディエンスにプレゼント。さらに、アジカンと同じ時代を駆け抜け、日本のロックシーンの流れを変えた“戦友”である橋本絵莉子(チャットモンチー済)を迎え、「All right part2」をデュエットするこの日限りのコラボレーションも披露した。

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」の様子。(撮影:山川哲矢)[拡大]

サービス精神旺盛すぎる11年ぶりの「ファン感謝祭」は、「海岸通り」で穏やかな余韻を残しつつフィナーレへと向かっていく。心地いいフィードバックノイズが響く中で出演者全員が肩を組み、オーディエンスへの感謝の思いを伝えたあとは終演のアナウンスが流れる……本来はその予定だったが、拍手が鳴り止まずアジカンの4人はAchicoとGeorgeを伴って三度ステージへ。メンバーは「ここからはチケット代に含まれておりません」とうそぶきながらも、ダブルアンコールの発生に喜びを隠せない。そんな4人がラストナンバーとして選んだのは「少しずつ影が背を伸ばしても まだまだ終わりじゃないさ」と繰り返す「柳小路パラレルユニバース」。人生の折り返し地点を迎えてもなお、ロックバンドとして音楽を届け続ける意志を示す1曲を丁寧に奏で、「ファン感謝祭」を晴やかに締めくくった。

「ファン感謝祭2024」のDAY1の模様は8月31日まで、DAY2の模様は9月1日まで見逃し配信中。チケットはそれぞれ配信終了日の21:00まで購入できる。

セットリスト

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ファン感謝祭2024」2024年8月25日 横浜BUNTAI

01. 遥か彼方
02. 羅針盤
03. 夏の日、残像
04. ワールドアパート
05. 路地裏のうさぎ
06. バタフライ
07. センスレス
08. 橙
09. 君という花
10. ソラニン
11. ボーイズ&ガールズ
12. ウェザーリポート(Cosmostudio)
13. 冷蔵庫のろくでもないジョーク(Cosmostudio)
14. ブルートレイン
15. ムスタング
16. 無限グライダー
17. 或る街の群青
18. 十二進法の夕景
19. 未だ見ぬ明日に
20. 迷子犬と雨のビート
21. Re:Re:
22. リライト
23. 転がる岩、君に朝が降る
<アンコール>
24 . MAKUAKE
25. All right part2
26. 海岸通り
<ダブルアンコール>
27. 柳小路パラレルユニバース

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読者の反応

Ishit Omprakash @Omprakashindia5

@natalie_mu Asian Kung-Fu Generation returns to Yokohama after 11 years with a powerful 27-song set at their fan appreciation event. Featuring both past hits and new tracks, the concert also

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