坂本は「Ryuichi Sakamoto|Art Box Project」と題して、1年の活動をまとめたアートボックスを毎年発売している。「Playback 2022」にはDumb Typeのインスタレーション作品「Playback」のために坂本が制作したレコードを、個人が所有できる作品として再構成したものが収められる。価格は税込30万円。本作のアートディレクションは
「Playback」はミュンヘンで行われた「Dumb Type展」のために制作された作品で、坂本がディレクションを手がけた。坂本は世界16地域のフィールドレコーディング音源を集め、それぞれの場所の位置、時間、そしてコントリビューターが切り取る固有の音を俯瞰するように再生することを発案。アートボックスにはこの16の音源に坂本の新作音源「Tokyo 2021」を加えた17の音源をそれぞれ収めた17枚のレコードがパッケージされる。
レコードのA面には各都市のフィールドレコーディング音源を収録。B面には音源は収録されておらず、アナログ盤のカッティング工房・AUTORA FACTORY PLATEによるノイズによって図柄を描く独自技法により、透明な盤に各地域の地図が浮き上がるようにカッティングされている。
またリリース発表と合わせて「Playback 2022」の特設サイトがオープン。サイトでは本作の予約購入を受け付けているほか、アートジャーナリストの小崎哲哉氏による作品解説が公開されている。
また、本日2月25日から5月14日まで東京・アーティゾン美術館にて、坂本が参加しているDumb Typeの美術展「第59回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館展示帰国展 ダムタイプ|2022: remap」を開催中。美術展ではDumb Typeが坂本を迎えてヴェネチアで初披露した新作「2022」を再構築した「2022: remap」が日本初公開されている。
坂本龍一 コメント
壊すことから始まる。もう30年以上前から、音楽作品自体がアートであるようなものを作りたいと思っていた。
以前はいろいろなルールがあり出来なかったのが、ようやく出来るようになった。
と前作を発表した時に言いましたが、それに尽きる、という思いがあります。
同時に、今作は長年共に制作してきた高谷史郎さんによるアートディレクション、
そしてDumb Typeの作品を16枚、さらにインスタレーションでは使っていない僕の音源を加え、17枚のアナログ盤を届けるという試みにとても興奮しています。
高谷史郎 コメント
2018年フランスのポンピドゥー・センター・メッスでのダムタイプ展の際に制作した《Playback》はレコードを使ったサウンド・インスタレーションで、いつか様々な音楽家の方たちにレコードを作ってもらってコラボレーションできたらと考えていました。今回(2022年5月から9月にかけて)ミュンヘンのHaus der Kunst美術館でのダムタイプ展の機会に、坂本龍一さんディレクションによる《Playback》を展示することができてとても嬉しく思っています。
坂本さんの友人知人16名によるこのフィールド・レコーディング音源は、ヴェネチア・ビエンナーレのために制作した新作《2022》にも組み入れることになりました。なぜならこの作品は「ソーシャルメディアの普及や新型コロナウイルスの感染拡大などによって大きく変化した、コミュニケーションの方法や世界を知覚する方法について」をテーマに構想し、1850年代の地理の教科書からテキストを引用している作品なので、世界各地から届いた環境音は、展示室から遠く離れた地球の様々な場所を想起させるトリガーとして作用してくれるからです。
このプロジェクトは、そこに存在しない街の雰囲気をその音から感じる――世界を都市のノイズから認識する試みでもあります。あなたの周りにもある様々な音や、静寂に、耳を傾けてみてください。
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坂本龍一がDumb Typeとのコラボ作品発売、新曲含む17枚のアナログ盤をパッケージ
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