音楽ナタリー - 最新音楽ニュース

1万6000人集結!興奮と感動に満ちた「フジフジ富士Q」

453

7月17日、富士急ハイランド・コニファーフォレストにてフジファブリック主催のライブイベント「フジフジ富士Q」が開催された。

会場の富士急ハイランド・コニファーフォレストは、昨年末に29歳で急逝したフロントマンの志村正彦(Vo,G)が、中学3年のときに奥田民生のライブを観て音楽の道を志した場所。彼はこの地でライブをすることを夢見ており、この日は彼の意志を引き継ぐように、フジファブリックと交流のあるアーティスト総勢15組が登場。ステージ上でフジファブリックの名曲を演奏し、全国各地から集まった1万6000人のファンを魅了した。

イベントのタイミングに合わせるように梅雨も明け、快晴に恵まれたこの日。開演前にはステージ脇のスクリーンに、富士急ハイランドのアトラクションに挑戦するメンバーの姿に迫るバラエティ番組風のプログラムが上映される。遊び心たっぷりの演出展開され、イベントへの期待感が高まっていく。

そして開演と同時にスピーカーから流れてきたのは「大地讃頌」の合唱。壮大な合唱に乗せてフジファブリックのメンバーとサポートドラムの刄田綴色(東京事変)が現れると、観客は立ち上がり大歓声で迎える。メンバーがスタンバイしたところで、最初のゲストボーカル・奥田民生が登場した。

刄田のカウントで始まったのは「桜の季節」。まったりした民生の声が響き、会場がたちまちフジファブリックワールドに染め上げられていく。民生が「富士急!」と高らかにシャウトすると、オーディエンスは拳を突き上げその声に応える。山内総一郎(G)はトリッキーなフレーズを丁寧に爪弾き、金澤ダイスケ(Key)も軽やかな鍵盤さばきで楽曲に彩りを添える。刄田とともにリズム隊を担う加藤慎一(B)は、グルーヴィなフレーズで観客を引き込んでいった。

歌い終えた民生が「ありがとうございます。奥田民生でした」と去ろうとすると、「えー!」と不満気な声が。それをなだめるように金澤は「大丈夫です、民生さんはまた出てきますので」と笑いながら語り、続けて「こういった形でいろんなアーティストに出ていただきますんで、思う存分楽しんでいただければと思います」とイベントのコンセプトを説明した。

続いてステージに登場したのは安部コウセイ(HINTO)。シックなジャケットを羽織り、麦わら帽子を被った彼は「今日はキメてきました。晴れましたね。やっちゃおうかな」と照れながら挨拶し、勢いよく始めたのは「虹」。イントロが鳴った瞬間に「わぁっ!」っと歓声が起こり、会場の一体感が急速に増していく。最初は声に緊張がにじみ出ていたコウセイだが、徐々にその声は開放され、大きくなっていった。

コウセイの音頭で万歳三唱が行われた後は、「モノノケハカランダ」がスタート。攻撃的なサウンドとアレンジが印象的なこの曲では、変拍子を盛り込んだ複雑怪奇な演奏に乗せて、矢継ぎ早なハイトーンボイスが刺激的に響く。歌い終えるとコウセイは、ぴょんぴょんと跳ねながらステージを去っていった。

次に、黄色と緑を基調としたカラフルな衣装に身を包み、「よろしく、よろしくー!!」と陽気に登場したのはハナレグミ。加藤の軽やかなベースで「ダンス2000」が始まると、永積のファンキーで粘りのある歌声に観客は気持ち良さそうに体を揺らす。

夕暮れどきにあわせて演奏された「ルーティーン」では、先程の躍動的な雰囲気から一転し、金澤が「演奏してるのに聴き入っちゃった」と語るほど味わいのある声を響かせた永積。歌詞に込められたメッセージを噛みしめるように歌うその表情には、後輩バンドに対する深い愛情がにじみ出ていた。

続いてはクボケンジ(メレンゲ)の出番。水色のギターを構え「よろしく!」と挨拶した彼は、軽妙なキーボードと爆裂ドラムがイントロを飾る「バウムクーヘン」を熱唱。かすれ気味の甘い声がオリジナルとはまた違う魅力を放っていた。

「今日出てるアーティストの中で一番長い付き合いかな? お世話になってます」と金澤が口にすると、はにかんだ表情を見せたクボ。曲間には「志村とは仲良くさせてもらってて、唯一心を許せる大親友です」「(今日は)あいつの残した大きな大きなものを表現して帰りたいと思います」と志村への思いを明かした。そして夕日が客席を照らす中で演奏された「赤黄色の金木犀」で、会場はしっとりとした雰囲気に。情感を込め歌い終えたクボは、山内と握手を交わし、ステージの袖に消えた。

金澤と山内によるイベントグッズ「フジフジ富士水」のアピールコーナーに続いて、呼び込まれたのは斉藤和義。「地平線を越えて」を気だるく艶のある声で歌い上げ、サビではダブルネックギターを操る山内とスリリングなギターバトルを展開。貫禄たっぷりのパフォーマンスでオーディエンスを圧倒した。

MCで斉藤は「志村君の歌、難しい。メロディも難しいし、ギターはへんてこりんだし。そういう性格だったのかな?」とカバーした感想を吐露。金澤が「みんなから言われるんだよね」と返すと、斉藤は「なんで止めなかったの?」と質問。「もっと変なのもあったんで……」と金澤がつぶやくと客席から爆笑が起こった。そんなやり取りの後で斉藤が歌ったのは、美しいメロディが印象的なミディアムバラード「笑ってサヨナラ」。哀切たっぷりの歌声が、オーディエンスの心に染みていった。

「じゃあそろそろ……」とメンバー全員がバイザーを装着して出迎えたのはハヤシ(POLYSICS)。おなじみのオレンジのつなぎにバイザーをかけたハヤシは、ステージに駈け込むと「トイス! 約半年ぶりに歌うんで、気持ちいいです。トシちゃんお願い!」とシャウト。脳髄を刺激するようなハイトーンボイスで「TAIFU」を熱唱した。

ハイテンションなパフォーマンスに呼応するように、富士山がその姿を見せ始めたこの時間。「この調子でノリノリのやついきましょうか?」と始まったのは、POLYSICSサウンドと相通じるものがあるアッパーチューン「B.O.I.P.」。曲中にはハヤシのリードで全員が「トイス!」と絶叫。加藤も声を裏返しながら、手を上げ元気いっぱいに「トイス!」と叫ぶ。ハヤシが嵐のように去ると、金澤は「何か圧倒的なものを感じました」とつぶやいた。

次に「志村君、フジファブリック、フジファブリックファンのために誠心誠意歌います」と宣言し、「タイムマシン」を歌い始めたのは藤井フミヤ。成熟した歌声で再現される「タイムマシン」をオーディエンスは真剣に聴き入る。MCではフジファブリックとの出会いが明かされ、「フジファブリックとの出会いは息子がファンで、『TAIFU』を聴きながら大声で歌ってて。『それ歌詞とかメロディ合ってるの?』って聞いたら、あってるんですよね(笑)」「息子は一生フジファブリックのファンだって言ってました」と親子2代でファンであることを語った。

そしてHINTOの伊東真一(G)をゲストギタリストに迎えて「若者のすべて」が演奏されると、夕日が客席とステージを照らす中で、フミヤの優しい歌声が観客のハンドクラップにあわせて響く。ドラマチックなシチュエーションが楽曲とリンクし、会場にノスタルジックなムードが漂った。

約20分の休憩時間を経て、突然スピーカーからCOMPLEX「BE MY BABY」が爆音で流れ始めると、会場の熱気が急上昇。氣志團の綾小路翔(Vo)が登場し、ステージにあがると「踊ろうぜ!」とオーディエンスを挑発。さらに白鳥雪之丞(Dr)の刻む豪快なドラムに導かれ「ダンス2000」が始まった。

合間に持ち曲「One Night Carnival」の振り付けを披露したり、テルミンを奏でたりと、オリジナリティあふれるステージで会場を沸かせた彼ら。團長はMCで、志村とバイト仲間だった頃のエピソードを披露し、「(「ダンス2000」を)歌ってみてわかったけど、こんだけ軽快な四つ打ちで気が晴れない曲はないっていうか。あいつの性格が表れてるな(笑)」と思い出話に花を咲かせる。さらに志村が東京で初めて作った曲「武田の心」について明かし、「民生さんと吉井さんを合体させたような曲だった」と暴露した。

「あるとき志村が『実家帰ろうと思ってる』って言うから、『帰るならこの曲くれ』って本気で言ったら帰るのを辞めました」というエピソードに続いたのは「茜色の夕日」。汗を滴らせながら絶唱する團長に、オーディエンスの視線は釘付けになった。

続いて「後半戦にふさわしい男を呼びたいと思います」というアナウンスで和田唱(TRICERATOPS)が、シックなジャケット姿で登場。山内の繰り出す奇妙なギターリフ、金澤の奏でるサイケディックなキーボードをバックに「Strawberry Shortcakes」を朗々と歌い上げた。

フジファブリックとはデビュー当時からの付き合いということもあり、MCは和気あいあいとした雰囲気に。金澤が「(和田は)ロックスターだよね。だって登場から『フォー!』ですもん。レイザーラモンHGかロックスターしかできませんよ」と褒めると和田は照れ笑い。そして「僕の大好きな曲を歌っていいですか? シムシム聴いててくれ」と「陽炎」を切なげな表情を浮かべ熱唱。ラストはギターヒーローばりの派手なパフォーマンスで、オーディエンスを圧倒した。

この後の転換時間には、加藤がトークコーナーを展開。金澤に「富士山」をお題に謎掛けをリクエストされると、加藤は「富士山とかけまして、好きな女の子の家ととく。その心は、登頂(盗聴)したいのはやまやまですが」と意気揚々と回答。シュールな答えにメンバーから瞬時にツッコミが入り、場内は笑いで包まれた。

そんなゆるすぎるトークに業を煮やして登場したのは真心ブラザーズ。YO-KING(Vo)は「(MCが)長い!」と一喝するとなぜか「トイス!」を大声で連呼した。マイペースな彼ららしくパフォーマンスもゆるりとスタートした。

YO-KINGと桜井秀俊(Vo,G)が「TEENAGER」を歌い上げると、続く「線香花火」でスカパラホーンズの3人が登場。艶のあるゴージャスなホーンに乗せて、YO-KINGは歌詞の一部を変えて「今は全部放っといて富士急に 富士山の見える富士急に行こうか」と歌い、オーディエンスを熱狂させた。

真心が2曲歌い終え退場すると、代わりにスカパラホーンズの3人が前に移動。北原雅彦(Tb)の「私こう見えてサーファーなんであの曲を」という宣言でインストゥルメンタルバージョンの「Surfer King」が始まる。フジファブリックのメンバーが奏でる軽妙なバンドサウンドと、北原、NARGO(Tp)、GAMO(T. Sax)が吹くダイナミックなホーンがからみ合う。コーラスパートではメンバー全員がファニーなハーモニーを聴かせ、そのパフォーマンスに大きな拍手が贈られた。

男所帯ばかりのステージを華やかにしたのはPUFFY。2人はステージを縦横無尽に歩きながら、志村が作った「DOKI DOKI」「Bye Bye」の2曲を披露。「DOKI DOKI」ではガールズパワー全開の歌声を聴かせ、「Bye Bye」では少し切なげなハーモニーを響かせた。

MCでは「かわいい後輩のためにありがとう」と先輩らしい一面をみせつつ、志村との秘話を披露したPUFFY。亜美は「(「Bye Bye」が)ラブソングなので正彦に『実話だろ?』って言ったら『うーん……』って言ってて。だから多分実話だと思います」と知られざるエピソードを語り会場を沸かせた。

続いてゲストボーカルとして紹介されたのは、フジファブリックの1stアルバム「フジファブリック」のプロデュースを務めた片寄明人(Great3, Chocolat & Akito)。彼は「ひさしぶりだよね。よろしくお願いします」とメンバーと挨拶を交わし、アコースティックスタイルの演奏をバックに「花」を披露。ぬくもりのある演奏と甘くソウルフルな声が会場を潤していった。

「頭の中が志村君でいっぱいになって。何万字も書いてブログにアップしたりして……僕はフジファブリックが大好きです」とコメントした後、片寄は1stアルバムに収録されている「サボテンレコード」を熱演。昔を懐かしむような表情を浮かべ穏やかに歌っていたが、ラストは感情を爆発させるようにシャウト。志村を思わせるエモーショナルな声に歓声が沸いた。

続いてドラマチックなイントロをバックに、ステージに走って現れたのは吉井和哉。彼がイベントのために選んだのはこの上なくエロティックな「マリアとアマゾネス」で、冒頭からねっとりとしたボーカルが夜空に広がる。山内がかき鳴らすスリリングなギターも映え、これまでとは違う妖しげなムードが会場を漂った。

曲間で「富士山が見えますね。一番上に志村君がいます」と志村への思いを馳せた吉井。「志村君の代わりにはなりませんが、歌いたいと思います。大好きな曲です」と目頭を熱くしながら「Anthem」を熱唱。スケール感たっぷりの1曲を歌い終えると、「ありがとう。吉井和哉でした」と口にしてステージを降りた。

イベントもいよいよ佳境に入り、本編最後のパフォーマーを務めるくるりが登場。岸田繁(Vo,G)と佐藤征史(B)は揃ってお辞儀をすると、フジファブリックのメンバーとともに小気味よく「Sunny Morning」のイントロをかき鳴らす。叫ぶように歌う岸田に呼応するように、自然と演奏もオーディエンスの動きも激しくなった。

岸田は「志村がいた頃は志村とばかり話していて、だから今彼らと音を鳴らしているのが不思議で。フジファブリックは今、日本一カッコイイバンドですよ。でも日本一カッコイイバンドはすごい変な曲が多くて」と本音を漏らす。「ラジオで初めて(フジファブリックの曲を)聴いたとき、びっくりしたんです。でもすぐ好きになって。その曲をやります」という言葉から「銀河」を奏で始める。岸田のコブシを効かせた歌声と、ギターを軸にした複雑怪奇なフレーズが響き、オーディエンスは熱狂の様相を見せる。ラストは絶叫に近い岸田の声が夜空に轟いた。

アンコールを求める盛大な拍手に迎えられ、フジファブリックのメンバーが再びステージに戻ってくる。晴れやかな顔をした金澤は「ありがとうございます。やっとここまできましたね。せっかくなんで、今度出るアルバム『MUSIC」から1曲やります。ちなみに総君ボーカルです」とアナウンス。客席からどよめきにも近い歓声があがった。

そして始まった「会いに」は、フジファブリックらしい奇妙なアレンジが光るポップチューン。山内ははにかみながら力強いボーカルを聴かせ、加藤、金澤、刄田も笑顔でそれぞれの楽器を鳴らす。少しぎこちないところはあるものの、うれしそうに新曲を熱演する姿は、新しいフジファブリックの始まりを予感させるものだった。

その後「このイベントのきっかけにもなったこの人に締めていただきたいと思います」と金澤が語り、民生が再びステージに。ふらりと現れた民生は「最後は嫌なんだよな……」とブツブツ言いつつ、「事務所の稼ぎ頭が今日はここでコンサートを開きまして。その事務所の顧問であります私が、最後をやらせていただきます」と宣言。ステージが茜色に染まる中、情感たっぷりに「茜色の夕日」を歌い上げ、トリにふさわしい貫禄のパフォーマンスを展開した。

最後に金澤は「これからもがんばっていくつもりなので、これからもよろしくお願いします」と1万6000人に約束。その表情に湿っぽさはなく、志村の遺した音楽を受け継ぎ、彼が作ったバンドを継続していく意志に満ちていた。

なお、MUSIC ON! TVでは8月29日(日)22:00より3時間にわたり「フジフジ富士Q」の模様をオンエア。視聴環境のある人は録画予約をお忘れなく。

「フジフジ富士Q」セットリスト / カッコ内はメインボーカル

01. 桜の季節(奥田民生)
02. 虹(安部コウセイ)
03. モノノケハカランダ(安部コウセイ)
04. ダンス2000(ハナレグミ)
05. ルーティーン(ハナレグミ)
06. バウムクーヘン(クボケンジ)
07. 赤黄色の金木犀(クボケンジ)
08. 地平線を越えて(斉藤和義)
09. 笑ってサヨナラ(斉藤和義)
10. TAIFU(ハヤシ)
11. B.O.I.P.(ハヤシ)
12. タイムマシン(藤井フミヤ)
13. 若者のすべて(藤井フミヤ)
14. ダンス2000(氣志團)
15. 茜色の夕日(氣志團)
16. Strawberry Shortcakes(和田唱)
17. 陽炎(和田唱)
18. TEENAGER(真心ブラザーズ)
19. 線香花火(真心ブラザーズ with スカパラホーンズ)
20. Surfer King(スカパラホーンズ)
21. DOKI DOKI(PUFFY)
22. ByeBye(PUFFY)
23. 花(片寄明人)
24. サボテンレコード(片寄明人)
25. マリアとアマゾネス(吉井和哉)
26. Anthem(吉井和哉)
27. Sunny Morning(くるり)
28. 銀河(くるり)
29. 会いに(フジファブリック)
30. 茜色の夕日(奥田民生)

※記事初出時、本文に誤字がありました。訂正してお詫びいたします。

音楽ナタリーをフォロー