「兵士A」は、七尾が「近い将来数十年ぶりに1人目の戦死者となる自衛官」に扮し、3時間におよぶライブ演奏でおよそ100年間の物語を表現したもの。映像作家の河合宏樹が監督を務め、アニメーション作家のひらのりょうが舞台映像を手がけた。
舞台に姿を現した七尾は「最初はCD作品を想定してたんですけど、曲が膨大すぎて15枚組とかになっちゃって」と話す。本当にCDとして出せるのかと悩んでいたときに、東京・WWWにてライブを行ったという七尾。「自分がどうしていいかわからなかったことを、河合くんが映像として編み上げてくれた」と、本作が映像作品としてリリースされた経緯を明かした。
続けて七尾は本作について「ごく普通の1人の青年が被弾して亡くなるとします。これは戦後日本という建前、言葉が崩壊する瞬間でもあります。そういう特異な役割を負わされているのが兵士A。日本という国の特異点を僕なりに書いた作品です」と語る。
ここで舞台映像を担当したひらのが飛び入り参加。七尾がひらのに対し「いまいくつだっけ? 48?」と述べると、ひらのが「27です(笑)」と返答するなど、2人は軽快なトークを展開。本作とは無関係な話をしていることに気付いた七尾が「貴重な時間が……」とつぶやくと、観客席からは笑いが漏れた。そして七尾は「本当にひらのくんじゃないと無理だった。普段は複雑でイマジネイティブな作品を作っている彼が、ものすごくシンプルで抑えた絵に仕上げてくれた」とひらのに対して感謝の気持ちを述べた。
最後に七尾は「これがUPLINKさんで上映していただけるまでになったのは、忙しい中わざわざ集まってくれた皆さんのおかげです」と述べた後、「皆さん、芸術の力を信じてください」と力強く語り、イベントを締めくくった。
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- 『兵士A』 - 上映 | UPLINK
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小熊英二 @quikion
七尾旅人の『兵士A』、劇場公開。見たが、音で空間を組織する力が、映像でよりよく伝わる。https://t.co/DZ6bLp0OhL