K-POPを目指すわけではない
水面下でWACKの第2章と言いましょうか、次の準備を進めています。現役メンバーの中から選抜した子たちが今6人いて、既存グループとは別軸でダンス、歌、英語のトレーニングを積んでいます。レッスン生はほかにもいて、今年、秘密裏に行ったオーディションを通過した8人の研修生もいます。選抜メンバーとレッスン生は、一芸オーディションの合格者と同様、合宿には参加させません。今、いろいろ考えている新しいプロジェクトに直結させるためです。新しいことを始めると言っても、僕が今までやってきたことの延長線上にあるプロジェクトなので、これまでWACKを応援してくれていた人なら、絶対に面白いと思ってもらえるはず。詳細はまだ発表できませんけど、すでに形になり始めています。
今後の課題としては、今の日本のアイドル界で常態化している同じCDを何枚も買わせる施策は、グローバル展開できるものではないです。「CDの売上で広告費が捻出できるからいいや」と思って、これまで取り入れていた手法ですけど、今のワールドスタンダードにおいては自分勝手な売り方だったし、今後は同じCDをたくさん売りたいとは思えなくなりました。見せ方も含めて、またあっと驚く方法でWACKもアーティストの魅力を伝えていきたいと思っています。
勘違いしてほしくないのですが、決して我々はK-POPを目指すわけではないんです。K-POPを「普通のライン」として捉える以上、そこを凌駕する魅力がないと、差別化すらできないってことです。普通のラインに到達できていない、これが今のWACKにおける“お手上げ”の正体かもしれません。
選抜メンバーは当初もっといたんですが、脱落した子がいるのも事実です。これは当たり前のことで、先ほどもお話ししましたが、ずっと日本でいいと思ってる人に今のところ英語ってまったく必要ないですよね? だから必要ないことをやれるわけないんです。だし、自分に必要ないことをやってる時間って本当に自分にとって無駄な時間じゃないですか。でもWACKにいるなら僕が今求めていることを今やってもらわないと継続することが難しい。WACKは僕のやりたいことを実現するための会社なので、僕のやりたいことが、メンバーと合致しないのであれば、やめたほうがいい。合致するのであれば、必死についてきてもらうしかない。
「WACKが変わった」と言う人がいますが、それは当たり前のことです。初期
つまり僕が今度新しいグループを作って、世界で売ろうと思ったら、また変わっていかなきゃいけない。同じことを繰り返すのは本当につまらないんですよ。King Gnuの常田大希さんが言ってたんですよね。「俺らがいろんな曲をやるのは、自分の可能性を広げるため。自分の成功体験に基づいて同じような曲をやることほど、つまんないものはない」といったことを。まさにその通りだと思います。
BiSHを始めるときに、「もう一度BiSを始めます」と言いました。それは「もう一度BiSと同じことをやる」という意味ではなかったんですが、よく勘違いされましたし、BiSの曲をやるとみんなが思ってたと思うんですけど、まったくの新曲で勝負したし、「BiS以上のことをやろう」とするにあたって、新しいプロジェクトを始めるなら昔取った杵柄じゃないですけど、使える名前を使ったほうがインパクトが出るから、そういう表現になっただけのことで。同じことを繰り返したら僕自身も面白くないし、誰もワクワクしないし、脳汁も出ないでしょう。
僕は変化することがWACKだと思っているし、僕の興味はどんどん移行していく。だから「このままでいい」と思っている人たちはWACKにはいらないわけです。WACKは僕で、僕がやりたいことをやるのがWACK。メンバーたちは個人事業主であり、やりたいことは自分で決められる。だから辞めたければ辞めればいいんですけど、それを自分以外の誰かのせいにはしないでねって。
地下アイドルシーンはやっぱりぶっ壊れたほうがいい
2024年の夏に音楽ナタリーさんでお話した通り(参照:「渡辺淳之介、WACKやめるってよ」第3話)、地下アイドルシーンはやっぱりぶっ壊れたほうがいいと思っています。と言いつつ、実はインスタやXで地下アイドルのことは調べていて、気になる子はフォローしてたんです(笑)。この子はなんでフォロワー多いんだろう?とか、どういう経緯でアイドルやってるのかな?とか、もともとはインフルエンサーだったのかな?とか、客観的に見ると気付くこともあるんですよね。
地下アイドルシーンはぶっ壊れたほうがいいと思うんですけど、やっぱりトレンドもあるから。古くはPerfumeに始まる秋葉原シーンの流れがあり、そこにももいろクローバー(現ももいろクローバーZ)が乗っかって、ももクロは一気に地上に行った。当時、PASSPO☆とかのいわゆるプラチナム勢がいて、BELLRING少女ハートみたいな個人プロデューサーのグループがいて。僕は初期BiSのときつばさレコーズにいましたが個人商店みたいなものだったんでその枠組みにいて、いわゆる素人感みたいなものが売りだった。それが十数年続いて、BiSHがその最後だったんじゃないかなと思っています。トレンドが切り替わり、今はWACKとは真逆(笑)のKAWAII系アイドルが台頭している。
変な話ですけど、潮目が変わるときって、バタフライエフェクトみたいなことが起こってるんですよね。その起点にあるのが、SKY-HIこと日高光啓さんだと思うんです。日高さんがプロデュースするBE:FIRSTがシーンの流れを変えて、これまで許容されていた“ヘタウマ”に市民権がなくなってきたように感じたんですよね。全員が“ウマウマ”のグループが増えてきて全員が“ウマウマ”で当たり前になったことで僕がやってきたことは今、通用しなくなったなあと思います。
でも、この“ウマウマ”な状況が正直に言うとちょっと面白くないとも思うんです。アイドルシーンだけじゃないですよ。YouTube、Instagram、TikTokで超絶技巧のギタリストとかドラマー、ダンサーが簡単に見つかりますよね。そしてそれが当たり前の世界にいる。僕がやってきたことは「いかにニッチを攻めて、差別化するか」。そこはずっと変わっていないんです。地下アイドルを知らなかった時代、初期BiSはAKB48と比べるとアイドルアイドルできてないから、「アイドル研究会」という体にして、アイドルを目指すというD.I.Y.感、素人感のある子たちが目標を目指すストーリーを作れたし、当時のトレンドになった。けど、先ほどもお話した通り、そのシーンはもう壊れちゃった。
BiSHはジャパニーズドリームだったと思いますよ。彼女たちの成功があったからこそ、夢をあきらめられないのも事実です。ただ僕がやったロールモデルは、今だと通用しないんですよね。僕は誰かをロールモデルにしたことはなくて、お手本にしたいと思う人たちの動きを分析して、どうしたら近道ができるかを試行錯誤しながらやってたんで、変な形で活動してたとは思いますが、それがオリジナルになったというか。だからBiSHをロールモデルにされちゃうと、「それは違うんじゃないかな」と思うわけです。東大を目指してがんばったら東大に合格できないように、もっと上を目指さないと目標は超えられない。
地下アイドルは狭いコミュニティの中で褒められることが多いから自己満足に陥りやすいんですよね。お客さんからも「WACKは変わってしまった、メンバーがかわいそう」とか言われるのは、僕としては不本意で。ずっと変わってきたのが僕であり、ずっとどうやったらみんなに気付いてもらえるか試行錯誤して手を変え品を変えプロモーションしてきたのがWACKなので、はっきり言うなら「何も見えてないなお前」って感じはすごくします。
僕がついていけてないところもありますけど、アイドルシーンの二極化がすごいですね。SNS起点で成功している人たちがいる一方で、BiSHがいた頃ブイブイ言わせてたのにすっかり元気がなくなってしまった人たちもいますよね。中間層がごっそりいないという話は、以前もしたと思うんですけど(参照:「2014年の渡辺淳之介」)、あぐらをかいていたのはWACKだけじゃなかった、とも言えると思います。当時LIQUIDROOMとかZeppクラスの会場でライブができていたグループだって、今はまったくそんなところじゃできなくて、200~300人の箱で活動していることも多いんじゃないでしょうか。WACKはBiSHのおかげで延命しただけ。BiSHが終わった瞬間、WACK全体の集客が急激に減ったのも事実としてあります。BiSHのついでにほかのグループを見てくれていた人たちが、きっと夢から覚めちゃったんでしょうね。
※近日公開の後編へ続く。
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