再生数急上昇ソング定点観測 (2025年10月4週目) [バックナンバー]
HANA「My Body」は現代人にとっての希望 /「KITERETSU FIRE」でKEY TO LITがわかる / TWICE「ME+YOU」のMVを観てエモくなる理由
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年10月24日 18:30 1
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月10日から10月16日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、4位に
Snow Man「BOOST」ミュージックビデオ
14位には
King Gnu「SO BAD」ミュージックビデオ
23位には
米津玄師「1991」ミュージックビデオ
24位にはBABYMONSTERの「WE GO UP」がランクインした。「さらなる高みを目指す」という強い意志が込められたヒップホップベースのこの曲は、重低音のビートに合わせて放たれる力強いフロウが心地いい。まるでSF映画を観ているような、圧倒的なスケールのMVにも注目だ。
BABYMONSTER「WE GO UP」ミュージックビデオ
人気ダンスグループの新曲が目立った今週は、下記の3曲をピックアップする。
HANA「My Body」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場2位
「“どれも足りてない”なんていやいや」「君は君でいいじゃん / 誰かとなんて比べないでよね」などのフレーズが登場するように、この曲を通してHANAは「引き締まった体型を目指そう」と鼓舞するわけでも、「あなたはそのままでいいんだよ」と肯定するわけでもない。ただシンプルに「自分自身を愛してあげよう」「あなたが望む体型こそが美しいのだ」と歌っているように感じた。MVの中でさまざまな色のマネキンが登場するのも、おそらく「みんなが違う理想を持っていい」というメッセージの表れだろう。
MVのコメント欄には「ルックスについてももちろんだけど、『君が恋人だとしても私の体は君のものじゃない』って、こんな大事なことを日本で若い子に人気の女性アーティストが歌ってくれたことこれまであった?」「HANAを見て思ったのは、我々はただ、メディアに『細い体型だけが美しい』と思い込まされてたんだなってことです」といった、「My Body」を聴いて勇気をもらった人々の声が多く書き込まれている。これまで刷り込まれてきた社会観念を覆すHANAの存在は、現代人にとっての大きな希望になっているのだろう。
KEY TO LIT「KITERETSU FIRE」ライブ映像
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場10位
「KITERETSU FIRE」は、各メンバーがほかのメンバーを紹介し合いながらマイクリレーをする“他己紹介ソング”だ。作詞作曲を担当したのはメンバーの
ダンスも歌も一級品である
TWICE「ME+YOU」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場18位
スティーブ・ジョブスは、2005年に行われたスタンフォード大学の卒業式でこのような名言を残している。「未来を見て、点を結ぶことはできない。過去を振り返って点を結ぶだけだ。だから、いつかどうにかして点は結ばれると信じなければならない」。今を懸命に歩み続けていれば、いつかその点と点が結ばれて「今日のためにこれまでの出来事があったのか」と大きな感動が待っている。
その感動を体現しているのが
このMVには新居に引っ越してきたメンバーが、荷解きが終わった夜に全員でテレビの前に集まり、デビュー曲「Like OOH-AHH」のMVを鑑賞するという場面がある。しかしそこで流れているのは、現在のメンバーが「Like OOH-AHH」MVのセットと同じバスの車内で踊っている映像なのだ。このシーンを観ていると、当時を思い出して懐かしくなるのと同時に、そこから10年経った彼女たちの成長も感じられて感慨深くなる。
TWICE「Like OOH-AHH」ミュージックビデオ
さらに、みんなで集まってテレビを観る描写は2018年リリースの「What is Love?」を想起させ、その後に隣人が彼女たちの部屋を訪ねてドアを開けるシーンは2017年リリースの「KNOCK KNOCK」のMVを連想させる。
TWICE「What is Love?」ミュージックビデオ
TWICE「KNOCK KNOCK」ミュージックビデオ
また引っ越しの荷物として、ミナがレゴブロック、ジヒョがトレーニング器具、サナがチーズキンパなど、それぞれのメンバーらしさを表すアイテムを持っており、1人ひとりのキャラクター性や、ファンであれば知っている“内輪ネタ”が演出に盛り込まれている。
さらに言えば部屋番号として登場する「1020」「1019」などの数字は、やや強引な考察かもしれないが、デビュー10周年、TWICEの2、ファンの呼称であるONCEの1、メンバー9人の数を表しているとも考えられる。過去のMVを知らなければ「かわいい」と思うだけかもしれない。しかし、彼女たちの歩んできた点と点をつなぐことで10年の軌跡が浮かび上がり、大きな感動を味わえるのだ。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
バックナンバー
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音楽ナタリー @natalie_mu
今週は…
🔸HANA新曲は現代人にとっての希望
🔸聴けばKEY TO LITが一発でわかる曲
🔸TWICEの新MVを観てエモくなる理由
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