人間椅子が来年の「還暦ライブ」開催を約束、最新作「まほろば」携えたツアーファイナルで

人間椅子が最新アルバム「まほろば」を携えて11月末より行ってきたワンマンツアーの最終公演が、12月17日に東京・Zepp Haneda（TOKYO）で開催された。

新曲とレア曲を交互に畳みかける構成に

開演時間を過ぎると「此岸御詠歌」がSEとして厳かに流れ、和嶋慎治（G, Vo）、鈴木研一（B, Vo）、ナカジマノブ（Dr, Vo）が手拍子と歓声でステージに迎え入れられる。1曲目は壮大な「まほろば」。「素晴らしい場所」「住みやすい場所」を意味する最新アルバムの表題曲がフロアに心地よい浮遊感をもたらしている。メンバーたちは巧みに楽器を操り、息ピッタリに歌唱。続く「心の火事」で景気よく爆音が放たれると、会場は興奮に包まれた。

「感動の坩堝」では、長いキャリアに裏打ちされたストレートな感情を響かせ、続く「遺言状放送」では狂気をはらんだキャッチーさで観客を圧倒する人間椅子の3人。かと思えば、新たなキラーチューン「ばかっちょ渡世」では3人ならではの絶妙な掛け合いが随所に光り、フロアには自然と笑顔が広がっていった。そこへ妖艶な魅力を持つ「みなしごのシャッフル」が絡みつくなど、最新作「まほろば」の楽曲とレア曲を交互に畳みかける構成に、ファンは歓喜の声を上げた。

リッチー・ブラックモアが裸足で逃げるようなギターソロ

和嶋が“仏教ヒーローソング”と紹介した「阿修羅大王」は、すでにライブ定番曲のような風格だ。「えいっ えいっ 往生」と観客全員で唱えるパートは迫力満点。「ばかっちょ渡世」での「アイッ！」という掛け声と同じく、メンバーとオーディエンスが一体となって濃密な空気が作り上げられた。

一転して、大曲「光の子供」では美しい包容力で会場を包み込み、「宇宙誘拐」では鈴木がお気に入りだという「リッチー・ブラックモアが裸足で逃げる」ような和嶋のギターソロが炸裂。「ウチュウヘヨウコソ」と和嶋とナカジマがユーモラスに声を震わせた。

ライブ終盤は、ナカジマがメインボーカルを務める「恋愛一代男」でスタート。大人の男の哀愁漂う昭和歌謡風のサウンドが観客を魅了したのち、「迷信」で会場の熱気は最高潮へ。ラストは定番曲「針の山」を投下し、熱狂のうちに本編を締めくくった。

3人そろっての「還暦ライブ」を約束

アンコールを求める声に応え、3人が再びステージに登場。1曲目に披露されたのは「まほろば」収録のアコースティックバラード「永遠の鐘」だ。ナカジマによる“出航の銅鑼”から始まり、幸せな景色を描き出すこのウエディングソングは、従来の彼らの作風とはひと味違う清涼感をもたらした。

続いて、鈴木が作詞作曲を手がけた「樹液酒場で乾杯」へ。これは「新顔のオジー」を含むロック界の偉人たちを虫に例えた追悼曲。ちなみにこの日の開演前、鈴木選曲による客入れのBGMにも歌詞に登場するロックスターたちの名曲が並んでいた。そしてラストナンバー「無情のスキャット」が万感の余韻を残し、この日の公演は大団円を迎えた。なおアンコールでは和嶋から、2026年に3人そろっての「還暦ライブ」を行うことも高らかに宣言された。

この日のライブの模様は2月28日に日テレプラスで配信されることが決定。番組ではここでしか聞くことができないインタビューもあわせて楽しむことができる。