再生数急上昇ソング定点観測 (2025年11月2週目) [バックナンバー]
「目撃!テト31世」に仕込まれたネタとは / B&ZAIの表現力と身体能力の高さを堪能しよう / 「ころしちゃった!」に隠された社会風刺を考察
今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説
2025年11月14日 18:30 5
YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週イチ連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで10月31日から11月6日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。
文
まずはこの週の初登場曲の振り返りから
今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、5位に
MAZZEL「Only You」ミュージックビデオ
25位には
Ado「MAGIC」ミュージックビデオ
51位に登場したのは
IMP.「KISS」ミュージックビデオ
ボーイズグループの新曲が多数並んだ今週は、下記の3曲をピックアップする。
はろける feat. 雨衣, 重音テト「目撃!テト31世」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場9位
前作「キャンディークッキーチョコレート」のMVが4300万再生に迫る勢いのはろける。その新曲「目撃!テト31世」は、10月31日のMV公開から2週間で420万再生を突破し、今も加速度的に勢いを伸ばしている。曲中で繰り返し登場する「31」というキーワードは、ハロウィンの当日である10月31日と、重音テトの年齢31歳をかけているのだろう。「PUMPKIN PUMPKIN」「ZOMBIE ZOMBIE」「PARTY PARTY」など、キャッチーでつい口ずさみたくなるフレーズや、にぎやかなサウンドが印象的だ。
歌詞を簡単に説明すると、怪盗のテトと探偵の雨衣によるコミカルなやりとりが描かれているのだが……それだけではない。今作には人気Vtuber、アニメ、映画などのオマージュが随所に盛り込まれている。
開始4秒で表示されるテロップは、アニメ「ルパン三世」のタイトルバックを想起させる。続く31秒でテトが「ぼくのことでしょ?」と言いながら見せるポーズは、Vtuber・
B&ZAI「Ain't No Dream Over」Performance Video from ANDO
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場62位
そんな「ANDO」の挿入歌として作られたのが、B&ZAIの新曲「Ain't No Dream Over」だ。今回ランクインしたのは、舞台で披露された同曲のパフォーマンス映像。振付、衣装を含むすべての演出をSota(
純白のスーツを着たメンバーが、歌詞に合わせた物語性の高いダンスを踊るだけでなく、アクロバットで視聴者を魅了する場面もあり、表情の表現力や身体能力の高さを堪能できるこの映像。何より、夢に向かって突き進んでいく希望にあふれた歌詞は、作中の登場人物だけでなくメンバー自身の思いとも重なって聞こえて胸が熱くなる。
夏山よつぎ feat. 初音ミク「ころしちゃった!」
※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場84位
近年はTikTokやYouTubeのショート動画をきっかけに、楽曲の一部が短期間で爆発的に拡散されて人気に火がつく現象は珍しくない。今週84位に登場した、夏山よつぎの「ころしちゃった!」がまさにそれだ。MVが公開されたのは2024年2月で、当時からボカロ界隈では話題になっていたこの曲だが、ここ最近TikTokで“踊ってみた”動画が急増したことにより、リリースから1年半以上を経て、これまでにないほどに注目を浴びている。エレクトロスウィング調の心地よくて明るいサウンドに対して、「ころしちゃった!? / すったもんだしちゃって昼下がり」というシリアスな歌詞が、思わず何度も聴きたくなる中毒性を生んでいるのだろう。
今回、楽曲の存在を初めて知った人はもちろん、サビだけは聴いたことがあるという人も、ぜひ歌詞やMVをチェックしてほしい。MVを深く考えずに見ると、思わず人を殺してしまった女の子(初音ミク)が罪の意識にさいなまれ、最後は絞首台に上がり命を落とす、という内容にも思えるのだが、そんな単純な物語ではないようだ。
例えばMVの開始10秒での、女の子が目を開けるとそこに死体があるという場面。見ようによっては、彼女が気絶している間に別の人間が犯行を犯して、彼女に罪をなすりつけたようにも考えられる。また、2分24秒でテレビ画面に笑顔の女の子が映っていることから、彼女が二重人格だった可能性も考えられるだろう。
筆者が一番印象に残ったのは、1分44秒からのシーンだ。女の子の家のチャイムが鳴り、ドアを開けると「あの事件について真実を」「いえ、まずは謝罪の言の葉を」と、興味を持ったマスコミが押しかけて女の子を詰問する。1番には「ころしちゃった!! / 嫌ァァァァ…」と女の子がパニック状態に陥って悲鳴を上げているフレーズが登場するが、一方で後半には「殺しちゃった!! / Yeah…」と喜んでいる描写があることから、観衆が女の子を追い詰めて死に追いやって歓喜している、という解釈ができる。女の子が殺害をした動機や方法が不透明にもかかわらず、一方的に犯人扱いする様子はアメリカのアーティストであるデイビッド・スーターの風刺画「It’s Media」で描かれたメディアによる切り取りを想起させる。楽曲やMVの中で真相は明かされていないからこそ、「本当はどうなのだろう」と考えたくなる。
- 真貝聡
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ライター / インタビュアー。雑誌やWebで執筆するほか、MOROHA「其ノ灯、暮ラシ」、BiSH「SHAPE OF LOVE」、PEDRO「SKYFISH GIRL-THE MOVIE-」といったドキュメンタリー映像作品や、テレビ特番「Mrs. GREEN APPLE ~Review of エデンの園~」にインタビュアーとして参加している。
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すず @HiHicruise8181
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