ライブ当日のハプニング
──ライブ当日の動きとしてはどういう感じになるんですか?
本番までのタイムテーブルをライブ制作のほうで組んでいるので、それに沿って動いていく感じかな。大規模なコンサートで舞台監督に入ってもらっているケースだとタイムテーブルの作成をお願いすることもあるけど。ライブハウス規模のツアーの場合は、朝の入り時間にPAさんや照明スタッフたちみんなと会場に行き、機材を搬入して楽器のセッティングを行い、各セクションの準備をしてリハーサル。それで問題なければ本番を迎える流れだよ。基本的に準備に時間を割いて全部事前に決めているので、ライブ制作が当日やることはそれほど多くはなくて。
──準備通りにちゃんと進んでいるかを確認するくらい?
そうだね。もちろん、現場でハプニングが起こることもあるんだけど。
──例えばこれまでどんなハプニングがあったか、こっそり教えてほしいなあ。
そうだなあ……去年の夏、
──うわーヤバいヤバい! 絶体絶命……。どうなったんですか?
たまたまTHE BACK HORNの普段のライブを担当してくれているスタッフが現地スタッフとして2人くらい入っていたんだ。機材は先に送っていたけど人だけがいない状況だったので、THE BACK HORNの機材のことをわかっているその2人が現地のスタッフさんに手伝ってもらいながら準備を進めておいてくれたおかげで、なんとかギリギリに間に合って。
──よかった! 僕の友達がまさに去年「RISING SUN ROCK FESTIVAL」に行っていたんですけど、裏でそんなことがあったんだ……。
フェスでのライブ制作の役割
──先ほど「フェスにライブ制作として関わることもある」と言ってましたけど、もう少し具体的に教えてください。アーティストのブッキングとかもやるんですか?
ブッキングはフェスの主催者がやるのでライブ制作でやることはほぼないかな。それよりは、実際のステージを設営する部分と出演アーティストとのやりとりだね。
──アーティストとのやりとりというのは?
マネジメントの皆さんにアンサーシートというものを提出してもらうんだ。メンバーやスタッフのネームリストをもらって人数を把握し、あとは車の調整も。駐車場のスペースが限られている会場の場合、1アーティストにつき車は何台までかを決めておかないと収容できなかったりするので。
──確かに、バンドのメンバー全員がそれぞれ車で来たら大変な数になっちゃいますね。
あと基本的に楽器は持ち込んでもらうんだけど、アーティストによってはちょっと特殊なもの……例えば「DJ台はレンタルを使いたい」というリクエストがあったりするので、そういう要望に対しての調整だったりとか。DJ台を使いたい人がステージ全体を通して何組かいたら、イベント側で手配してみんなで使ってもらうほうがスムーズなので。ほかにも、「レーザーを使いたい」というリクエストがくることもあるし、全アーティストとそういうやりとりをしていくんだ。
──フェスって出演するアーティストの数も膨大だから、調整がめちゃくちゃ大変そう。
もちろん1人で全部やるわけじゃなくて、ステージごとに担当が分かれているから大丈夫だよ。それにフェスだと、ステージの設営に関して僕たちができることは限られているから。
──どういうこと?
ワンマンライブだったらバンドや曲のイメージに合わせて照明やセットを組むこともできるけど、フェスの場合は1つのステージにたくさんのアーティストが出るので、基本的にみんなで同じセットを使ってもらうことになるからね。さらにフェスが始まっちゃえば僕らが実際に動くことはそんなになくて。
──そこは普段のライブと一緒なんですね。
そうだね。各専門のポジションの人が対応してくれるので。準備と調整に時間をかけるところは同じかな。
──屋内と屋外のフェスでの違いはどんなところがあります?
屋外だと天気の影響をモロに受けるので、準備期間が全然違うよ。例えば僕たちが参加させてもらってる野外フェスだと、普通の公園の敷地を使っているのでステージを設営するのに鉄板を敷くところから始まるんだ。舞台を作るための基礎から始めなくちゃいけなくて、それをやるのに何日間もかかる。あと屋外なので日没で作業は終了になるし、雨が降ったら作業できないし。
──確かに。雨で言うと、スピーカーなどの機材は屋内のときと変えてるんですか?
完全防水の機材はないから、雨養生して保護する形だよ。あ、もう1つ屋内と屋外の違いで言うと、音の苦情が出る可能性はある。特に都市型フェスだと、音量にも気を使う必要はあるよね。
ライブ制作の醍醐味
──お話を聞いて、ホントたくさんの業務をこなされていて、アーティストがライブするのに不可欠な存在ということがわかりました!
細かい決め事や確認事項の量は多いので、たくさんの情報を処理して進めていく必要はあるかな。ただそれは表面的な部分で、大事なのはいかにアーティストに寄り添って一緒に大きくしていけるかだと思うんだ。例えば3年後にZeppでやりたいというアーティストがいたとして、それを実現するためにどうすればいいかをスタッフ一丸となって考えて実行していく。なかなか難しいけど、そういうことを考えながらやれたらいいのかなと思ってるよ。
──マネジメントに近い意識でやられているんですね。渡邉さんがライブ制作の仕事をしていて楽しいと感じるのはどんなときですか?
やっぱりアーティストがすごくいいライブをしてくれると「やっててよかったな」と思うよ。ステージに立っているアーティストが一番感じるものがあるだろうけど、僕らも一緒にライブを作っているつもりなので。アーティストも人間だから、常に全力を出す中でも多少のコンディションの波があって、たまに格別に素晴らしいライブの日があるんだ。きっとお客さんの力も大きいんだろうね。そういうライブを観ると楽しいし、僕も「またがんばろう」という気持ちにさせてもらえるよ。
──僕もいつか渡邉さんを感動させるライブができるようがんばります! 今日はありがとうございました!
渡邉直也
1977年生まれ。インディーズレーベル・マネジメント業務を務めたあと、2019年に株式会社インターブレンドに入社してライブ制作を手がける。現在THE BACK HORNや
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