再生数急上昇ソング定点観測

再生数急上昇ソング定点観測 (2024年2月3週目) [バックナンバー]

TWICE新曲も?最近増える“あの曲”のオマージュ / 病み垢ステロイド「IV V IIIm VIm」なんて読む?

今、盛り上がり始めている曲 / これから盛り上がりそうな曲について詳しく解説

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YouTubeでの視聴回数チャートや、ストリーミングサービスでの再生数が伸びている楽曲を観測し、今何が注目されているのかを解説する週刊連載「再生数急上昇ソング定点観測」。今週はYouTubeで2月2日から2月8日にかけて集計されたミュージックビデオランキングの中から要注目トピックをピックアップします。

/ 真貝聡

まずはこの週の初登場曲の振り返りから

今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、3位にNumber_iのデビュー曲「GOAT」のオフィシャルコレオグラフィービデオが登場。平野紫耀神宮寺勇太岸優太による抜群のスキルと躍動感を堪能できるダンスはもちろん、3人の動きをよりダイナミックに見せるカメラワークも素晴らしい。

Number_i「GOAT(Official Choreography Video)」

11位は、リリースから26年が経った今も冬の定番曲として老若男女に愛されているT.M.Revolution「WHITE BREATH」の、THE FIRST TAKEで公開された一発撮りパフォーマンス。圧倒的な声量と、歳を重ねて進化したパワフルな歌に絶賛の声が寄せられている。55位は中島健人が主演を務めるドラマ「リビングの松永さん」の主題歌であるSexy Zoneの「puzzle」。セクゾは3月31日にグループの改名と中島健人の卒業が決まっており、4人で歌う姿が見られるMVはこれが最後となりそうだ。

63位に初登場したのは、二期生の武元唯衣がセンターを務め、小山巧がMVのディレクションを手がけた櫻坂46の「油を注せ!」。67位にはテレビアニメ「七つの大罪 黙示録の四騎士」第2クールのオープニングテーマとしてオンエア中のJO1の「Your Key」がランクインした。93位は、なとりの楽曲としては珍しく女性目線で歌詞がつづられた「ラブソング」。この曲のMVは「金木犀」や「Cult.」といった過去のなとり作品でもおなじみの、映像監督の深山詠美が手がけた。

なとり「ラブソング」ミュージックビデオ

99位は7人組アイドルグループ・FRUITS ZIPPERの「わたしの一番かわいいところ」。2022年6月に公開されたMVが、1年8カ月経って今回初めてトップ100にランクインした。TikTokで8億回再生、MVは1700万回再生を突破して、昨年末の「第65回輝く!日本レコード大賞」で最優秀新人賞を受賞するなどすでに話題になっていたこの曲。2月9日放送の「ミュージックステーション」に出演した影響もあってか、ここにきてさらにランキングの順位が急上昇している。勢いのある若手から、日本の音楽シーンを支えてきたベテランアーティストまで幅広い世代の楽曲が並んだ今週は、下記の3曲をピックアップ。

TWICE「I GOT YOU」

※MV:YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場5位

※Live Clip:YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場34位

「I GOT YOU」は2月23日にリリースされる13thミニアルバム「With YOU-th」の収録曲。全編英語詞でメンバー9人の友情と愛が描かれている。曲を聴いてピンときた人もいるかもしれないが、煌びやかなシンセや速いテンポのスクエアなリズムなど、1980年代に大ヒットしたA-haの名曲「Take On Me」のニュアンスが強く感じられる。

A-ha「Take On Me」

TWICEのこの曲に限らず、ここ最近のK-POPシーンには「Take On Me」を元ネタにしたと思われる曲が多く存在する。ZEROBASEONEが昨年7月に発表したデビュー曲「In Bloom」は、「Take On Me」の印象的なシンセのリフをサビの部分で大胆にオマージュ。

ZEROBASEONE「In Bloom」

これと似たリフは、TOMORROW X TOGETHERが昨年10月にリリースしたアルバム「The Name Chapter: FREEFALL」の収録曲「Chasing That Feeling」の間奏部分でも聴くことができる。また、TWICEの生みの親であるJ.Y. Parkが昨年11月にリリースした楽曲「Changed Man」ではよりストレートに「Take On Me」を思わせる80'sテイストが取り入れられており、MVは「80年代に恋仲だった2人のポップアイコンが30年ぶりに歌番組で共演する」という内容になっている。

TOMORROW X TOGETHER「Chasing That Feeling」

J.Y. Park「Changed Man」

ちなみに「Take On Me」が現在の音楽シーンで再評価されるようになったのは、ザ・ウィークエンドが2019年にリリースした「Blinding lights」のヒットがきっかけ。当時のアメリカではテンポを落としてリズムを細かく刻むトラップビートが流行っていた中、「Blinding lights」は「Take On Me」のサウンドを踏襲し、トレンドの逆を行くアプローチでシーンの流れをガラッと変えた。2022年に大ヒットしたハリー・スタイルズの「As it was」も、その流れを汲んで制作されたと思われる。

ザ・ウィークエンド「Blinding lights」

ハリー・スタイルズ「As it was」

「I GOT YOU」に話を戻すと、世界的に注目されている80年代のサウンドを取り入れたこの曲は、全編英語詞で歌われていることや、航海をテーマにしたMVからも、彼女たちがここからさらにグローバルな展開をしていく姿勢が感じられる。ロサンゼルスを拠点に活躍するラウヴのボーカルパートを加えた「I GOT YOU(feat. Lauv)」が作られたのも、世界を視野に入れているからなのかもしれない。

TWICE「I GOT YOU(Voyage ver.)」

これらの曲を収録したアルバム「I GOT YOU(Voyage ver.)」には、「Garage ver.」「Lo-fi ver.」「Hyper ver.」「Sped Up ver.」といった別バージョンも収録されているので、こちらも合わせてチェックしてほしい。 

かいりきベア feat. 初音ミク「病み垢ステロイド」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場51位

愛している人と分かり合えない主人公が、ひとり病んでいく様子が描かれている「病み垢ステロイド」。楽曲の中で何度も「愛しているのに」というフレーズが出てくるが、一度「~のに」と思ってしまうと実に厄介である。自分の努力は足りているのに結果が伴わない。その思考になると、他人への妬みや嫉みばかりが増幅して、どんどんネガティブな考えに陥る。この曲は最初から最後まで希望も救いもなく、主人公はどんどん負のドツボにハマっていく。だからこそ聴いているうちに、「どこまで堕ちるんだ」と引き込まれる。

何より、かいりきベアのワードセンスが抜群だ。王道進行の構成コードである「IV→V→IIIm→VIm」を当て字で「順風満帆」と読ませて、人生がうまく行っている人を妬む様を表現しているのが見事。そしてボカロならではの機械的な発音で狂気を表現したボーカルも中毒性が高く、この難易度の高い歌に挑戦する“歌ってみた”動画も増えている。

Omoinotake「幾億光年」

※YouTubeウィークリーミュージックビデオランキング初登場83位

二階堂ふみが主演を務め、相手役に韓国の俳優・チェ・ジョンヒョプを迎えたドラマ「Eye Love You」の主題歌として書き下ろされた今作は、「想像もつかない距離を超えても届けたい愛」という意味を込めて「幾億光年」と名付けられた壮大なラブソングだ。

歌詞の中で「囁けばさ 届けられた距離」「どうしてかな 離れている方が言葉溢れ出すのは」という一節がある。そばにいるときはちゃんと思いを伝えようとしなかったけど、離れ離れになってからその人が自分にとっていかに大切な存在だったのかに気付いて、胸の奥に潜んでいた愛情があふれ出すことは、多くの人が経験をしたことがあるのではないだろうか。そんな普遍的な恋愛を、星にたとえながら、ほかにない新しいラブソングに作り上げてしまう表現力はさすがである。

個人的に驚いたのはメロディの構成だ。心地良いAメロから始まり、次にメロディアスなサビが始まったと思いきやそれはBメロ。そしてテンポが少し落ちてから、大きな盛り上がりを見せる煌びやかなサビがやってくる。1曲の中で何度も高揚感を味わえるところに魅力を感じた。

Omoinotakeは4月28日に大阪城音楽堂でワンマンライブ「SPECIAL LIVE 2024 "エアレンデル"」を開催する予定。藤井怜央(Vo, Key)はX(Twitter)で「『幾億光年』もカップリングの新曲『アクトレス』も、大阪城音楽堂で鳴らすことを念頭に入れて作りました」とポストしているので、会場でどんな感動を味わえるのかその目で確かめてみよう。

 

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真貝聡

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EMMA @EMMA65004871

『今週のYouTubeのミュージックビデオランキングは、3位にNumber_iのデビュー曲「GOAT」のオフィシャルコレオグラフィービデオが登場。平野紫耀、神宮寺勇太、岸優太による抜群のスキルと躍動感を堪能できるダンスはもちろん、3人の動きをよりダイナミックに見せるカメラワークも素晴らしい。』 https://t.co/UmpCIMHgGX

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