のっちさん

のっちはゲームがしたい! 第14回(後編) [バックナンバー]

小島秀夫さんとのトークが実現!世界を驚かせるクリエイティビティの源泉に触れました

デスストの続編や映画化についても言及、独創性あふれるゲーム観はどこから生まれたのか

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「こんなに制約があったらできない」と言ってしまうと、そこでもう終わり

のっち そういえば、デスストをやったときは「ゲームをやったなあ」っていう感覚と一緒に映画を観たような気分にもなったんです。ほかに似たものがない作品だと思うんですけど、これを作ろうとしたときに最初に何から思いついたのか気になりました。

小島 最初に「つなげる」というテーマがあって、その後キャラクターの設定とか、ゲームのアイデアとか、そんなのをいっぱいメモして。それをどうつなげていこうか、みたいな。バランスを取りながらまとめていきました。

再びエントランスを訪れ、童心に帰れる不思議な空間を体感するのっちさん。

再びエントランスを訪れ、童心に帰れる不思議な空間を体感するのっちさん。

のっち あっ、「つなげる」が最初なんですね。それから「生と死」だったり、人間にとっての普遍的なテーマが描かれるじゃないですか。

小島 何か1つのアイデアがあってそこから作るんじゃなくて、同時に複数のアイデアがガーッと出てくるんですよ。それがある日突然つながって、1つのイメージになるというか。

のっち へえー!

小島 「独立したんだし、早く新しいゲームを作らないと怒られるぞ」って周りに言われながら(笑)。ただ、やりたいことは何個もあったんですけど、コジプロを作って最初の頃はスタッフが本当に少なかった。例えばゲーム内で人々が暮らす街を1個作るとしたら、そこに住むキャラを1人ずつ作って、その人のセリフまで考えなきゃならない。でも当時は、短い期間であまりに膨大な作業にまで手が回らない状況だったから「少人数でできることをする」というのが発想のスタートだったんです。

のっち 面白い! 「これはできない」みたいな制限から創造していくんですね。

小島 そうですね。「できないこと」というのはあったほうが作りやすいです。今のゲームって、僕らが昔遊んでいた頃と違っていろんなことができる分、やりたいことを全部詰め込もうとすると破綻しやすいんですよ。だから「何をメインにして作るか」を考えないといけない。

小島秀夫さんからルーデンスの話を聞いて、見え方も違ってきたようです。

小島秀夫さんからルーデンスの話を聞いて、見え方も違ってきたようです。

のっち 「できないこと」があって、そこから「できること」を自分達で決めて、進んでいくんですね。制約の中で作るからこそ面白いですよね。Perfumeのステージでも、制限のある状況の中で生まれる演出やアイデアが面白くて。

小島 「こんなに制約があったらできない」って言ってしまうと、そこでもう終わりですよね。できなかったらどうしたらいいかを考えて、「できないことをやった」となったら、もうそれだけで褒められるし注目されるわけです。

のっち みんなそういう気持ちで生きていたら楽しいんだろうなって思いますね。「できない、できない」って言うんじゃなくて。

「今日できなかったことが明日できるかもしれない」って考えたら、笑いが止まりませんよ

のっち 小島さんの中で、ゲームと映画というのは近いものなんですか?

小島 僕は映画が大好きで1日1本以上は観ていますけど、もちろん映画を撮っているわけじゃないので、映画とは違うインタラクティブなメディアで何ができるのか、ということを考えながらゲームを作っています。ただ、そのときに使う手法だったり、カメラワークや色使い、シナリオの作り方とか、そういうものを映画から取り入れたりはしてますね。あと、最近の映画はほぼデジタルなものも多いので、そういうのはゲームの作り方とけっこう近いところがあると思っています。

のっち ああ、そうか。いろいろな技術が進化していくうちに、ゲームと映画の作り方がお互いに近付いてきているんですね。

小島 僕はテクノロジーが人類を幸福にするというスタンス。70年代アナログシンセの音が好きなんですけど、当時は「電子音楽なんて聴く人は少数派だ」と言う人も多かったんですよ。でもデジタルもアナログもツールとなるものなので、新しいテクノロジーを使わないっていうのはもったいないなと思っています。

エントランスで記念撮影をする、のっちさん、ルーデンス、小島秀夫さん。

エントランスで記念撮影をする、のっちさん、ルーデンス、小島秀夫さん。

のっち Perfumeもテクノロジーの力を借りてパフォーマンスをすることがよくあるんですけど、「どれだけ3人を素敵に見せてくれるか」「3人がケガをしないようにしてくれるか」みたいなところを助けてくれるので、私たちはよく「テクノロジーって言葉に冷たいイメージを持ってる人も多いけど、人が作っている温かみのあるものなんだよ」という話をしてるんです。

小島 そう、人が作っている以上は温かいですよ。そこにアナログかデジタルかという線引きはない。テクノロジーは日々進化しているから、寝て起きたらまたちょっと変わってるんです。この進化は永遠に続いていくので、それを考えたら僕は笑いが止まりませんよ(笑)。だって今日できなかったことが明日できるかもしれないんですから。

のっち でも進化のスピードが速いと、1つの作品を作っている最中でも、どんどん状況が変わっていくじゃないですか。あるハードで出すために作ってたけど、途中で新型が発売されてそっちに対応しないといけなくなったとか、そういうこともありますよね。

小島 例えば、性能が高くなると作るものが増えすぎるんですよ。以前までのゲームなら小さい部屋だけ作り込めばよかったのに、今はそれを収める街も丸ごと作らないといけない。やれることが増える分、楽しいんですけど永遠に終わらなくなっちゃうんですよ(笑)。

疑似的なつながりだけでは、生きることの充実は得られない

のっち そして、新作「DEATH STRANDING 2」の制作も進んでいるそうで。

小島 昨年末ティザーを公開しましたけど、観ていただきました? どんな作品になると思います?

のっち はい! 観ました! もう、なんにもわからないです!(笑) 「あの赤い人が次の敵なのかな……?」なんて思いつつ。

小島 DS2のお話は、コロナの前に作っていたんですよ。

のっち ええっ! 1が発売されたのがコロナ禍になる直前じゃないですか。2はコロナを踏まえてのお話なんだと思っていました。

小島 違うんです。でもコロナになって全部書き直したんですよ。「DEATH STRANDING」ではつなぐことが正義でしたが、コロナ禍になって、リモートなどの疑似的なつながりが重視されるようになってきました。一方でその疑似的なつながりだけでは、人間らしい、生きることの充実は得られないと感じました。やはり人間は外の世界に出て動くことが必要なんだと。

のっち ああ、そうですね。オンラインライブが増えたときに感じてました。

カフェテリアの壁には、スタジオに訪れたゲストのサインがたくさん書かれていました。そこでのっちさんにもサインを書いてもらうことに。

カフェテリアの壁には、スタジオに訪れたゲストのサインがたくさん書かれていました。そこでのっちさんにもサインを書いてもらうことに。

小島 孤立と分断が現在進行形で続いていて、世界も大きく変わりつつあります。そして元の世界に戻れなくなっている中、「つながり」について改めて考えたことで、DS2では、「ストランド」の意味も変わってきています。ティザーの最後に「Should We Have Connected?(我々は繋ぐべきだったのか?)」というメッセージが出ますけど、それが2で伝えたいことです。

のっち ええーっ! あんなにつないだのに? 何往復もしてがんばったのに!?(笑) でも確かに、つながりすぎるとちょうどいい距離感がだんだんわからなくなってくる、のようなこともありますよね。

サインを書いてカメラにピース。

サインを書いてカメラにピース。

のっち あと、「DEATH STRANDING」の映画化の話も進んでるんですよね?

小島 はい、映画化するんであれば映画ならではのものにしたいので、まったく違うものにするつもりです。ちょっとびっくりすると思うし、好みも分かれそうですけど。そもそもゲームはインタラクティブなメディアなのに、映画化って2時間の尺で収めなきゃいけなくて、その限られた尺の中でセリフもシーンも原作とほとんど一緒だったら、ファンはうれしいですけど、それはそれで「映画化する必要あるの?」という、そういったいろんな葛藤も生まれて難しい。だからせっかくやるなら、ヤバい仕掛けを用意しようとしているんです(笑)。

のっち うわー!(笑) 観たいです! 楽しみ!

サインと一緒に添えられる写真を、小島秀夫さん自らが撮影。

サインと一緒に添えられる写真を、小島秀夫さん自らが撮影。

誰も行ったことがないところに命を懸けて行く姿がカッコいい

のっち 小島さんはいろいろなことをされていますけど、まだ何かやりたいことはありますか?

小島 一番なりたいのは宇宙飛行士。僕の世代にとっての宇宙飛行士って「あらゆる訓練を積んで努力した人たちがチームを組んで、誰も行ったことがない場所を目指す」というイメージなんですよ。それで宇宙に行ったら、次のステップとして火星に向かおう、みたいな。誰も行ったことがないところに命を懸けて行く、その姿がカッコいいんですよね。

のっち ぜひ行ってほしいです!小島さんは「非日常を届けよう」というのを、ゲームの中だけじゃなくて普段の生活の中でも体現されてるんだなって、今日いろいろお話を聞いていて思いました。本日はありがとうございました!

のっちさん私物のBBポッド アクリルキーホルダーにサインする小島秀夫さんと、小島さん私物のPerfume「未来のミュージアム」シングルジャケットにサインするのっちさん。

のっちさん私物のBBポッド アクリルキーホルダーにサインする小島秀夫さんと、小島さん私物のPerfume「未来のミュージアム」シングルジャケットにサインするのっちさん。

 

のっちさんの取材後記

こんにちは、やってるゲームそのまま夢に出てきます。のっちです。


「バイオハザード」で遊んでる日はゾンビに襲われるし、「龍が如く」で遊んでる日は街で絡まれます。よね。

ゲームってやっぱ長時間になるし、頭も使うから刺激が強いんですかね?
アニメとか映画でも、全然夢には出てくるんですけどね。
明日あのルート試してみるの忘れない様にしよう、とか、なんでできなかったんだ?どうしたらクリアできるんだ?とか、考えてる時間が長いからなのかなあ?と思うんですが。


今はそれがもっぱら「ピクミン4」です!



わたしは、2003年頃「ニンテンドーゲームキューブ」を持って上京したんですけど、その時に初代「ピクミン」なのかな?やってた記憶があります。
CMソングがめちゃくちゃに流行りましたよね! 「運ぶ~戦う増える~そして~食べーられる~」ピクミンて何??って人でも何となく口ずさめて、しかもあの歌は「ピクミン」の歌だと認知されてるって、凄いことです。

「ピクミン4」は「ピクミン3」からなんと10年経っての新作ナンバリングタイトルらしい。

ある惑星に不時着して遭難してしまった「キャプテン・オリマー」を助ける為に、惑星に向かった「レスキュー隊」の面々。だけどレスキュー隊もまた遭難しちゃって大変! 最後の砦、最後の希望として白羽の矢がたったのは、新米レスキュー隊員の、、わ、わたし?!!
てことで、単身、謎の惑星に宇宙船で向かい、レスキュー隊員や他の遭難者達を見つけ出すというストーリーです。

ピクミン達は、色ごとに得意なことが違って、赤ピクミンは火に強くて、青ピクミンは水の中も移動できて、黄ピクミンは電気に強くてちょっと高く飛ばせる。
どのピクミンを何匹ずつ使うか、ピクミン達を使い分けてパズルしながら進んで、敵と戦ったり、オタカラを集めたり。


今回楽しかったのは「ダンドリチャレンジ」です! 制限時間内に、フィールドにある敵やオタカラをピクミンを使って全て回収します。

しかし「ダンドリチャレンジ」まじムズイ!!!

『まず手持ちのピクミンに壁を壊してもらってる間に、近くで埋まってるピクミンを引っこ抜いて回収して、その子達にオタカラ運んでもらって、壁壊し終わったピクミンを回収して、敵を倒してもらって、運ぶ前に他の壁壊してもらって、さっきのピクミンを回収して、、』
これがねえー、時間内になかなか全ての事をこなせないんですよねえ。
「ダンドリ」に対しての自信失っちゃいますよね、、大人なのに笑

でもやりたくなっちゃう。次は出来る気がする。これがねえ、夢に出てきてねえ、夢の中でもダンドリやっちゃうんですよねえ。出来そうで出来ない、でも出来そう!なゲームバランス天才なんですよねえ。

全然出来なくてもゲームは進められるし、ヒントもバンバンくれる令和の優しい設計だし、あと、何よりピクミンが超かわいいので、気楽に皆さんやってみてほしいです。



さて!
今回は前後編にわたって、コジマプロダクション新スタジオ訪問、そして小島秀夫さんにお話を伺いました!

エントランスからのルーデンスのお部屋、すごかった。
あの真っ白な空間に入った瞬間、自分に要らないものだったり、黒いもの邪魔なものが、ぶわあっと無理矢理引き剥がされて真っさらになって「自分は何の為に存在しているのか」根っこの部分に問われてる感覚。
私は私を全うするだけでいいんだ、というか。生きる目的、働く意味がすごくシンプルになるというか。なんか、そんな感じ。

小島監督とお話してみて、やっぱり発想が抜群に面白いし、ご自身のやりたいこととか、好きなこととか、話を聞いてるとワクワクする。
スタジオの作りもそうだけど多分一端に過ぎなくて。ファンだけじゃなく周りの人に喜んでもらえるようにと思ってて、それを感じるから小島監督に沢山の人が集まるし、スタッフも力を尽くす。
めちゃくちゃいい空気感だったんですよ。大切にし合ってる。尽くしあってる。勉強になりました。


「DEATH STRANDING」をプレイして。
人と人、生と死、あの世とこの世、そのつながりの描き方。
いつも繋がっている。だけど、確かな隔たりがあるということ。その優しさ。
爆発的な何かが起きた時、退化するか進化するかを選択してきたこと。
見えないものの願いでここにいること。

普遍的なテーマを、荷物を配達しながら人と関わって、見届けて、心に落とし込まれていく、ゲームだから自分のペースで体験するからこその自分との対話がある。
そんなことを感じてました。そんなこと感じなくても配達は楽しいし、ノーマン・リーダスはかっこいいです笑

もちろん配達中毒です(はーと)
デスストの続編も、映画も楽しみにしてます!

小島監督、そしてコジプロの皆さま、お忙しい中本当にありがとうございました!!!
監督にサインしていただいたBBキーホルダー、超宝物です!



さて次回は。ポケカです!
ずっと気になっている、ポケモンカードの世界にお邪魔します!
ほぼ知識ゼロですが、色々とお勉強させていただきたい。
「#のっちはゲームがしたい」で皆さまからの質問募集してます! ポケカの先輩からの質問も待ってます。楽しみ~!!

次回予告

小島秀夫さんとのトークで、世界を驚かせるクリエイティビティの源泉に触れることができたのっちさん。次回は、最近ちょっと興味があるもののまだ足を踏み入れていない「ポケモンカードゲーム」の魅力について学ぶべく、開発を手がける株式会社クリーチャーズにお邪魔する予定です。

この連載では、訪問相手に聞いてみたいことをTwitterで募集中。ハッシュタグ「#のっちはゲームがしたい」を付けてツイートされたポケモンカード開発チームへの質問を、のっちさんが代わりに聞いてくれるかもしれません。ぜひ質問をツイートしてください。

※募集期限は8月2日(水)12:00まで。1つのツイートに書き込む質問は1つだけにするようにお願いいたします。

Perfume最新情報

フジテレビ系ドラマ「ばらかもん」の主題歌「Moon」を9月6日にCDリリース。9月9日から11月26日にかけて、兵庫・兵庫県立美術館にて初の大規模衣装展「Perfume COSTUME MUSEUM」を開催します。

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