佐々木敦&南波一海の「聴くなら聞かねば!」 11回目 後編 [バックナンバー]
ExWHYZメンバーとアイドルの変化を考える
変わらないものを大切にするために変わり続ける
2023年1月19日 18:00 18
構成
自分たちも「DANCE YOUR DANCE」しなきゃ
南波一海 幕張で行われた「Even without BiSH, this is WACK」を観に行ったんですが、明らかにWACKのほかのグループとは違う地平を目指している印象を受けて。 “ダンス&ボーカルグループ”みたいな看板を背負っていく覚悟のようなものも感じたんですよ。それって大変なことでもあると思うんですけど。
mayu すごく難しいです。上を見たらキリがないじゃないですか。パフォーマンスがすごい人たちってたくさんいるし。だからといって、「ウチらはこれくらいでいいんじゃない?」みたいな感じでやるのも嫌なんです。なので今は、自分たちの見せ方を模索しています。単に歌やダンスがうまいというだけの見せ方じゃなくて、お客さんに楽しんでもらうというところを一番大事にしつつ。ただ一生懸命やればいいってだけじゃなくて、いろんな技術もしっかり培ってがんばりたいなって。
佐々木敦 振付がぴったりそろってるから観る人を感動させられるのかといえば、決してそんなことはないですからね。ダンスがバラバラでも魅力的に思えることもあるし。自分が一番踊りやすい感じで踊っている人たちが何人か目の前でパフォーマンスしているほうが僕は面白いというか、見どころがいっぱいあるような気になるので。両方あっていいんじゃないかと思いますけどね。
maho そうですよね。両方あきらめない(笑)。
mayu うん、バランスだよね。私たちはお客さんに自由に楽しんでほしくて、ステージの上から「DANCE YOUR DANCE」って言っているのに、自分たちがダンスをそろえることばかり気にしていたら、それはちょっと違うなと思うんですよ。「自分たちがDANCE YOUR DANCEできてないじゃん!」みたいな(笑)。だからと言ってバラバラでもいいわけないから、そこのバランスを取っていきたいなって。
南波 ダンスに定評があるnowさんの加入も大きかったんじゃないですか? グループ全体が底上げされつつ、個々の魅力もパフォーマンスを通じて発揮されている感じがします。
mayu そうですね。明確にうまい人がいるから、そこを基準にというか、振りをそろえる作業をするときは、いつもnowをお手本にって感じで(笑)。
maho でもExWHYZになってmayuちゃんの振付の才能が開花して。mayuちゃんの中に眠っていた才能がExWHYZの音楽性によって目覚めたんじゃないかと思うんです。それはmayuちゃんに振付をしてもらってるときにすごく感じますね。
佐々木 それって最初に言っていた、しっくりくるみたいなところと関係あるんですかね?
maho 今まで振付は悩ましくてメンバー全員苦戦する部分があったんですけど、ExWHYZになってからmayuちゃんが楽しんでやっててくれたりするから。
mayu 楽しかった。
mikina 生き生きしてる。
maho 振付してるときの様子が以前とは全然違うから、運命だって思いました(笑)。
南波 何かあったんですかね? 開けてない引き出しを開けるきっかけが。
mikina どうなんだろう? (振付が)決まった形じゃなくなったからかな。WACKの楽曲ってサビで絶対に手を挙げるとか、そういう振付の決まりみたいなものがあって。
南波 サビで手を挙げる。
mikina その文化も大好きだし最高だと思うんですけど、ExWHYZになるにあたって、何をしてもいいというか、枠がグイーンって広がった気がするから伸び伸びできてるのかな。
南波 手を挙げなくてもよくなったの、俺、知らなかった。
佐々木 手を挙げるルールがあるんですか?(笑)
mayu あります。
南波 必ず曲のどこかで手を挙げるっていう。
佐々木 それさえ知らない。何がファンなんだ(笑)。
maho ルールに捉われずに1回自分たちが、この曲に対してベストだと思う振付をやってみようってメンバーで話し合って。
佐々木 それ、めっちゃいいじゃないですか。
maho スタッフさんからも、「この曲はもうちょっとみんなで考えたほうが楽しいんじゃない?」ってアドバイスをもらったり、周囲の意見も聞きながらみんなで作っています。
南波 僕は「可能性を閉じない」ということが今一番大事なことなのかなって最近すごく思うんです。「自分たちらしさ」とか「WACKっぽさ」みたいなものに必要以上に捉われると先に進まないじゃないですか。今のExWHYZはそこを自分たちで変えていこうとしているわけですよね。
mayu そうですね。変えたい、変わりたいという気持ちがあるので。
南波 ファンの人たちの中には、変化を望まない人たちもいると思うんですけど、僕は「今チャレンジしてるこの人たちの面白さを感じないでどうするの?」って思っちゃうタイプなんですよ。だから今の話を聞けてめっちゃよかったです。長々としゃべっちゃいましたけど(笑)。
mayu いえいえ、ありがとうございます。
南波 変化を恐れないというのは大事ですよね。皆さん、わりと好奇心のあるタイプだったっていう話ですけど、楽しんで活動できているのは本当にいいですよね。
「ついて来れていないかな?」っていう人の気持ちも受け止めたい
佐々木 とはいえ、ExWHYZとして新たな活動をスタートするにあたって、やっぱり不安な気持ちもあったと思うんですよ。今までのファンがついてきてくれるんだろうか?とか。
mayu 不安はすごくありました。ツアーの初日とか特に。がんばってカッコいいアルバムを作って、すごく気持ちがこもってるし、自分たちも大好きだし、よっしゃライブやるぞー!ってメンバー全員盛り上がっていたんですけど、ファンの皆さんに新しい私たちを受け入れてもらえるのかな?って。EMPiREを解散します、新しいグループに生まれ変わります、新しいアルバムを作りますって、すごい速さで進んでいったんですけど、やっぱり気になっていたのは今まで応援してくれたファンのみんなのことだから。ファンのみんなに対する気持ちを今まで以上に込めて歌詞を書きました。今回はmahoちゃんの採用率が高かったよね?
maho うん。
佐々木 めっちゃ歌詞書いてましたね。
mayu mahoちゃんの歌詞は、明確にファンに向けて書いてるものもあったし、すごくいいなと思って。私たちは新しいグループになったんですけど、やっぱり自分たちが一番届けたい、聴いてほしい、観てほしい相手は今までと変わらないなと思ったんです。変わらない、大事にしたい存在があるから、グループは変わったけれどスタンス自体は変わらずにアルバムの制作もできたし、振付を考えるときも「みんなに楽しんでもらいたいから、ここの振りはこうしよう」とか、みんなで一緒に考えることができたし。ツアーの初日を終えて、グループ名や楽曲の方向性は変わったけど、それでもExWHYZはいいねとお客さんが感じてくれているのが伝わってきて、すごくうれしい気持ちになったんですよ。一緒に楽しんでくれようとしているというか。自分たちが大事にしたいのはお客さんだなって改めて思いましたね。
maho ファンの皆さんとの関係性だったり、変わらないものをずっと大事にしたいなと思うんです。それを継続していくために、私たちも変わっていかないといけない。ちょうど今ツアーを回っているんですけど(取材は昨年12月に実施)、変わらないものを大切にするために変わり続けていかないと、ということを日々感じています。
mikina 「変化について来れていないかな?」っていう人もやっぱりいないわけではないと思うんですが、そういう方々の気持ちも全部受け止めたいというか。みんなで手を取り合いたい。
佐々木 戸惑いながらもついていきたいと思ってくれているのが重要ですもんね。
mikina そうなんです。その気持ちに応えるために、私たちも覚悟を持っていろいろやるし、何回もギュッてしたいっていうか。そういう気持ちですね。
佐々木 いろんなアイドルの事務所がある中でWACKってかなりユニークな会社だと思うんですよね。所属アーティストもそれぞれ個性的で。そんな中にあって、EMPiREからExWHYZへの変化ってWACKとしても大きな実験だったと思うんです。WACKお得意のメンバーシャッフルとかではなく、同じメンバーをまったく違うグループに生まれ変わらせるという。まさに「この手があったんだ!」っていう。
南波 一番変わらなそうだったEMPiREが一番大胆に変わったから、そこもシビれますよね。しかも人数をめちゃくちゃ増やすとかじゃなくて、こういうやり方で変わるんだって。
メンバーそれぞれの詞作スタイル
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mikina @mikina_ExWHYZ
佐々木敦さんも南波さんも愛を持ってお話ししてくださったので‥‥超身を委ねてくだけた感じで 話しました☺️
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