パンチライン・オブ・ザ・イヤー2021 (前編) [バックナンバー]
“パンチライン”とは何か?LEXら新世代の台頭とともに変化する定義
言葉という観点からシーンを振り返る日本語ラップ座談会
2022年7月1日 21:00 28
フィメールラッパーに共通するマインド
MINORI 女性の戦いということでは、私が
二木 あっこゴリラは昨年6月に発表した作品「NINGEN GOKAKU」が素晴らしいんですよね。
渡辺 そうそう、戦ってる曲が目白押しというか、もう全部ファイトソングで(笑)。
MINORI 自分では言いづらいようなことをめっちゃ言ってくれてるんですよね。大変だろうなって思うんですけど(笑)、励まされる人がたくさんいると思います。
二木 あっこゴリラはラップのフロウもヤバいですよね。
渡辺
二木 そうなんですよ。
MINORI 私は韻を上手に踏む王道のパンチラインというよりは、シンプルにパワーワード的なラインを選んだんですけど、あっこゴリラと同じギャルマインド的なラインで、STUTS「Presence Remix」からNENEの「呼びたいなら呼べばBitchって 自分が幸せかが肝心です」も選びました。こんなメンタルが欲しい(笑)。
YYK あっこゴリラとNENEはもともと全然違うタイプだと思ってたんですけど、今は方向性としては一緒なんですかね? どちらもストリート系ではないというか。
渡辺 目指している音楽性は違うけど、マジョリティに抗いたい気持ち、女性として普段「マジかよ」って思ってるようなことを代弁してくれているという点では、あっこゴリラもNENEもそうだし、
「口に出して」に象徴される過激な表現の増加
YYK フィメールラッパーの間では過激な表現が増えてますよね。アメリカはハンパなく下ネタが多いんだけど、日本だと自称“Bad bitch”みたいな人でもそんなに下ネタはなかった。
二木 去年の「パンチライン・オブ・ザ・イヤー」ではAwichとNENEの「名器」を取り上げました。
渡辺 ミーガン・ジー・スタリオンとかもそうですけど、「あんたのために脱ぐんじゃなくてあたしが脱ぎたいから脱いでるんだよね」っていうのがここ数年の流れだと思うんです。Awichの「口に出して」のMVも、女子たちがワークアウトしているんですけど、自分たちの体を自分のためにもっと魅力的にしたいから鍛えてるんですっていうノリで。
YYK 僕はこの曲の「器デカい男ならYou Know 腹ばっか立てずに立てろよChimpo」というラインを選びました。MVではこの部分を出演しているダンサーやモデルの女の子みんなで合唱してて、それに食らったんですよね。「これアリなんだ、時代変わったな」って(笑)。
渡辺 女の子の中だけでの身内ノリみたいなものもあるのかもしれないです。私は女子高出身なんですけど、女子高ってやっぱり男の子がいないから普通にみんなの前で着替えるし、夏にスカート広げて「あっちー」みたいな(笑)。変な例えかもしれないけど、そういうノリを感じますね。
ママラッパーのパンチライン
渡辺 私はAwichでは「GILA GILA」から「Mステ出たから何? ヒットなきゃ続きは無い ヒット、ヒット、知らない人 にも言われるお前は誰」と長めに抜きました。これって今の Awichの立ち位置にいるラッパーじゃないと言えないようなセリフなんですよね。先日インタビューした若いラッパーの子も「やっぱゴールはMステに出ることっす」と話していたんですけど、「ミュージックステーション」に出られるような日本人のラッパーは現状ほとんどいない。そんな中、女性のラッパーであるAwichが先頭を切って出てくれたわけですが、この曲では「Mステ」に出ても「ヒットなきゃ続きは無い」と言われる厳しい現実をラップしつつ、その相手に対する「お前は誰」という言葉で彼女のブレイクのきっかけである代表曲「WHORU?」に帰結させるのがすごくスマートだなと思いました。
渡辺 「GILA GILA」は「とよみも金がかかる」にもグッときて。「とよみ」というのは言わずもがな彼女の娘さんですね。カーディ・Bも「娘のミルク代を稼がないといけない」みたいなことをラップしていて、ママラッパーのレトリックみたいなものでもあるんですけど、私も息子が生まれて「オムツ代を稼がないと」みたいなことは思うので、個人的に沁みましたね(笑)。
YYK ママの代表でもあるってことですね。
渡辺 その意味では、Charluもそうで。彼女がクリスマス直前に出した「KITAKAZE NIGHT」という曲から「一人こっそり聴くZORN」というラインも選びました。普通クリスマスソングと言えば恋人と過ごす甘いメロウチューンになりがちなんですが、彼女はシングルマザーとして2人の息子と3人で過ごすクリスマスを1曲まるまる使って歌っているんです。「一人こっそり聴く
二木 Charluが去年出したEP「CHARLESS」もすごい好きだったんですよ。CASPERとのコラボ曲「GLOW UP feat.CASPER」はママソングで。
渡辺 そうそう、Charluはママアンセムがたくさんあって。
二木 そのうえでフリースタイラーでもあるから、言葉の弾丸みたいなラップスキルがすごいんですよね。
<後編につづく>
※記事初出時、MASS-HOLEの活動拠点の記述に誤りがありました。訂正してお詫びいたします。
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