土岐麻子の「大人の沼」 ~私たちがハマるK-POP~ Vol.6 後編 [バックナンバー]
ワールドワイドな演出家・振付師の仲宗根梨乃と対面(後編)
アートを追求する姿勢
2021年4月16日 17:00 6
アートを追求する姿勢が素晴らしい
土岐 梨乃さんはアメリカと韓国、どちらの現場も肌で感じてきていらっしゃるわけですけど、近年はBTSがグラミー賞にノミネートしたりとK-POP旋風がさらに世界に広がっていますよね。梨乃さんもそういう実感はありますか?
仲宗根 はい。K-POPの世界的ヒットというとまず浮かぶのはPsyの「江南スタイル」(2012年リリース)ですね。あの頃はアメリカのラジオでも曲がかかってたので、「ここで韓国語が聴けるとは」ってちょっと感動しました。あとは私、
土岐 世界へK-POPが広がっていく大きな要因は、やっぱりこだわって緻密に作っているクオリティの高さなんですかね。
仲宗根 それはありますよね。韓国は今映画界もすごく盛り上がっていて、「パラサイト」がオスカーを獲ったり。アートをちゃんと追求する姿勢が素晴らしいと思います。あと、世界へ発信するという姿勢。
土岐 国民性なのかな、目指す道を定めたらものすごく勉強する人が多いなとも思っていて。韓国に行ったときに、知り合いの留学生の子がカフェで少し勉強したくてお店の人に聞いたら、断られたんですよ。向こうだと勉強するって言ったらそれは何時間も居座るっていうことになるらしくて(笑)、みんな6、7時間とかカフェで勉強するのが当たり前みたいで。だから音楽も、すごく勉強してアメリカの最先端を取り入れたりしているのかなって。
仲宗根 あると思います。あとヨーロッパからも取り入れてますよね。テミンのソロアルバム「Press It」に、ブルーノ・マーズも曲提供してますからね。
土岐 へえ、すごい!
仲宗根 前編でも話しましたけど、韓国のプロデューサーたちは常にリサーチしてダイヤモンドを探してますね。だから本当に尊敬しています。コロナになってからの配信ライブも、韓国はXRとかARとかいろんな技術を取り入れていて、ピンチをチャンスに変えていろいろなことをやろうとしているのはすごくいいなと思いましたね。
自分の感覚を誇りに思おう
仲宗根 ちなみに、土岐さんが感じるK-POPの魅力っていうのはどのあたりなんですか?
土岐 言葉で表現しづらいところはあるんだけど、アイドルたちが圧倒的に、歌もダンスもすべてのパフォーマンスを自分のものにしているところ、ですかね。昭和のアイドルの価値観としてあったような「できなくてかわいい」みたいなものには、私は小さい頃から心惹かれなくて。アーティストを好きになったという感覚に近いです。とにかく自分の表現というものを1人ひとりがちゃんと持っていて、鈍器で殴られたような衝撃がありました(笑)。中学生のときに初めてバンドを観たときのときめきを、大人になってまた発掘できたというか。
仲宗根 なるほど。
土岐 あとは毎回カムバック(K-POPにおいて新作音源をリリースすること、およびその収録曲を引っ提げて音楽番組に出演するなどのメディア露出をするプロモーション活動全般)のたびにコンセプトを変えたりして、1人ひとりがいろんな人になるじゃないですか。ゴリゴリのラッパーになったかと思えば、次の曲ではすごくラブリーになったり。そこに無限の可能性を感じて。私はもうすぐ45歳だけど、40を超えてからどうしても新しいものに挑戦することに少しずつ臆病になり始めてたんですね。トラップやヒップホップも聴いていたけど、それを自分の作品に取り入れるとなると「聴いた人がどう思うかな」って抵抗があって。でもそんなときに七変化するK-POPのアイドルを観ていて、ものすごく勇気をもらったんです。「こういうふうになりたいな」って。
仲宗根 なればいいのに。
土岐 (笑)。だいぶ自分を広げてもらったような気がしています。
仲宗根 マドンナも一緒ですよね。長いキャリアで、時代に合わせた音楽を表現しているんだけど、マドンナ自身は全然ブレてない。私はその点で彼女をすごく尊敬しています。やりたい放題だけど、アートに関してはストイックっていう。
土岐 確かに確かに。私も、自分の作品でトラップもチャレンジしたし、なんでもかんでもやりたいことはやろうと思ってます。泉は全然枯れてないぞ、と。
仲宗根 いいっすね!
土岐 そういうところからこの連載も始まったんです。30、40代とかの大人の方々で、K-POPにハマっていることを周りがどうとらえるかわからなくて人に言えないみたいに思っている人たちもいるんですけど……。
仲宗根 え、なんで言えないんだろう?
土岐 なんででしょうね。アイドルにハマるなんて子供がやること、みたいなイメージを持つ人もいるからかな。
仲宗根 そんな人いたら説教したるわ!
一同 (笑)。
仲宗根 考え方をシフトチェンジしていってほしいですよね。「このカッコよさがわかる自分ヤベーやん」っていうほうに。何も恥ずかしくないし、誇りに思えよって思います。アイドルもみんな、命懸けて真剣にやってますからね。その子たちに対しても失礼だし、自分にも相手にもリスペクト、でいてほしいなと。
土岐 本当ですね。この連載では「他人の感覚を気にするより、自分の感覚を誇りに思おう」とこれからも発信していきたいなと思ってます。
(前編はこちらから)
新沼のコーナー
今回の新沼は、
私の推しグルのBLACKPINKが所属するYGエンターテインメントから去年デビューしたばかりということで、かなり気になっていた存在。ただ、人数多い!ってことで、動体視力が弱ってきている私は沼のほとりに行くきっかけを見失っていました。
しかしそんな中、読者のあさこあらさんからTREASURE沼の誘いのメールがありました。
「おすすめポイントは何といっても圧倒的なボーカルが3人もいることです」
ということで、シンガーという切り口で3人をピックアップし、プレゼンしてくださいました。
まずはバン・イェダムくん。
小さな頃から歌ウマキッズとして韓国では有名な存在だったようです。
「検索すると、まだ声変わり前に女の子のような高音でスティーヴィー・ワンダーを歌う動画に出会えます」とのことで、確認してきましたよ。
スティーヴィーが娘の誕生に際して書いたこの曲を、子供が歌うというシュールさも吹き飛ばす、楽しそうに歌う姿。こんな緊張感のある舞台でも、のびのびと歌ってるのがすごい。
それから時が経ち、YGの練習生時代に出た番組企画の中ではショーン・メンデスの「There's Nothing Holdin' Me Back」もカバーしています。
あさこあらさんが
「自信がなさそうな様子で歌い出しますが、どんどんノってきて聴いている人を自分の世界に引き込んでしまう圧倒的歌唱力とリズム感。それでいて『どうだうまいだろう」という押し付けがましさが一切なく、ライトで心地よいボーカル』
と言うように、ここでもやはり自分のフィーリングを楽しむように歌っている姿に引き込まれます。
そしてグループデビュー前の昨年6月には、ソロ歌手としてオリジナル曲「WAYO」をデジタル音源にて発表しています。
グッとくる曲ですが、WINNERが制作しているという先輩後輩エピソードにもグッときちゃいます。
2人目に紹介してくれたのは、パク・ジョンウくん。
「なんとまだ16歳。性格も茶目っ気があり、元気いっぱい! イェダムくんは大人びていますが、ジョンウはまだ子供子供してて、それが微笑ましい。近所にいる普通の高校生のような感じ。でも歌になると雰囲気ががらりと変わります」
あの名曲「Superstar」のカバーでは、歌声に真面目さや勤勉さを感じました。
また、中学生のオーディション時に歌ったアデルの「When We Were Young」はこちら。
って、さっきからずっと、選曲が良過ぎるな。
3人目に紹介してくれたのはあさこあらさんの推し!
「グループ1の人気者、キム・ジュンギュくんです。非常に特徴的な、中毒性のある唯一無二の歌声の持ち主です」
ということで、オーディションの映像と、オフィシャルでのカバー映像を教えてくれました。
おお。オーディションのときから、完成された節(ブシ)がありますね!
個人的にはBLACKPINKのプロデューサーでもあるTEDDYの楽曲で歌ってみてほしい!なんて思いました。
「もちろん歌だけではなくパフォーマンスも最高」ということで、TREASUREのアルバムとMVをチェックしてきました。アルバムでは私、「BE WITH ME」が好きだなぁ~
この「BOY」も良い。
低音ラッパーもいて、ダンスもカッコよくて、そしてなんといってもさわやか。
確かな技術と個性で、これからカムバのたびにもっともっといろんな面を見せてくれそう。日々の楽しみが増えました。
あさこあらさん、ありがとうございました!
このコーナーでは、私をこれから新しいK-POP沼にハマらせてくれる情報を引き続き募集します。こちらのフォームから、ぜひあなたの沼を熱くプレゼンしてください。
土岐麻子
1976年東京都生まれ。1997年にCymbalsのリードボーカルとして、インディーズから2枚のミニアルバムを発表する。1999年にはメジャーデビューを果たし、数々の名作を生み出すも、2004年1月のライブをもってバンドは惜しまれつつ解散。同年2月には実父にして日本屈指のサックス奏者・土岐英史との共同プロデュースで初のソロアルバム「STANDARDS ~土岐麻子ジャズを歌う~」をリリースし、ソロ活動をスタートさせた。2019年10月にソロ通算10作目となるオリジナルフルアルバム「PASSION BLUE」を発表。2021年2月17日にカバーアルバム「HOME TOWN ~Cover Songs~」を発売し、3月6日にはワンマンライブ「TOKI ASAKO LIVE 2021 Spring『MY HOME TOWN』」を東京・日本橋三井ホールで行った。
・TOKI ASAKO OFFICIAL WEBSITE
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仲宗根梨乃
1979年沖縄県生まれ。マイケル・ジャクソンに憧れ19歳で渡米し、ブリトニー・スピアーズ、グウェン・ステファニーのワールドツアーや、アヴリル・ラヴィーン、ジャスティン・ビーバーなどの数々のミュージックビデオ、映画、CMなどにダンサーとして出演する。2008年のSHINeeのデビュー曲を皮切りに少女時代、東方神起、BoA、SUPER JUNIOR、f(x)、Red Velvet、NCT 127、超新星など数々の韓国アーティストの振付を担当。またジャネット・ジャクソン、ブリトニー・スピアーズ、国内ではCrystal Kay、AKB48、SMAP、DREAMS COME TRUEなどの振付にも携わる。近年ではコンサート演出も手がけ、自身も女優として活動。2021年4月より配信される「PRODUCE 101 JAPAN SEASON2」にトレーナーとして出演している。
・Rino Nakasone Official site
・Rino Nakasone 仲宗根梨乃 (@RinOkinawa) | Twitter
・Rino Nakasone 仲宗根梨乃(@rinokinawa) ・Instagram写真と動画
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バックナンバー
요시다유키히로 ЁсидаЮкихиро @yshdykhr
【昨年の今日】「ワールドワイドな演出家・振付師の仲宗根梨乃と対面(後編) | 土岐麻子の“大人の沼” ~私たちがハマるK-POP~ Vol.6 後編」(ナタリー210416) https://t.co/c4JHn4Su56
#仲宗根梨乃 #土岐麻子 #KPOP