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令和のアーティストとSNS 第5回 [バックナンバー]

嵐のSNS投稿に見る、ファンとのつながり

国内外“すべての人”に向けたSNSコミュニケーション

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新しいファン層開拓

先ほど紹介した「スローバックサーズデー」は、SNSで活躍する海外のインフルエンサーの間でかねてよりトレンドとなっていた企画だ。この企画のように、のSNSでは国内外問わず、直近の流行を的確につかんだ投稿が行われている。嵐の存在は知っていても興味のなかった人たち、もしくは存在自体を知らなかった海外の人たちに情報を広くリーチすることにつなげる動きと考えられる。

そもそも、他SNSと同時にTikTokアカウントを開設したこと自体が、嵐のコアファン層から外れた10代を中心とした若年層にリーチする目的を示唆している。TikTokでは2019年11月3日リリースの「Turning Up」以降、「IN THE SUMMER」「Whenever You Call」と自らの新曲をBGMにし、「ダンスチャレンジ」と題してコピーしてもらいやすいダンス動画や、カジュアルな雰囲気のワークアウト(筋トレ)動画の投稿がメインとなっている。若者にダンスをコピーしてもらい、これらの動画をバズらせることで、自らの音楽とユーザーとの接触回数を増やすことができる。

@arashi_5_official

##SummerChallenge ##Ohno ##嵐 ##ARASHI

♬ IN THE SUMMER - ARASHI

TikTokでさらに興味深いのは、嵐自身の音楽やダンスを投稿するだけでなく、しっかりと海外の若者の間で流行している楽曲 / ダンスを使用したり、流行しているドッキリ / いたずらをメンバー同士で仕掛けている点だ。

@arashi_5_official

##SummerChallenge ##ARASHISUMMER ##Ohno ##Aiba ##Nino ##嵐  ##ARASHI 

♬ Why are people using this wtf - 𝒮𝓅𝒽𝒾𝓃𝓉𝓊𝓈 𝒞𝒶𝓇𝓂𝑒𝓃
@arashi_5_official

##SummerChallenge ##ARASHISUMMER ##SongOfTheSummer ##Ohno ##Sho ##嵐  ##ARASHI

♬ Trev Peace and Love for all - Trevor Duvenage
@arashi_5_official

##SummerChallenge ##ARASHISUMMER ##Ohno ##Jun ##Nino ##嵐  ##ARASHI

♬ Coño (feat. Jhorrmountain x Adje) - Puri
@arashi_5_official

##SummerChallenge ##ARASHISUMMER ##Summerworkout ##嵐  ##ARASHI

♬ Shape of You - Ed Sheeran

上記に挙げた例では、すべてトレンド入りしていた楽曲でTikTokerにはおなじみのダンスを踊っている。「紙皿から友達の顔に粉をかける」いたずらも、一時期大流行していたものだ。実は、こうした“流行をつかむ”動きはYouTubeでも見られる。主に相葉と二宮が出演していたYouTubeチャンネル上の企画「スイーツ部」。もともとコンサートなどで普段から大野、相葉、二宮が甘いもの好きなスイーツ部だと自称していたため、古くからのファンに向けたサービスにも見える。だが実際のコンテンツからは、それだけでなく、YouTubeで動画を観るのが好きな海外ユーザーに向けた企画でもあることが垣間見えるのだ。

「スイーツ部」の動画の中で、相葉と二宮はセルビア、イタリア、メキシコなど普段あまり食べない各国のお菓子を試食してコメントし合う。こうしたコンテンツは、ここ数年、VOGUEやBuzzFeedといった海外の人気メディアのチャンネルや、韓国の人気俳優が出演するThe Swoonというチャンネルで定番として扱われているものだ。「世界各国の○○をキッズが試食」「△△のお菓子を韓国アイドルが食べてみる」といった動画をたまたま見たことがある人もいるかもしれない。

Instagram、TikTok、YouTubeとそれぞれにグローバルな流行コンテンツの潮流をとらえながら企画を実施し投稿している。その姿勢からは、やはり日本国内・海外を問わず、これまであまり嵐を知らなかった、あるいは熱心に応援していなかった新しい層にアプローチしようという意思が感じられる。嵐は活動休止を目前に、SNSを使った新しいファンの開拓すらも怠らないのだ。

「全員」に届ける嵐のSNS戦略

  • 多言語対応、多チャネル対応でグローバルに活動し、世界のファンを喜ばせる。
  • リアルタイムの双方向コミュニケーションや、マスメディアの裏側・普段の生活の一片を見せることで、これまでのファンとより距離感を近付ける。
  • 国内外問わず若者の流行を敏感にキャッチし、積極的にそのトレンドを活用することで、新しいファン層を開拓する。

嵐のSNSでの活動を具体的に見ていくと、それはただの「公式アカウントの開設」ではなく、ターゲットを広く設定し、綿密な計画とトレンドウオッチのもとに行われた大規模なブランディング戦略だったことがわかる。そして、その戦略は今のところ、(各SNSの数字やコメントを見る限りは)成功していると言える。もちろん、嵐とその周囲のスタッフの「より多くの人を笑顔にしたい」という強い気持ちがあってのことだろう。日本のトップアーティスト・嵐がこの1年で行ってきたさまざまな投稿には、SNSを運用するうえでのヒントがたくさん詰まっている。

1999年に結成されたジャニーズ事務所の男性アイドルグループ。メンバーは大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤の5人。同年11月にシングル「A・RA・SHI」でメジャーデビューを果たす。以降、現在までにさまざまなヒット曲を連発。メンバーはそれぞれ、音楽活動以外にもドラマや映画、舞台、バラエティ番組などでも活躍を続けている。日本以外のアジア諸国でのライブ活動も行っているほか、2007年には初の東京ドーム公演、翌2008年には5大ドームツアーも実現。さらに同年9月にはSMAP、DREAMS COME TRUEに続いて国立競技場で単独ライブを行った。2009年末には「NHK紅白歌合戦」に初出場。デビュー20周年イヤーとなる2019年6月にベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」、10月にミュージックビデオ集「5×20 All the BEST!! CLIPS 1999-2019」をリリースし、同年12月までアニバーサリーツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」を実施した。2020年9月にブルーノ・マーズが楽曲制作とプロデュースを手がけた全編英語詞の「Whenever You Call」を発表。同年12月31日をもって、グループとしての活動を休止することを発表している。

桂木きえ

1992年東京生まれのライター・コラムニスト。 東京大学文学部卒。会社員として働くかたわら、各種メディアにてコラムを執筆。YouTube、TikTok、Instagramなどネットメディアと若者文化についての考察を中心に活動する。

桂木きえ / ライター (@kiekatsuragi) | Twitter

カツラギ キエ|note

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