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横山剣(クレイジーケンバンド)

CKB横山剣に聞く横浜不良音楽の系譜

カップスからSuchmosまで世代を超えて受け継がれるハマのDNA

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80年代後半~現在:MIGHTY CROWN、OZROSAURUS、Suchmosら新世代の登場

CHIBOWに関して横山が「新しいもの好き」と説明するように、横浜の不良たちはとりわけ新しいカルチャーを好んだ。60年代から70年代にかけてはR&Bやソウル、ブルースロック、サイケデリックロック、ディスコが彼らを刺激したように、80年代から90年代にかけては本牧のZEMAやSUZYなどのクラブを拠点としてダンスホールレゲエのシーンが作られた。横浜におけるダンスホールレゲエの元祖的存在であるBANANA SIZE、さらにはのちに横浜を象徴する存在となるMIGHTY CROWNらが勢力的な活動を展開する。

また、MCのKayzabroとプロデューサーのDJ PMXによるDS455、MACCHO率いるOZROSAURUSらが牽引するヒップホップシーンも活性化。横山は風林火山のF.U.T.O.と横浜ベイスターズの応援歌「シューティングスター」(2007年)で共演しているほか、横山が中学時代を過ごした横浜市戸塚区の巨大団地・ドリームハイツ出身のサイプレス上野とロベルト吉野との交流もあるという。

こうしたダンスホールレゲエやヒップホップのシーンが、60年代からの不良音楽の系譜に連なるところも横浜の特徴だ。

「MIGHTY CROWNやFIRE BALLは多国籍グループで、その点ではゴールデン・カップスっぽいんですよ。ま、カップスはハーフじゃないのにハーフということにされてるメンバーもいたりするわけですけど(笑)。MIGHTY CROWNのMASTA SIMONくんのお父さんは映画プロデューサーで、『人間の証明』なんかの製作もやってるんですけど、若い頃はCHIBOWさんのことを可愛がっていて、CHIBOWさんはよくSIMONくんの家にも遊びに行ってたみたいで。FIRE BALLのJUN 4 SHOTとSUPER CRISSのお父さんもCHIBOWさんの悪友だったらしくて、みんなつながってるんです」

そのように血縁や地縁でつながる場合もあれば、不良のネットワークがそうした縁やジャンルを飛び越え、新たなコミュニティを構築する場合もある。2000年代に入ってCHIBOWが結成したスカ / ロックステディバンド、SKA-9もそうした例の1つといえるだろう。メンバーにはKuubo(B)や西内徹(Sax)らレゲエ / スカ界のベテランプレイヤーに加え、クレイジーケンバンドの新宮虎児(G)も。常に現在進行形、横浜不良音楽のなんたるかを体現し続けているCHIBOWには、古き良き本牧を懐かしむノスタルジックな視点は皆無だ。

「そこがCHIBOWさんに一番シビれるところですね。前しか見てないんですよ。バーボンを飲みながらブルースに浸るとか、そういうノスタルジーみたいなものをすごく嫌うんです。それと同時に、ルーツに対する敬意もあって、決して薄っぺらくない。本牧神社に『お馬流し』という神事があるんですけど、CHIBOWさんや周辺の人たちはみんな大好きなんですね。そんな軽やかさには僕もすごく影響を受けてます。ラジオでビンテージなサウンドをかける場合でも、そういうものから影響を受けている現行のものをかけるようにしています。もしくは今聴いてグッとくるもの。古い音源だとしても、新曲として聴けるものですね」

2010年代以降も横浜からは港から吹く潮風をたっぷり吸い込んだグループが登場している。アーバン&メロウな横浜感を打ち出したPan Pacific Playa(PPP)周辺も発火点の1つだ。

LUVRAW & BTBのサンセット感にはグッときましたね。あと、JINTANA & EMERALDSもすごくいい。PPP周辺にも横浜の不良感があると思いますね。そうした感覚をサンプリングして現在のものとして形にしているところも好きです」

いちファンの口調で「あと、やっぱりカップスの雰囲気があって好きですね」と横山が熱く語るのがSuchmosだ。メンバーのうち茅ヶ崎市出身のYONCE(Vo)と富山県出身のTAIHEI(Key)以外は全員横浜出身。ただし、YONCEもザ・ゴールデン・カップスの熱心なリスナーであり、横山は「YONCEくんとは初めて音楽の話をしたときにいきなりカップスの話になったんですよ(笑)」と話す。

「しかもケネス伊東さんの話をしました。Suchmosの『THE ANYMAL』というアルバムには後期カップスの雰囲気がありますね。サイケデリックで、聴けば聴くほどなじんでくる」

クレイジーケンバンドの最新作「PACIFIC」もまた、そうした横浜不良音楽の最新型といえるだろう。テーマはズバリ“港町としての横浜”。

「もともと港でコンテナ周辺の仕事をしていたこともあって、そういうテーマを考えていたんです。そんなとき仕事でロサンゼルスに行って、レドンドビーチというところに泊まったんです。この海の向こうは本牧なんだなと思っているうちに『PACIFIC』という言葉が浮かんできた。掘っても掘ってもネタが出てくるんですよ、横浜という町は。近所に刺激があるから退屈しないし、離れようと思ってもまた横浜のネタが出てきちゃう。横浜って常に工事中というか、落ち着かない街なんです。港町としてのルーツを大事にしながらも、一瞬だけ横浜にいてまたどこかに行ってしまう人たちとの刹那的な交流もあって、その両方の感覚があるんですよね」

最後に、冒頭の問いに戻ろう。――なぜ横浜の地からは不良性感度の高い音楽が生まれてきたのだろうか?

「不良を惹きつけるスメルがあるんでしょうね。マグネットフィールドというか、独特の磁場がある。僕も(同じ横浜市の)日吉や戸塚に住んでいたこともあるけど、夜になると結局本牧に向かっちゃう。何度浮気しても、ブーメランみたいに戻ってきてしまうんです。横浜、特に本牧はそういう場所ですね」

横山剣

1960年、横浜生まれ。1981年にクールスRCのコンポーザー兼ボーカリスとしてデビュー。以後、ダックテイルズ、ZAZOU、CK'sなどのバンドを経て、1997年春にクレイジーケンバンドを結成する。作曲家としても、和田アキ子、TOKIO、SMAP、一青窈、松崎しげる、グループ魂、藤井フミヤ、ジェロ、関ジャニ∞といった数多くのアーティストに楽曲を提供している。2019年8月に最新アルバム「PACIFIC」をリリース。

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