映画ナタリー - 話題の映画・ドラマ情報など最新ニュースを毎日配信

大林宣彦、黒澤明との思い出や仕事論語る「1番よくできたシーンからカットする」

192

左から中川右介、大林宣彦、大林千茱萸。

左から中川右介、大林宣彦、大林千茱萸。

新書「大林宣彦の体験的仕事論」の刊行記念イベントが、7月19日東京・下北沢の書店B&Bにて開催され、大林宣彦、同書の聞き手を担当した中川右介、大林の長女で映画感想家・映画作家の大林千茱萸が登壇した。

大林が自らの半生や仕事論を語り尽くしている本書には、空白のページがほとんどない。これは「映画に空白はない」という考えから、大林が加筆を行ったからであり、隙間をぴったり埋めるため行数を計算して文章が書き加えられたゲラ(校正紙)が公開されると、観客は息を飲んだ。それを見た千茱萸は、「映画のときはこんなもんじゃないですよ! 原稿用紙を切り貼りして縮小して、さらにまた切り貼りして……ということを何度も何度もやらされましたから。いつか今までの資料を全部公開したいくらい! 虫眼鏡と一緒にね」と笑い、大林は「人が真面目にやったことをゲラゲラ笑って……ゲラだけにね(笑)」と重ねる。

続いて本書の前書きの短さに話が及ぶと、中川は「カットすべき場合は、1番よくできたシーンからカットする。そうすればあとはどこでも切ることができる」という大林の考え方に習ったが故であると説明する。大林は「森田(芳光)くんの代表作『家族ゲーム』は、テレビで放送するときに10分くらい切らなければいけなくて、4人が並んで食事をしている1番いいシーンを切ったんだよ。そうするとみんなビデオを買ってくれたりするからね」と冗談を飛ばすばかりか、「『時をかける少女』をテレビで放送したときも、(原田)知世ちゃんが歌ってる最後を切ったんだよ。そしたら『いいところを勝手に切ったりして、監督がかわいそう』って投書がたくさん来て。俺が切ったんだよ!(笑)」と会場の笑いを誘う。千茱萸によると大林は“1度やったことを繰り返したくない”という考えの持ち主らしく、大林は「手塚治虫お兄ちゃんから習ったんだよ。あの人のマンガは出版されるたびにバージョンが違うからね」と敬愛する先輩との思い出を語った。

後半は観客からの質問コーナーに。映画監督志望の男性が名乗りを上げると、大林は映画が持つ力について、黒澤明の「僕が400歳まで映画を作ることができたら、僕の作品で世界を平和にすることができる。でもそんなに長くは生きられないから、大林くん、君が続きをやってくれないか。君がダメなら、その息子や、そのまた息子に」という言葉を使って説明する。さらに「黒澤さんが『夢』の中で、世界中の人がある日銃を捨てて目の前にいる人と抱き合うという短編を撮ろうとしたとき、みんなが僕に『大林さん、そんな小学生の作文みたいなものやめさせなさいよ』と言ってきた。でも黒澤さんは『だとしても、10人に1人はそのアイデアがいいと思うはずだよ。映画にしてごらん、観た人の100人に10人はいいと思う。その上映を続ければ40人、100人、1000人。それが映画の力だよ』と。僕は先輩たちの真似をしてやっている。映画を作るということは、その伝統の中に入るということ」と続け、「そのためには過去の映画を全部観て、敬意を表さないと」とアドバイスした。

映画ナタリーをフォロー