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大林宣彦がマンガ家・浅田弘幸とトーク、「映画は嘘からまことを出すもの」

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「漫画家、映画を語る。─9人の鬼才が明かす創作の秘密」トークイベントの様子。左から浅田弘幸、大林宣彦。

「漫画家、映画を語る。─9人の鬼才が明かす創作の秘密」トークイベントの様子。左から浅田弘幸、大林宣彦。

8月5日、書籍「漫画家、映画を語る。─9人の鬼才が明かす創作の秘密」の発売を記念したトークイベントが東京・紀伊國屋書店新宿本店にて開催され、映画監督の大林宣彦とマンガ家の浅田弘幸が登壇した。

浅田は大林の「さびしんぼう」を「一番好きな映画」と話し、「劇場版では富田靖子さんのプロモーションビデオのようなエンディングだったんですが、DVDでは宮崎(尚志)さんの音楽に乗せて尾道の風景が映されるという映像になってましたよね。この演出について聞きたいんですけど」と質問。大林は「富田くんはもともと歌手として売り出されるはずだったんですよ。しかも彼女はこの映画ではピエロのメイクをしていて、半分ぐらいしか素顔が見られない。それがかわいそうなので、劇場版のエンディングでは素顔で歌ってもらって、『この子は歌もうまいんだよ』とプロモーションビデオ風に仕上げたんです」と説明する。さらに、手塚治虫が同じ作品を再版する際に手を入れていたことについて触れ、「これがうらやましくてね。映画ってのはいっぺん作っちゃったらそれっきりじゃないですか。だから、『俺が映画を作ることになったら封切るたびに違うバージョン作ってやろう』と思って」と話して会場を沸かせた。

大林は、自作について「人は『ありがとう』の数だけ賢くなり、『ごめんなさい』の数だけ優しくなり、『さようなら』の数だけ愛を知るというのが僕の映画の基本でね」と話し、「子供の頃観た映画の中でこういう言葉があったんです。『人は傷つけあって許しあって愛を覚える』。思えばね、素晴らしい映画というのは一言で表せば『傷つけあって許しあって愛を覚えた』というストーリーになるんですよ。親子であれ友達であれ恋人であれ、あるいは敵と味方であれね」と述懐。また、「映画というのはリアリズムではなくて嘘からまことを出すもの。例えば雪が降っているシーンを撮影するときに、今なら昔と比べてリアルに撮れるけども、僕の映画ではまだ紙(の雪)を降らせたりしてるんです。嘘であるが故に、本当に雪が降る感じがするんですよ」と、自身の演出哲学を語った。

「漫画家、映画を語る。─9人の鬼才が明かす創作の秘密」は、9人のマンガ家が創作と映画の関係性について語った書籍。表紙イラストを描き下ろした浅田のほか、「銀河鉄道999」の松本零士、「鈴木先生」の武富健治、「進撃の巨人」の諫山創らのインタビューが収録されている。

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