これはフランス人演出家ダニエル・ジャンヌトーとSPACの4作目となるコラボレート作品。チェーホフの「桜の園」を、日仏の俳優たちによって立ち上げる。
舞台上にはシンプルなアイアンの椅子が配され、三方を仕切る薄いカーテンには、絶えず様相を変える空と雲の様子が映し出された。日仏の俳優によるセリフの応酬は、初めこそ不思議に感じられるが、物語が進むにつれ違和感がなくなり、それよりもむしろ、“言葉は通じているのに思いが通じない”もどかしさや虚しさを浮き彫りにする。さらにその“違い”は安易に解消されることなく、“違い”のまま、受け止められるのだった。
わずかな風に揺れるカーテン、流れていく雲の様相、俳優たちの足跡を留める起毛のカーペットなど、多彩な空間演出が登場人物たちの心の動きを豊かに描き出す。しかし後半はそのわずかな装いさえもが引き剥がされ、ラネーフスカヤをはじめとする登場人物たちの“無”からの再出発が、ほのかな希望と共に示された。
開幕に際しジャンヌトーは「この公演を実現させることは非常に重要でした」と言い、「この国際共同制作が実現したのは、ひとつの勝利であり、希望を与えるものだと感じています。どのような状況下でもクリエーションを行うこと、そして国や民族を超えた交流をあきらめてはいけないと信じています」とコメントしている。
SPAC「桜の園」の上演時間は2時間20分。公演はこのあと11月20・21日、23日、28日、12月12日に静岡・静岡芸術劇場、3日に静岡・磐田市竜洋なぎの木会館 大ホールにて上演される。11月20日には演劇ジャーナリスト・
ダニエル・ジャンヌトー コメント
この公演を実現させることは非常に重要でした。これまで、とても困難な状況のなかで進めてきたことの成果でもあります。感染症のことなどいろいろ大変でしたが、国際交流基金や
ママール・ベンラヌー コメント
この作品は今は小さな赤ん坊ですが、これから上演を重ねて大きく成長していくことが非常に楽しみです。
SPAC「桜の園」
2021年11月13日(土)・14日(日)、20日(土)・21日(日)、23日(火・祝)、28日(日)、12月12日(日)
静岡県 静岡芸術劇場
2021年12月3日(金)
静岡県 磐田市竜洋なぎの木会館 大ホール
作:アントン・チェーホフ
演出・舞台美術:ダニエル ・ジャンヌトー
アーティスティックコラボレーション・ドラマツルギー・映像:ママール・ベンラヌー
翻訳:アンドレ・マルコヴィッチ、フランソワーズ・モルヴァン、安達紀子
出演:鈴木陽代、
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KANA ENDO 遠藤加奈 @kanagon0007
【公演レポート】SPAC「桜の園」開幕、ジャンヌトーが手応え「この国際共同制作が実現したのはひとつの勝利」(コメントあり) https://t.co/94m3lsTcsx