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涙と笑いが歌舞伎座を包む「六月大歌舞伎」、“三谷かぶき”はトリビ屋の大向うも

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「六月大歌舞伎」が6月1日に東京・歌舞伎座で開幕した。ステージナタリーでは6月4日の公演をレポートする。

今年2019年の「六月大歌舞伎」の昼の部は、松本幸四郎尾上松也が三番叟を勤める「寿式三番叟」と、中村魁春中村児太郎中村雀右衛門による「女車引」の舞踊2演目で幕開け。「寿式三番叟」は力強い足拍子で観客を沸かせ、「女車引」は3人それぞれの趣向を凝らした舞で、客席を陽気な空気で包んだ。続く「梶原平三誉石切」では、中村吉右衛門が当たり役の梶原平三景時を演じる。懐紙を口にくわえた刀の鑑定シーンや、刀の切れ味を試す“二つ胴”など、見どころが満載の本作は、緊張の中にもおかしみを漂わせ、観客を楽しませる。手水鉢が見事に真っ二つになる場面では、客席から歓声が上がった。

そして昼の部のラストを飾った「恋飛脚大和往来 封印切」では、片岡仁左衛門が東京では約30年ぶりとなる当たり役の亀屋忠兵衛を勤めた。仁左衛門は三枚目の色男・忠兵衛を愛嬌たっぷりに演じ、破滅に向かう後半に向けての悲哀を際立たせる。忠兵衛の恋敵・丹波屋八右衛門を演じる片岡愛之助は、皆から総スカンをくう横柄な男を、軽妙な語り口で好演した。

夜の部では、三谷幸喜の新作歌舞伎「三谷かぶき『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』風雲児たち」が披露された。舞台にはまず、“教授風の男”に扮したスーツ姿の松也が登場。松也はアドリブを効かせた口上で客席を煽ると、観客を物語の世界へ誘っていく。そして物語の舞台は、鎖国によって外国との交流が厳しく制限される江戸時代後期へ。大黒屋光太夫(幸四郎)は、商船の船頭として伊勢を出帆するが、嵐に見舞われ大海原を漂流し、ロシアに辿り着き……。

市川猿之助演じる庄蔵、愛之助演じる新蔵、市川染五郎演じる磯吉、市川男女蔵演じる小市ら個性豊かな乗組員たちは、日本への帰国を夢見ながら1人、また1人と仲間を失っていく。そんな過酷な状況が、三谷の筆致により笑いの耐えないロードムービーとして描き出された。乗組員たちが次なる可能性を目指し、雪原を犬ぞりで滑走するシーンでは、11匹の“犬”が舞台上に登場。歌舞伎座を走り抜ける。さらに八嶋智人演じるキリル・ラックスマンの登場シーンでは、八嶋の出演テレビ番組にちなんだ屋号「トリビ屋」の大向うが掛かった。白鸚と猿之助がそれぞれ演じ分ける、エカテリーナとポチョムキンの豪奢な衣装にも注目したい。

幸四郎は少し高めの声色で、頼りないもののどこか憎めない、仲間思いの船頭・大黒屋光太夫を体現。光太夫の10年の苦難と成長を演じ切った。トリプルアンコールとなったこの日は、観客が総立ちで出演者に拍手を送り、幕が閉じられた。

「六月大歌舞伎」の公演は6月25日まで。昼の部は11:00開幕、夜の部は16:30開幕の3幕構成となっている。なお「月光露針路日本」の上演を記念して、ロシアの絵本から生まれたキャラクター・チェブラーシカとのコラボレーションクリアファイルが会場内で販売されている。

「六月大歌舞伎」

2019年6月1日(土)~25日(火)
東京都 歌舞伎座

昼の部

「寿式三番叟」
三番叟:松本幸四郎
三番叟:尾上松也
千歳:中村松江
翁:中村東蔵

「女車引」
千代:中村魁春
八重:中村児太郎
春:中村雀右衛門

「梶原平三誉石切」
梶原平三景時:中村吉右衛門
大庭三郎:中村又五郎
俣野五郎:中村歌昇
梢:中村米吉
大名山口十郎:大谷桂三
同 川島八平:中村松江
同 岡崎将監:中村種之助
同 森村兵衛:中村鷹之資
囚人剣菱呑助:中村吉之丞
奴萬平:中村錦之助
青貝師六郎太夫:中村歌六

「恋飛脚大和往来 封印切」
亀屋忠兵衛:片岡仁左衛門
傾城梅川:片岡孝太郎
丹波屋八右衛門:片岡愛之助
阿波の大尽:澤村由次郎
槌屋治右衛門:坂東彌十郎
井筒屋おえん:片岡秀太郎

夜の部

「三谷かぶき『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと)』風雲児たち」
原作:みなもと太郎「風雲児たち」より
作・演出:三谷幸喜

大黒屋光太夫:松本幸四郎
庄蔵 / エカテリーナ:市川猿之助
新蔵:片岡愛之助
口上:尾上松也
キリル・ラックスマン / アダム・ラックスマン:八嶋智人
マリアンナ:坂東新悟
藤助:大谷廣太郎
与惣松:中村種之助
磯吉:市川染五郎
勘太郎:市川弘太郎
藤蔵:中村鶴松
幾八:片岡松之助
アレクサンドル・ベズボロドコ:市川寿猿
清七:澤村宗之助
次郎兵衛:松本錦吾
小市:市川男女蔵
アグリッピーナ:市川高麗蔵
ソフィア・イワーノヴナ:坂東竹三郎
九右衛門:坂東彌十郎
三五郎 / ポチョムキン:松本白鸚

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