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幸四郎が襲名に新たな覚悟「白鸚という名に準じて、まっさらな気持ちで」

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襲名披露記者会見より。左から四代目松本金太郎、七代目市川染五郎、九代目松本幸四郎。

襲名披露記者会見より。左から四代目松本金太郎、七代目市川染五郎、九代目松本幸四郎。

九代目松本幸四郎、七代目市川染五郎、四代目松本金太郎がそれぞれ、二代目松本白鸚、十代目松本幸四郎、八代目市川染五郎を襲名する。その襲名披露記者会見が、本日12月8日に行われた。

高麗屋三代揃っての襲名披露興行は、東京・歌舞伎座にて行われる2018年1月の「壽 初春大歌舞伎」、2月の「二月大歌舞伎」を皮切りに、京都・南座、大阪・大阪松竹座、愛知・御園座、福岡・博多座にて行われる。直系の親・子・孫の三代での同時襲名は、歌舞伎界の歴史の中でも例を見ない慶事で、これ以前には1981年10・11月の歌舞伎座公演で、八代目松本幸四郎が初代松本白鸚を、六代目市川染五郎が九代目松本幸四郎を、三代目松本金太郎が七代目市川染五郎を襲名し、当時、大きな話題を呼んだ。

二代目松本白鸚襲名にあたり幸四郎は「初舞台から省みていろいろなことがございましたが、今日この日のために今までがあったのではないかと思えるくらい本当に幸せです」と挨拶。また、「37年前に私の父がやってくれた三代襲名がまた実現できるというのは奇跡に近いことです」と喜びを語った。

十代目松本幸四郎を襲名する染五郎は、「今ここにいて、興奮しております、感激しております」と感慨を述べる。さらに「私自身ずっと歌舞伎役者でありたい、歌舞伎の舞台に立ち続けたい、代々高麗屋が演じてきた芸を自分が体現したいと思って舞台を続けています。それは名前が変わっても変わりません」と語り、「襲名にあたり、ある尊敬するお方の言葉に倣って、“歌舞伎職人”になりたいと、そう思っております」と決意を語る。「その尊敬する方とは志村けんさんです」と続け、あるインタビューで志村が発言していた「お笑い職人になりたい」という表現に惹かれたと説明し、会見場を和ませる。次にマイクを渡された、八代目市川染五郎を襲名する金太郎は、緊張の面持ちで自己紹介したのち、「よろしくお願いいたします」と頭を下げた。

三代襲名を決めたタイミングは?と記者から質問が出ると、幸四郎は「はっきりとは覚えてないのですが新歌舞伎座ができてからというのは間違いないと思います。というのも、襲名というのは神がかり的なもので……いつかはっきりしないものなんです」と語る。「ただ、昨今の染五郎の舞台を観ておりまして、『伊達の十役』の政岡の女語りには、親子ながら舌を巻きました。そういう中で、いつと決めたわけではありませんが、いつかその日が来るのかなと漠然と思っていました」と感慨深く語る。

また、35年前の三代襲名興行を振り返った幸四郎は「無我夢中でございましたね」と言い、「そのときはこのようにまた三代襲名が実現できるとは夢にも思っていませんでした。いろいろなことがございましたが、諦めず挫折せず、がんばってきたおかげで、このように跡を継いでくれる息子や孫ができたのかなと。これまでの夢は夢見るための夢で、70過ぎてこれから見る夢こそ本当の夢のような気がしてなりません」と言葉に力を込めた。

襲名披露の演目については、幸四郎は「1月には『菅原伝授手習鑑』寺子屋の松王丸をやらせていただくようでございます」とコメント。染五郎は「やりたい役は数限りないのですが……」と次々に作品名や役名を列挙したあと「あの、まず最初に会社(松竹株式会社)の方とお話してよろしいでしょうか?」と発言して、会見場は笑いに包まれた。

また歌舞伎以外の演目への出演については、幸四郎は「お客様のご要望次第で」と前置きしながら「白鸚のラ・マンチャやアマデウスが観たいというお声があれば、役者としては演じなくてはいけないと思っています」、染五郎は「近年、歌舞伎NEXTで『阿弖流為』という新作歌舞伎を作ったりもしましたが、これまでやられてきた演目も途絶えてしまった演目も、また新しく生み出すものにしても、歌舞伎という言葉にこだわってやっていきたいと思います」と決意を語った。

父親としてそれぞれ、息子に伝えたいことはという質問には、幸四郎は「昨今の舞台を観ていて、染五郎の芸というのは、もう染五郎という器を溢れ出てしまっていると感じていました。ここであえて器を変えて、幸四郎という器をまた新たにいっぱいにしてほしいと思っております」と発言。染五郎は金太郎に目をやりながら「そうですね…」と考えたのち「がんばってくださいってとこですかね(笑)」と大きく笑った。

また会見中、記者や父に話を振られても、なかなか言葉が出ない金太郎の様子を見ていた染五郎が、「35年前の記者会見の映像をこのたび見返したんですけど、(金太郎は)当時の私の30倍は喋っています! 当時の私にくらべれば、とても優等生じゃないかと思いますね」と息子をフォローする一幕も。

最後に、「幸四郎」という名前に対する未練は?と聞かれると、「いや、まったくないです」と幸四郎。「ただ幸四郎時代にいろいろな方のお世話になりましたので、その方たちに対する感謝の気持ちだけですね。これからは白鸚という名前に準じて、まっさらな気持ちで一から芝居を勉強したいと思います」と、襲名に対し新たな決意を語った。

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