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上演8時間超のポール・クローデル「繻子の靴」を渡邊守章が演出、出演に剣幸

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2014年に上演された「二重の影」(「繻子の靴」二日目第13場、撮影:清水俊洋)

2014年に上演された「二重の影」(「繻子の靴」二日目第13場、撮影:清水俊洋)

フランスの劇作家ポール・クローデルによる「繻子の靴 ―四日間のスペイン芝居―」が、12月10・11日に京都・京都芸術劇場 春秋座にて上演される。

クローデルが大使として滞日中に完成させた本作は、「一日目」「二日目」「三日目」「四日目」と名づけられた4部で構成される。大航海時代のスペインを舞台に、人妻ドニャ・プルエーズと騎士ドン・ロドリッグによる、カトリック世界では許されない恋と、プルエーズの夫ドン・ペラージュや、背教者ドン・カミーユなど、彼らを取り巻く人々の物語が描かれる。

かつて本国では徹夜での上演も行われてきた大作を、今回は30分の休憩を3度挟みながら8時間超で上演。プルエーズを剣幸、カミーユを吉見一豊、ロドリッグを石井英明、ペラージュを阿部一徳が演じるほか、小田豊瑞木健太郎茂山七五三・宗彦・逸平らが出演。また能管の演奏を藤田六郎兵衛が担当し、野村萬斎が映像出演する。

本作の翻訳・構成・演出を手がけるのは、フランス文学研究家で翻訳者・演出家の渡邊守章。渡邊は、2005年と2008年に本作の「朗読オラトリオ版」、2014年に「二日目」第13場の「二重の影」をマルチメディアパフォーマンス作品として上演しており、今回、満を持して“全曲版”に取り組む。上演に際して渡邊は「単に“日本初演”と言うだけでなく、フランスやドイツにおける“全曲上演”では明らかにならなかった局面を含めて、この“世界大演劇”の深層とその変奏とを、舞台上に出現させるという、世界的に見ても画期的な企画」と語っている。

渡邊守章コメント

ポール・クローデル作「繻子の靴」について

今や、20世紀最大の劇詩人として、フランスではパリのみならず、地方の演劇センターや劇団で上演が絶えないクローデルは、同時にキャリアーの外交官でも在り、駐在地の文化を貪婪に吸収し、グローバルな視座をもつ戯曲や詩篇、エッセーを残している。特に日本には、1920年末から1927年初頭まで、間に約1年間の休暇を挟んで滞在し、近代化途上の日本人と日本の伝統文化について、極めて示唆に富むエッセーや詩篇を残した。しかしなんと言っても、日本滞在中の最大の収穫は大作「繻子の靴」であり、詩人・劇作家・文明批評家クローデルの、文字通りの総決算であった。
「四日間のスペイン劇」と副題されているが、通常の劇場習慣からすれば、ゆうに4回分の分量を持つため、1943年の、コメディ=フランセーズ初演に際しては、劇詩人と演出家ジャン=ルイ・バローの共同作業で「上演版」を作ったほどである。この「上演版」は以後、バロー劇団のレパートリーとして、劇団の独参湯(上演すれば必ず当る作品)にまでなった。
しかしこのバロー・ヴァージョンは、「四日目」部分を、最終景を除いて全てカットしたから、「繻子の靴」という“世界大演劇”の重要な局面が見落とされることとなった。特に「四日目」は、単なる“後日談”ではなく、第2次世界大戦後の前衛劇である“不条理演劇”の先取りでもあったから、1972年にバロー劇団が、サーカス・テントを使って初演したのをきっかけに、1987年のアントワーヌ・ヴィテーズ演出以来、「四日目」を含む「全曲版」を上演するのが、「繻子の靴」上演の定式となった。
今回の京都芸術劇場春秋座公演も、日本で初めて「全曲版」に挑むものであり、同劇場15周年の演目の中でも、最も大胆な企画の一つである。
注目すべきは、幾つかのカット部分を除いて“4日間”の全曲版を目指すものであり、特に高谷史郎のマルチメディア映像を駆使した作業は、役者の稽古と並行して、既に2年前から実験を進めている。単に“日本初演”と言うだけでなく、フランスやドイツにおける“全曲上演”では明らかにならなかった局面を含めて、この“世界大演劇”の深層とその変奏とを、舞台上に出現させるという、世界的に見ても画期的な企画である。

「繻子の靴 ―四日間のスペイン芝居―」

2016年12月10日(土)・11日(日)
京都府 京都芸術劇場 春秋座

作:ポール・クローデル「繻子の靴」(岩波文庫)
翻訳・構成・演出:渡邊守章
映像・美術:高谷史郎
出演:剣幸 / 吉見一豊、石井英明、阿部一徳、小田豊瑞木健太郎 / 茂山七五三茂山宗彦茂山逸平、島田洋海、鈴木実 / 岩澤侑生子、岩崎小枝子、鶴坂奈央、千代花奈、田中沙依、片山将磨、山本善之、磯貝優志、谷田真緒 / 藤田六郎兵衛(能管) / 野村萬斎(映像出演)

※岩崎小枝子の「崎」は、たつざきが正式表記。

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