「ミュージカル『テニスの王子様』」「ミュージカル『刀剣乱舞』」など、演劇界に常に新風を巻き起こして来た演劇プロデューサーの
構成
“食べる”から“愛でる”へ、キャラとしても注目
皆さんご存知の通りたべっ子どうぶつは、日本人で食べたことがない人はいないんじゃないかなと思うくらい人気のお菓子です。たべっ子どうぶつは今年で45周年ですが、45年間ずっとトップランナーでいるお菓子って本当にすごいですよね。コンビニの売上ランキングでも常に上位にいる商品と伺って、確かに子供から大人までファン層が厚いお菓子だなと感じます。
たべっ子どうぶつはもちろん僕も昔から知っていて、子供のときに見た、どうぶつたちが気球に乗っているCMはすごく印象的でした。数年前からたべっ子どうぶつのキャラクターグッズがとても盛況で、そのグッズ展開の流れからたべっ子どうぶつカフェが大ヒットしたということを聞き、たべっ子どうぶつの人気を改めて実感しました。そのとき今年が45周年だと知り、「せっかくアニバーサリーイヤーなんだから、多くの人々に楽しんでもらう“たべっ子どうぶつランド”みたいなことをやってみたらどうでしょう?」と提案したことから、僕も「たべっ子どうぶつLAND」に関わることになりました(編集注:5月14日まで東京ドームシティ Gallery AaMoで開催)。
たべっ子どうぶつに触れて思ったのは、こんなに平和な世界がほかにあるだろうか?ということです。意地悪なキャラクターは出てこない、どのキャラクターもみんな良い子たちで……そういう世界観はひと昔前だったら現実味がないと感じたかもしれません。しかし今のようにさまざまなことが起こっている世の中では、逆に本当に何も“悪”がない世界って良いなと思います。それに、皆さんが子供の頃から身近にあるお菓子だから、まるで家族のような安心感がありますよね。皆さんそれぞれたべっ子どうぶつとの思い出を持っている。そのように長く愛されることのすごさを、たべっ子どうぶつには強く感じました。
そんなたべっ子どうぶつの世界観を大事にしたいと思いから「たべっ子どうぶつLAND」は、いつも舞台で映像をお願いしている方にたべっ子どうぶつたちが登場するアニメのようなものを作成し、まるで動物たちがそこで暮らしているように壁面に大きく投影したり、3Dメガネをかけてどうぶつたちが飛び出してくる360°VRアトラクションがあったり、とても楽しい世界になっています。
たべっ子どうぶつに見る、長く愛されるワケ
たべっ子どうぶつ45周年の歴史には面白いエピソードがいくつもあります。例えばたべっ子どうぶつはもともと47種類の動物がいたのですが、それは創業者の方が赤穂浪士にちなんで47種にしようと思ったからだそうです。でも途中でコアラがいなくなって、現在は46種類になっているとか……。また、たべっ子どうぶつには動物の名前が英語で書かれていますが、これにはギンビスさんが掲げる3つの経営理念、“国際性、独自性、教育性”にちなんで、お菓子を食べながらも英語に触れてほしい、という思いからきているそうです。たべっ子どうぶつは今や25カ国で販売されていて、英語版のほかに中国語版などもあり、そうやって日本のお菓子が世界で愛されているのは喜ばしいことですよね。
さらに、たべっ子どうぶつのすごいところは、それだけロングセラー商品にもかかわらず常に挑戦し続けているところです。今一番新しくて売れているのが「こだわりのバター味」で、ほかにもビスケットにチョコがしみ込んだ「たべっ子水族館」などが人気とのことです。ただギンビスさんは、たべっ子どうぶつやヒット商品のアスパラガスなど以外には、新しい商品をたくさん作っておらず、人気商品でさまざまな挑戦をしています。流行に合わせて一過性のものを次々と作るのではなく1つの商品にこだわり続けている。そこもたべっ子どうぶつが何代にもわたって愛されているゆえんなのかもしれません。
実際、「たべっ子どうぶつLAND」にはファミリーが大勢来ています。「たべっ子どうぶつLAND」では、たべっ子どうぶつに関する展示やコラボメニューのあるカフェ、グッズショップなどがあったり、キャラクターが日替わりで登場するグリーティングタイムがあったりとテーマパークのようになっています。中にはそれぞれ“推しキャラ”がいるお客さんもいて、そのキャラに会いたいがゆえに何度もリピートするが人がいるくらいです。そういうところも少し演劇に通じる部分がありますよね。
たべっ子どうぶつの“物語”が、人を魅了する
ギンビスの現社長・宮本周治さんは快活で明るくて、まさに“日本を元気にするお菓子を作る人!”というエネルギッシュな方です。でもお菓子の企業として、例えば「マーケティングにものすごく力を入れて、とにかく多くの商品を大量に売っていこう!」という感じでは全然なく、パッケージにある「子供たちに夢を」という思いや、「英語を学んでもらいたい」「美味しいものを食べてもらいたい」というようなすごくシンプルで純粋な思いで商品を作っている。そういったギンビスさんの理念は、お客さんにもしっかり届いていると思いますし、たべっ子どうぶつたちが作り出すあの優しい世界観がお客さんの心を掴んでいるのだと思います。
Page2でご紹介した平子良太シェフにも感じたことですが、人の心を掴むには“物語”が必要です。表層的で、一時的な反応や感覚だけではない人を魅了する“物語”みたいなものがあり、それがたべっ子どうぶつの中にも染み込んでいるのだと思います。確かに人の心を掴むって、その人を物語に巻き込んでいくことで、それはエンタメの世界にも通じることです。ギンビスさんの根幹にあるのは、老舗のお菓子屋としての純粋な思い。これこそ日本の誇りであり、立ち上がって拍手を送りたいです。
松田誠(マツダマコト)
演劇プロデューサー。一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会の代表理事。2022年6月にネルケプランニング代表取締役会長を退任し、7月フリーとなって新たに世界に挑む。
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