「ミュージカル『テニスの王子様』」「ミュージカル『刀剣乱舞』」など、演劇界に常に新風を巻き起こして来た演劇プロデューサーの
構成
まずは尾上松也の強烈なパンチ!
7月に新橋演舞場で上演された「新作歌舞伎『刀剣乱舞』月刀剣縁桐」はとにかく素晴らしかったです。演出も担当された
尾上松也さんはすごくニュートラルでシンプルな考え方の人で、刀剣が主役の話なのだから刀が生まれるところを見たいとわざわざ刀鍛冶のところまで見学に行き、その様子を見て「絶対にオープニングはこれだ!」と思ったそうです。なので歌舞伎の「刀剣乱舞」は刀を打つシーンから始まり、(松也演じる)三日月宗近が生まれるところが描かれました。ちなみにラストシーンには登場した6振りが“本身”で飾られていました。そんな終わり方は今まで観たことがなくとても素敵な演出でした。
松也さんがすごいのは、「刀剣乱舞」というコンテンツの本質をちゃんと探り当てて、それを歌舞伎の表現で見せているところです。なにしろ「刀剣乱舞」を歌舞伎にするにあたって松也さんは「刀剣乱舞」の舞台もミュージカルも観に来てくださいましたし、ゲームもやり込んでものすごく原作を勉強していらっしゃいます。原作があるものを作るということは原作に対する愛がないとダメですし、その点で松也さんの歌舞伎愛と「刀剣乱舞」愛はものすごく深い。だからこそ「新作歌舞伎『刀剣乱舞』月刀剣縁桐」は、歌舞伎ファンの方からも刀剣ファンの方からも評判が良かったのだと思います。
ちなみに「新作歌舞伎『刀剣乱舞』月刀剣縁桐」で初めて歌舞伎を観た「刀剣乱舞」ファンの方がそれ以降も歌舞伎を観に行っているという話を聞きます。一方で歌舞伎ファンの方が「刀剣乱舞」のゲームにハマっているという話も聞きます。コラボレーションとしてお互いにいい影響が出て最高ですね。表現者のみならず作り手としても尾上松也さんに脱帽です。
2つ目は小沢道成からのパンチ!
8月に観たEPOCH MAN「我ら宇宙の塵」はとにかく
3つ目は末原拓馬からのパンチ!
3つ目は、同じく8月に観た劇団おぼんろ「月の鏡にうつる聲」です。小沢さん同様、
それと末原さんも小沢さんも、一切妥協しないところが素敵です。一緒に仕事をするときは何回も何回も話し合いますが、腑に落ちるまでは途中で適当な相槌を打ったりせず「わからない」「もうちょっと詳しく教えてもらっていいですか」って言い続けるんです。でも一旦飲み込んだあとの展開が早い。そこは本当にすごいなと思います。
……ということで、この夏は日本の伝統芸能を担う雄と若いクリエイターたちのパンチを喰らいました。彼らのような作り手がいてくれることは日本の舞台の未来の大きな希望だと思います。妥協しない、ある意味無謀なことも考える人たちだから、彼らとものづくりをすることは時間もお金もかかるかもしれない。でもそれを一緒に実現していくのが自分の仕事だと思っています。そしてグローバルなことをやっていくのが自分の今のミッションだと思っているので、彼らのような才能と志が世界をあっと言わせることを自分が少しでもお手伝いすることができるならば本望だと実感した2023年の夏でした。
松田誠(マツダマコト)
演劇プロデューサー。一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会の代表理事。2022年6月にネルケプランニング代表取締役会長を退任し、現在はフリーとして幅広く活動。
バックナンバー
関連記事
横川良明✏️初のエッセイ本が発売中! @fudge_2002
今さらこの記事読んだけど、松田誠さんがみっちーと拓馬くんの名前を挙げてる…! 松田さん、趣味が合うわ。
https://t.co/cM7LFzFNTK