6月にネルケプランニングを卒業し、7月にフリーのプロデューサーとなった
本連載では、そんな松田がこれから巡り会う作品、人、もの、場所などに注目。毎月、松田の琴線に触れた“出会い”を語ってもらう。Page1は新オフィスにて、現在の心境や今後の展開について聞いた。
構成
“勇気を持って立つ”ために
6月にネルケを卒業して、7月からは小さなオフィスを構えました。基本的には毎日そこで1人で自由にやっています。新しい会社は“スタオベ”という名前で、あくまでプライベート会社、個人事務所という感覚。ネルケのときは「とにかく広げていこう」と考えていましたが、スタオベは広げていくというよりも新しいことにチャレンジしたり、何かを丁寧に育ててみたり、というようなことができる場になれば良いなと思っています。
スタオベは、スタンディングオベーションの略です。スタンディングオベーションって、言葉自体は昔からあるし欧米では割と一般的ですが、日本ではそれほど一般的ではなかったですよね。でも最近、若い人たちがポジティブな感じでスタンディングオベーションをしてくれるようになってきたし、スタンディングオベーションを「スタオベ」と呼んでることを知って「ああ、ポピュラーになってきたんだな、これは良いことだな」と思っていたんです。スタンディングオベーションって、勇気を持って立つ、ということだと思っていて……やっぱり最初に立つのは勇気がいることですよね。でも最初の人が立つと、どんどん周りも立ち始め、客席の雰囲気が変わり、劇場全体の空気も高まっていく。そんなスタオベに対する印象が、これから日本国内だけじゃなく海外にも日本のエンタテインメントやコンテンツを持っていきたいと思っている自分の状況と重なって、自分自身を鼓舞する意味でも、「恥ずかしがらず勇気を持って一歩踏み出そう」という思いで“スタオベ”と名付けました。
現在は数年前から考えていた企画などを動かし始めたところです。不思議なもので、立場が変わると面白い出会いやお話をいただく機会が増えて、今はお芝居にこだわらずやっていきたいなと興味が広がっています。もちろんずっと舞台に関わってきたし、お芝居は大好きで信じているものだからこれからもそれにまつわることがやりたいんですけど。でも一番やりたいことは自分が何かをしたことで周りの人がワクワクしたり、希望を感じたり、勇気を持てたりするようなこと。そこに自分の喜びがあるから、お芝居だけにこだわらず、もっと違う形でも誰かにワクワクしてもらうことはできるんじゃないかなと思っているところです。
この連載では、自分がやっていることだけではなく「こんなすごい人に会った」とか「こんな面白いものを見た」など、自分が出会った“思わず立ち上がって拍手を送りたくなる”人やもののことをお伝えできたら良いなと思っています。だから、ステージナタリーでの連載なのに、ステージに関係ない話をすることがあるかもしれません(笑)。何しろ今一番興味があるのは、パン! ……と言っても、お店を出したいという話ではなく、実はあるシェフと出会ったことで食べ物が人を幸せにする力の大きさを実感したんです。彼は食べ物を作るというよりパンを通じて人に幸せや物語を届けようとしていて、そこに自分がエンタテインメントに対して感じている思いとの共通点を感じました。もう1つ興味があるのは、アメリカやヨーロッパ。これまではアジアに対する興味のほうが強く、欧米は距離も遠いし、なんとなく敷居が高いような気がして敬遠していたんです。でも今はムクムクとやる気になっていて、欧米に対してポジティブにトライしたいと思っています。
ということで次回は、“エンタテインメントと食”というような切り口でお話しできたらと思います!
松田誠(マツダマコト)
演劇プロデューサー。一般社団法人 日本2.5次元ミュージカル協会の代表理事。6月にネルケプランニング代表取締役会長を退任し、7月にフリーとなって新たに世界に挑む。
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