さいたまゴールド・シアター最終公演「水の駅」の出演メンバーと杉原邦生(中央)。

さいたまゴールド・シアターとわたし 第7回 [バックナンバー]

これこそが、蜷川幸雄さんの目指した集団の姿なのだ

杉原邦生が見つめる、劇団としてのさいたまゴールド・シアター

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故・蜷川幸雄によって2006年に創設されたさいたまゴールド・シアター(以下ゴールド・シアター)が、今年12月に最終公演を迎える。高齢者のプロ劇団として、数々のレジェンドを生み出してきたゴールド・シアター。本連載では、その足跡をゴールド・シアターゆかりのアーティストたちの言葉によってたどる。第7回は、12月19日に開幕するさいたまゴールド・シアター最終公演「水の駅」で演出を担当する、杉原邦生が登場。「水の駅」の作者・太田省吾の教え子で、蜷川幸雄からも大きな影響を受けているという杉原は、ゴールド・シアターとの稽古を介して、2人の先達を思っていた。

この高齢者演劇集団は紛うことなき〈劇団〉なのだ

いままさに、さいたまゴールド・シアター最終公演「水の駅」に向けた稽古の日々で、この高齢者演劇集団は紛うことなき〈劇団〉なのだと感じています。

沈黙劇「水の駅」は、どこからともなく水場へやってきた人々が、把手の壊れた蛇口から細く流れつづける水に触れ、再びその場から去っていくというシンプルな構成の作品です。その構成ゆえに、全9シーンの稽古はシーンごとの割り稽古で進んできました。もちろん他のシーンの稽古を自主的に見学する俳優もいますし、数シーン連続して出演する役もあります。ですが、基本的には自分のシーンが終われば出番は終わりになるので、通し稽古をするまでは俳優が全体の流れを把握し、世界観を構築することは難しいと感じていました。

しかし、初の通し稽古でその予想は裏切られました。

おおよそ初めての通し稽古なんてものはうまくいくはずがない、という気持ちで臨むのですが、バラバラに稽古していたはずのシーンが不思議とひとつにつながっていくような感覚、通奏低音が流れつづけ、誰が何を言わずともバトンが確実に渡っていくような心地よさがありました。そうか、彼らは〈劇団〉なのだ、そう思いました。結成から15年という歳月の中で培われた〈劇団〉力を、まざまざと見せられたような気がしました。これこそが、蜷川幸雄さんの目指した集団の姿なのだと。

さいたまゴールド・シアター最終公演「水の駅」稽古より。

さいたまゴールド・シアター最終公演「水の駅」稽古より。

僕が学生時代だった頃、「水の駅」の作者であり恩師でもある太田省吾さんにこう言われたことがあります。

「君は劇団を作らないのか? 劇団を作るべきなんじゃないか」

太田さんに教えられたことはいまもずっと僕の活動の礎になっていますし、僕なりの解釈と方法で実践もしてきているつもりです。ですが、この言葉にだけ応答をせずにここまでやってきたことが、ゴールド・シアターの皆さんに出会ったことでいま、また少し気になりだしています。

蜷川さんの目指した〈劇団〉の最後の姿は、現代の観客の目にどう映るのでしょうか。ぜひたくさんの方に目撃していただきたい、そう願っています。

さいたまゴールド・シアター

さいたまゴールド・シアター(撮影:宮川舞子)

さいたまゴールド・シアター(撮影:宮川舞子)

2006年に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督だった蜷川幸雄により立ち上げられた高齢者劇団。創設時の平均年齢は66.7歳。その後、岩松了、ケラリーノ・サンドロヴィッチら多彩なアーティストとのコラボレーションを行うほか、海外にも活躍の場を広げる。2016年に蜷川が死去したあとも精力的に活動を行うが、12月に「水の駅」で活動を終える。

バックナンバー

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読者の反応

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彩の国さいたま芸術劇場<演劇> @Play_SAF

初日まであと2日!

いよいよ『#水の駅 』舞台稽古に突入しました。

#杉原邦生 さんに #さいたまゴールド・シアター の今を、ステージナタリーさんに寄せていただきました!

胸が熱くなります。

https://t.co/Gk6p2A9T4h

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