徘徊演劇「『よみちにひはくれない』浦和バージョン」より。(撮影:宮川舞子)

さいたまゴールド・シアターとわたし 第5回 [バックナンバー]

人生経験から育まれた演劇の力が、生活空間に逆流していった

菅原直樹が感じた“老いと演劇の希望”

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故・蜷川幸雄によって2006年に創設されたさいたまゴールド・シアター(以下ゴールド・シアター)が、今年12月に最終公演を迎える。高齢者のプロ劇団として、数々のレジェンドを生み出してきたゴールド・シアター。本連載では、その足跡をゴールド・シアターゆかりのアーティストたちの言葉によってたどる。第5回は、徘徊演劇「『よみちにひはくれない』浦和バージョン」日英国際共同制作「The Home オンライン版」を手がけた「老いと演劇」OiBokkeShi菅原直樹が登場。特別養護老人ホームの介護職員経験もある菅原が、ゴールド・シアターのメンバーたちから感じたと語る“老いと演劇の希望”とは?

生きている限り、等しく今は訪れる

「The Home オンライン版」映像作品より。

「The Home オンライン版」映像作品より。

ゴールド・シアターの皆さんとは、2018年に徘徊演劇「よみちにひはくれない」浦和バージョン、2021年に日英国際共同制作「The Home オンライン版」を作りました。1つは浦和の街をお客さんが俳優と一緒に歩き回って鑑賞する作品、もう1つはオンラインでお客さんが老人ホームの生活を疑似体験する作品、と両作品ともちょっと変わったタイプの演劇作品です。出演された方々は、最初は戸惑いがあったのではないかと思います(ぼく自身も戸惑いました)。しかし、ゴールド・シアターの皆さんの存在こそが、ぼくに「これでいける」という確信を与えてくれました。

「The Home オンライン版」映像作品より。

「The Home オンライン版」映像作品より。

「The Home オンライン版」映像作品より。

「The Home オンライン版」映像作品より。

それはおそらく、ゴールド・シアターの皆さんが演劇と生活をつなぎとめる力を十二分に発揮してくださったからだと思います。日常生活に大胆にフィクションを持ち込む力、画面越しのお客さんと一瞬で“いま・ここ”を共有してしまう力。蜷川さんとの演劇活動を通じて、それぞれの人生経験を生かしながら育まれた演劇の力が、堰を切ったように生活空間に逆流していく光景は、とても爽快で、感動的でした。

「The Home オンライン版」映像作品より。

「The Home オンライン版」映像作品より。

ゴールド・シアターの皆さんの作品作りに取り組むまなざしを見て思ったことがあります。生きている限り、等しく今は訪れる、ということです。足腰が弱っても、目がかすんでも、物忘れがあっても、自分の五感をフルに使って、今この瞬間を最大限に味わい尽くす。そういう姿勢を持ち続けるゴールド・シアターの皆さんは、とても若々しく感じられ、ユーモアがあふれています。老いと向き合い、苦しみ、もがき、新しい表現方法を見つけて果敢に挑戦し続けるその姿こそ、老いと演劇の希望だなと思いました。

今後のお一人おひとりの活動が楽しみでなりません。最後の最後まで、最高の今この瞬間を更新し続けてください。演劇ではないものも演劇にしてください。楽しみはこれからです。ぼくもまた皆さんと作品作りをご一緒できたらと思っています。

さいたまゴールド・シアター

さいたまゴールド・シアター(撮影:宮川舞子)

さいたまゴールド・シアター(撮影:宮川舞子)

2006年に埼玉・彩の国さいたま芸術劇場の芸術監督だった蜷川幸雄により立ち上げられた高齢者劇団。創設時の平均年齢は66.7歳。その後、岩松了、ケラリーノ・サンドロヴィッチら多彩なアーティストとのコラボレーションを行うほか、海外にも活躍の場を広げる。2016年に蜷川が死去した後も精力的に活動を行うが、12月に「水の駅」で活動を終える。

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彩の国さいたま芸術劇場<演劇> @Play_SAF

ステージナタリーさんでの連載。5回目はOiBokkeShiの菅原直樹さんです。

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