ゆっくりと客電が落ちると、フロアから歓声や拍手とともに、指笛の高らかな音が響く。オーディエンスの期待を浴びたさらさが歌い出したのは、ツアーのテーマ曲とも言える「Thinking of You」。空気をたっぷり含んだふくよかな声で、切なく甘い感情をささやくように歌い、集まった観客を酔わせた。オープニングナンバーで会場の心をつかんださらさは、バンドメンバーの紡ぐグルーヴィなアンサンブルに乗せて、シームレスに楽曲を披露。そのなめらかな“ライブ運び”に、O-EAST内に心地よくまったりとした空気が醸成されていく。
R&Bやロックといった複数のジャンルを内包した楽曲が特徴のさらさだが、ライブ前半ではジャジーなアプローチのナンバーも披露し、豊かな音楽性をアピール。エレキギターを弾きながら披露したデビューシングル「ネイルの島」では、哀切を帯びた艶かしい空気を紡ぎ、マイクスタンドにそっと触れながら歌い上げた「午後の光」では狂おしい感情をその歌声で表現する。「Virgo」では舞台面に腰をかけ、ファンとの近い距離感を楽しみながらパフォーマンスを繰り広げるなど、楽曲ごとに異なるめくるめく世界を描き出した。
吐息混じりの歌声が印象的な「Virgo」の余韻が残る中、さらさは別れが多かったという2024年と2025年のことを述懐。「生まれたら別れはつきもので、文字通りの死もあれば、関係性における死もあった」と出会いと別れの無情さを言葉ににじませる。当初「Thinking of You Tour 2025」の装飾を依頼していたクリエイターとの突然の別れにも触れ、「人の人生がもし決まってるとしたら、その限られた時間の中で出会えたこと、その人の人生の中に自分がいることに感激したいと思って曲を書きました」と口にすると、朝焼けのようなライティングの中で「祝福」を歌い出した。オーディエンスは、オルガンのような音色の上で響く、喜びと悲しみの両方を帯びたさらさの歌声を固唾をのんで聴き入った。続く「朝」でオーディエンスとのコール&レスポンスがたっぷり繰り広げられたあとは、ライブも終盤へ。躍動感あふれる「リズム」を皮切りに、BPMの高いアップテンポな楽曲が会場を揺らした。
「今日、折り紙してたの! あげる!」とアンコールが始まるなり、手折りの花をフロアに投げ込んださらさ。クールな歌声とチャーミングな素顔とのギャップに、観客の顔もほころぶ。そんな中、「アンコールは決まってません!」と、ワンマンライブでは恒例という観客のリクエストでアンコール曲を決めることを説明する。
なお、これまでは各々が好きな曲を叫ぶスタイルだったが、動員が増える中で収集がつかなくなった模様。この日はさらさ厳選の3曲(「Thinking of You」「太陽が昇るまで」「朝」)の中から選ぶスタイルだったが、それでもあちこちから声が飛び交い混沌とした状態に。そして「Thinking of You」と「朝」の“一騎打ち”の結果、「朝」が選ばれ、さらさは本編に続きこの曲をおかわり。2回目の披露とあってリラックスした雰囲気を醸し出しながら、ファンとのコール&レスポンスもしっかり堪能。本編よりも大きなレスポンスに「バッチリ! みんな歌手になれるよ」と満面の笑みを浮かべた。
ラストナンバーは、前回のツアーでもリクエストが多かったという「船」。さらさは「みんなにまたいいものを届けられるよう、パワーを溜めて過ごすので、今後ともよろしくお願いします!」とファンに約束すると、「進む進む ここで誓う まだやめないわ」「君はいれば息ができる 運命だと船が歌う」といった飛躍を予感させるフレーズを、観客1人ひとりに語りかけるようにじっくりと歌い上げた。
セットリスト
さらさ「Salasa Thinking of You Tour 2025」2025年11月19日 Spotify O-EAST
01. Thinking of You
02. 太陽が昇るまで
03. 祈り
04. Roulette
05. 温度
06. ネイルの島
07. feel down
08. 青い太陽
09. 午後の光
10. グレーゾーン
11. 予感
12. Virgo
13. 祝福
14. 朝
15. リズム
16. Shakunetsu
17. 退屈
18. Amber
<アンコール>
19. 朝
20. 船
関連人物
Lubna @lubner6
@natalie_mu ツアー完走おめでとう!豊潤な歌声って表現だけで惹かれるね🎙✨