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さらさ「Thinking of You」ジャケ写

さらさ Thinking of You

踊るように受け止める“すれ違いや絡み合い”

文 / 黒田隆憲

燃えるような恋の情熱と、終わりゆく季節の余熱が交錯する──シンガーソングライターさらさによる新曲は、11月に始まる東名阪ワンマンツアー「Thinking of You TOUR 2025」のタイトルにも掲げられており、彼女の今のモードを象徴する1曲と言っていいだろう。アレンジにはKota Matsukawa、Reo Anzai、Ryuju Tanoueというw.a.uの面々が参加。これまでも彼女をはじめ、おかもとえみら多くのアーティストとコラボレーションを積極的に行う傍ら、都内クラブシーンでの活動でも認知を広げてきたクリエイティブコレクティブが、この曲のサウンドスケープを豊かな陰影とともに立ち上がらせている。

心地よいドラムに導かれ、イントロから鳴り響くストリングスにはどこかスリリングな切迫感があり、中盤から軽快に刻まれるアコースティックギターのストロークと、ラテンのフレーバーを感じさせるドラミング、シンコペーションを効かせたベースラインが緊張と熱を同時に伝えてくる。これは単なる“恋の歌”ではなく、すれ違い、絡み合い、あるいは言葉にならなかった思いの行間を、身体の芯で踊るように受け止める楽曲なのだ。

「絡まったまま踊り続けてる 夜が溶けるまで」「永遠に燃える恋」といったリリックは、その情熱的な言葉遣いとは裏腹に、さらさの歌声に乗ることで、どこかはかなく、くぐもった印象を聴き手に与える。むしろ、熱よりも“揺らぎ”が残るその声は、スモーキーかつ濡れていて、時にアンサンブルの一部として風景ににじみ込みながら、決して中心を手放さない。終盤、ギターソロとともに静かにフェードアウトしていくアンサンブルも絶妙な余韻を残す。

11月からの「Thinking of You TOUR 2025」では、この曲がどう立ち上がり、どんな余韻を持って響いていくのか。おそらく、それはステージごとに異なる表情を見せるだろう。なぜならこの歌は、“今、この瞬間の感情”にこそ寄り添う楽曲だから。悲しみや戸惑い、歓喜や執着──そのすべてを否定せず、音楽という形で差し出すこと。それは、歌う者にとっても、聴く者にとっても、生きることと等しく重い意味を持っている。

さらさ「Thinking of You」MV

さらさ「Thinking of You」
2025年10月22日(水)配信開始 / salasa_live_bluesy
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作詞・作曲:さらさ
編曲:Kota Matsukawa、Reo Anzai、Ryuju Tanoue

さらさ

さらさ

湘南出身のシンガーソングライター。ソウル、R&B、ロックなど、さまざまなジャンルを内包した楽曲や憂いを帯びた歌声で注目を浴びている。2021年7月にデビューシングル「ネイルの島」をリリースし、本格的に活動を開始。デビューからわずか1年で「FUJI ROCK FESTIVAL '22」出演を果たし、2022年12月には1stアルバム「Inner Ocean」をリリースした。その後「GREENROOM FESTIVAL」「朝霧JAM」「岩壁音楽祭」、台湾の「LUCFest」や韓国の「ASIA SONG FESTIVAL」など、国内外の大型フェスに多数出演。音楽活動だけに留まらず、美術作家、アパレルブランドのバイヤー、フラダンサーなどマルチに活動を展開している。2024年9月には東名阪を回るツアーを開催し、東京・LIQUIDROOM公演をソールドアウトさせた。2025年10月に新曲 「Thinking of You」を発表し、翌11月に東名阪ワンマンツアー「さらさ Thinking of You Tour 2025」を行う。