所属事務所であるMAVERICK DC GROUPのイベントや、SORA(Dr)がオーガナイズしたイベント「V系って知ってる?」などで武道館ライブは経験済みのDEZERTだが、単独でそのステージに立つのはこれが初めて。2023年9月に開催を発表して以降、この日に照準を合わせ、メジャーデビューという大きな節目も経つつ、精力的すぎるほどにリリースやライブを重ねてきた。そんなDEZERTの一世一代の大舞台を見届けようと、全国各地から約6000人のファンが駆け付けた。
「生きててよかった。そんな夜をあなたと歌いにきました」
SEのThe Beatles「Yesterday」が醸していたノスタルジックな空気を断ち切るように、不意に客電が落ちライブの幕が上がる。ステージを貫くように設置された縦長のスクリーンに心臓を模した映像が浮かび上がり、耳をつんざくような歓声が沸く中、まずはSORAがゆったりとした足取りでドラムの前へ。それにMiyako(G)、Sacchan(B)と続き、最後に千秋(Vo)が現れ「生きててよかった。そんな夜をあなたと歌いにきました。DEZERT始めます。気合い入れてかかってこい!」と咆哮する。そして炎が激しく上がる演出とともに最新曲の1つである「心臓に吠える」を絶唱。その激しいサウンドに応酬すべくオーディエンスはヘッドバンギングを繰り出し、さっそく壮観な景色を武道館に描いた。
序盤からオーディエンスは最高潮の盛り上がりを見せるが、千秋は2曲目の「君の脊髄が踊る頃に」を歌い終えるや否や、息を弾ませながら「長い夜になるよ。一生に一度の長い夜になるよ」と宣言。結成初期のナンバーである「Sister」を皮切りに、「匿名の神様」や「ミスターショットガンガール」など新旧の楽曲が入り乱れたブロックへと突き進む。いずれの楽曲も武道館ならではの映像や照明、時には特効も交えた演出が取り入れられ、これまでDEZERTが生み出し続けていた作品が解像度高く、ダイレクトに視覚と肉体に訴える形で届けられていく。単独公演は初めてだが、何度も武道館に立ってきたというだけあってメンバーの佇まいは堂々としたもの。千秋は美醜両方の世界観を表現する声の魅力を存分に発揮しながら、独壇場とも言えるトークでもオーディエンスを圧倒。Miyakoは時に笑みを浮かべがならバリエーションに富んだ音色を奏で、Sacchanはリーダーらしい盤石の低音で楽曲の根幹を支え、熱血漢のSORAは途中からジャケットを脱ぎ、上半身裸のまま渾身のビートで客席を揺らす。互いへの信頼感がにじみ出る一枚岩のアンサンブルを轟かせ、オーディエンスのテンションを引き上げた。
「君のおかげです。君がいるからライブをしている」
近年はストレートなメッセージソングも発表しているDEZERTだが、初期の楽曲には過激でグロテスクな表現のものも。千秋の「メンバーの親も来ているので非常にやりづらい」という言葉で始まった「ストロベリー・シンドローム」では、「大事なトコロが裂けた」という際どいフレーズのコール&レスポンスが盛大に行われ、続く「『変態』」でも「ヘンタイ」コールが巻き起こり、神聖な行事も多数執り行われている武道館内に異様な光景が広がる事態に。しかし、「やりづらい」と言いながらも4人は手加減なしの振り切ったステージを展開し続けた。
ライブの後半戦ではSacchanが奏でるピアノに乗せて、千秋が「私の詩」につづった切実な思いを歌い観客の胸を打つ場面も。その一方で、「『君の子宮を触る』」では感動的なムードを払拭する攻撃性全開のサウンドを轟かせ、直後に続いた「再教育」ではオーディエンスをひたすら煽り続ける。2011年の結成から自分たちの力で武道館に立つまでの13年超、さまざまな変遷を経てきたバンドならではの広すぎる振り幅の楽曲を大舞台でも惜しみなく披露した。
Miyakoの奏でる美しい旋律に乗せて、「この武道館にはいろんなアーティストが立ってきているけれど、ここに未来はない。確実にあるのは今と過去だけ。だから13年の歴史で武道館というのはすごく重みがあると思う」と言葉に力を込めた千秋。ここまでの紆余曲折、悲喜交交を回顧しながら、「1人ひとりに歌おうと。来てくれた人のために、君のために歌おうと思ってきました」「君のおかげです。君がいるからライブをしている」と、観客1人ひとりと1対1で向き合うように歌ってきたことを明かした。そして「毎回君たちに人生を教えてもらってます。だからこれからも助けて……そう言うことはダサいけど、(僕らは)それでがんばれるから」「あなたがいてくれてよかった、君がいてくれてよかった、そう思って歌ってると15周年、20周年、30周年、40周年、まだまだ君と生きていける気がする。未来はここにはないと言ったが、今日は少し未来に触れたい。特別な日に君と会えてよかった」と、DEZERTのターニングポイントとなった2018年リリースの「TODAY」へとつなげた。まばゆい光がステージを照らす中、Miyako、Sacchan、SORAは晴れやかな表情で観客の前に立ち、楽器を繰りながら千秋が紡いだ歌詞を口ずさむ。千秋は「ここが出発点」と高らかに歌い叫び、DEZERTがこれからも前進し続けることを宣言した。
アンコールではMiyako、SORAがそれぞれの言葉でファンに感謝の言葉を述べ、Sacchanが客電が点く中で大正製薬とのコラボレーションで用意されたキャノン砲を唐突に発射。「はい50万」と淡々と言い放つその姿に、メンバーは苦笑いし、オーディエンスは大笑いする事態となった。アンコール1曲目は、2017年以来ライブで時折披露されてはいたものの音源化はせず、記念すべきこの日に来場者に配布された曲「オーディナリー」。4人はSORAを中心に向かい合うと、それぞれの音を重ね、大切に温め続けた1曲を丁寧にオーディエンスに届けた。だが、このまま感動的なムードでフィナーレを迎えないのがDEZERT。一瞬でギアを切り替えた彼らは、「『殺意』」「『秘密』」「『切断』」という初期3曲を怒涛のように叩き込み、オーディエンスのエネルギーを枯渇させるレベルで大暴れさせる。最後に4人は肩を組み、写真に収まるという、およそ“らしくない”姿を見せつつ、念願であった武道館ワンマンライブに幕を引いた。
なおこの日の模様は来春U-NEXTで配信されることが決定している。ファンは詳細をお楽しみに。
※本文中の「『変態』「『遺書。』」「『君の子宮を触る』」「『殺意』」「『秘密』」「『切断』」の『』は一重カッコが正式表記。
セットリスト
DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」2024年12月27日 日本武道館
01. 心臓に吠える
02. 君の脊髄が踊る頃に
03. Sister
04. 匿名の神様
05. ミスターショットガンガール
06. Call of Rescue
07. さぁミルクを飲みましょう。
08. 神経と重力
09. ストロベリー・シンドローム
10. 「変態」
11. 私の詩
12. ミザリィレインボウ
13. 僕等の夜について
14. 「遺書。」
15. 「君の子宮を触る」
16. 再教育
17. TODAY
<アンコール>
18. オーディナリー
19. 「殺意」
20. 「秘密」
21. 「切断」
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▼ DEZERT SPECIAL ONEMAN LIVE at NIPPON BUDOKAN「君の心臓を触る」
2024.12.27 日本武道館
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