hideは
命日のワンマンライブから約3カ月、豊洲PITにて追加公演が行われたこの日の東京は気温36℃超えの猛暑日。豊洲PITの周辺には、赤やピンクの派手な髪色をしたhideファン、hideのぬいぐるみを持ったファンなどが続々と集まってくる。炎天下でも気合いの入ったファッションで決めたファンたちの様子から、このワンマンライブを心待ちにしていたことが窺えた。会場では開演前に木村世治(ZEPPET STORE)のDJタイムがあり、木村はKiss「ROCKET RIDE」、Marilyn Manson「Beautiful People」、T-Rex「20th Century Boy」、そしてThe Damned「New Rose」と、“hide”をテーマにした楽曲を次々にスピンして、フロアを盛り上げた。木村はさらにオープニングアクトとしても登場し、hideが愛したZEPPET STOREの楽曲「FLAKE」を弾き語り。「なんと言ったって今日がファイナルですから、楽しんでいきましょう!」と元気よく呼びかけつつ、小さな声で「個人的にね、“また会える”んじゃないかなって。“神のみぞ知る”だけどね」とつぶやき、1996年発表の「声」を届けた。
木村がステージを去ったあと、「HURRY GO ROUND」のインストゥルメンタル音源が流れ、スクリーンには1997年当時のhideが翌年に始動させることになるhide with Spread Beaverの展望を語る様子や、1998年1月の「ROCKET DIVE」ミュージックビデオのオフショット、5月に訪れた突然の旅立ちなどを回想する映像、hideの遺志を継いで3rdアルバム「Ja,Zoo」を完成させようと奮闘するSpread Beaverメンバーのオフショット、フロントマンであるhide不在で行われた「Tribal Ja,Zoo」ツアーのダイジェスト、その後のhide関連のイベントの模様などが順番に映し出された。映像が終わり、キーボードのタイプ音とダイヤルアップ接続音が流れ、カラフルな照明がステージを照らす。中央にはhideが愛用したギター、“イエローハート”が鎮座。ドラムンベースのインストナンバー「SPREAD BEAVER」をオープニングSEにメンバーが続々と登場すると、歓声が沸き起こる。ライブへの期待を高めるオープニングから、「ROCKET DIVE」になだれ込み、ステージ後方からは多数のレーザーが。Aメロが始まるとhideの映像がスクリーンに流れ、hideの歌声がフロアに響き渡る。豊洲PITでいよいよ“雲の上との2元中継”が始まった。なおメンバーそれぞれアグレッシブなパフォーマンスを見せていたが、中でもD.I.E.はライブ序盤からフルスロットル。ショルダーキーボードを抱え、突撃体制でステージを動き回った。
バンドは続けて、「BACTERIA」「DOUBT'97(MIXED LEMONed JELLY MIX)」と激しい楽曲を連投。hideの「お客さん! やっちゃってくださいな!」というMCに続いて、KIYOSHIが「今日もお助け怪人がいます、知ってるよね? On guitar 石塚智昭!」とPATAの本名を呼んだ。PATAは、朗らかな表情を浮かべつつも轟音を鳴らしながら舞台に上がり、まず「CELEBRATION」のロックンロールなリフを演奏。この曲ではスクリーンに拡声器を片手に歌うhideの姿が映し出された。続くMCでは髪の一部を緑と赤に染めて“スイカ頭”になったI.N.A.がコメント。彼が「25年ぶりのワンマンライブということで、大阪、神奈川とやってきまして、東京ファイナルでございます。全員で“雲の上のhideちゃん”とつながって、楽しんでいこうぜ! やっちゃってくれますか!」とフロアを煽ると、観客は大きな声でhideの名前を叫んだ。
ステージのイエローハートギターにピンク色のライトが当たり、「限界破裂」がスタート。演奏中にはhideとの共演経験もある舞踏グループ・友惠しづねと白桃房のダンサーがセクシーな衣装を着て登場し、怪しげに舞った。エモーショナルなミディアムチューン「FLAME」のあとには、雷雨の音が流れる中でD.I.E.がピアノを弾き始める。ここではhideがこの世を去ったあとに発売された人気曲「ピンク スパイダー」の続編にして、hideのボーカルトラックが存在せず、歌詞のみ残っていた楽曲「PINK CLOUD ASSEMBLY」の“hideボーカルver”が届けられ、流れるように「ピンク スパイダー」のパフォーマンスに移った。なお「PINK CLOUD ASSEMBLY」の“hideボーカルver”は、hideの音声データを組み合わせるというI.N.A.のプロデュースワークによって生まれたバージョンだ。さまざまな技術を駆使した演出と遊び心のある演出を織り交ぜたライブが続き、ヘビーなインダストリアルナンバー「POSE」のイントロでは、スクリーンに表示される卓球のCGに合わせて、CHIROLYNとD.I.E.が大きなラケットを持ってラリーをしてみせる。この2人はhideから“金角と銀角”と呼ばれた、Spread Beaverでも特にキャラの濃い人物だ。
ライブ後半、キャッチーなロックチューン「BEAUTY & STUPID」ではカラフルなアフロヘアのウィッグを被ったダンサーたちが登場し、ステージに華を添えた。D.I.E.が即興演奏風のピアノ演奏をし、始まったのは「EYES LOVE YOU」。同曲は1993年に「50%&50%」と同時リリース発表されたhideのソロデビューシングルだ。この2曲は森雪之丞が作詞を手がけた。「EYES LOVE YOU」のギターソロでは、スクリーンの中のhideが、X(現X JAPAN)で活動をともにしたベーシスト・TAIJIから教わったという“ボスハンド(ライトハンド、タッピング)奏法”を披露した。hideの優しさが詰まったポジティブなナンバー「MISERY」の演奏後、KIYOSHIは「熱中症大丈夫か! まだまだいくぞ!」と観客に呼びかける。スクリーンの中のhideが「私にはわかる。お客さんたちまだ遊び足りないアルよ。遊び足りねーよ! 遊ばせろー! 気を付けて遊べよ」と観客に呼びかけてから、「FISH SCRATCH FEVER」へ。フロアには風船、サメの浮き輪が飛び交い、メンバーの直筆サイン入りボールが投げ込まれた。またマグロの大きなクッションを抱えたD.I.E.に突然マイクを向けられたPATAが「お前らよ、もう少し大きい声出せよ!」と煽るというレアな場面もありつつ、この曲では“脳年齢測定ゲーム”と称したコール&レスポンスなどで大いに盛り上がった。
KIYOSHIは「雲の上との2元中継、楽しんでますか?」と観客に呼びかけ、hide with Spread BeaverとPATAの出演するこのワンマンライブが、昨年公開された映画「TELL ME ~hideと見た景色~」をきっかけに実現したことを振り返る。そしてhide実弟の松本裕士氏(ヘッドワックスオーガナイゼーション代表取締役)に向けて「ヒロシのおかげ。あいつ、がんばったんだよ」と述べた。さらにセットリストの作成などで、hideの思いを汲み取ってリードするI.N.A.への感謝も口にした。KIYOSHIはさらに「みんなhideが大好きで大好きで、hideっていう病気なんだよ。俺たちhideっていうクラスターなんだよ。もっと感染して愛し合おうぜ! 熱いぜ東京! hide! ロックンロールするぞ!」と勢いを付けて観客を煽る。hide with Spread BeaverとPATAは熱狂するオーディエンスに向けて「ever free」を演奏し、熱くライブを締めくくった。
転換タイムに入り、インストナンバー「OEDO COWBOYS」が流れる。この曲はhideがザ・ドリフターズによる人気番組「8時だョ!全員集合」の楽曲「盆回り」をイメージして制作した楽曲で、スクリーンには同曲に乗せて、過去のhideツアーの楽屋の様子が映し出された。約15分の転換を経て、メンバーがツアーグッズのTシャツを着て登場。柔らかなシンセストリングスの音が鳴り響き、スクリーンのhideが「ロザンナさーん!」と言うと、ステージにはCHIROLYN扮する女性キャラクター・ロザンナが。彼女は「元気だった? あたしがロザンナよ! 25年ぶり! おひさしぶり! ちょっと胸が小さくなったけど、ご愛嬌。悔いのないように楽しむのよ!」と観客に呼びかけ、“hideとロザンナ”のコンビで「LEMONed I Scream」をデュエットした。この曲では映画「TELL ME」でCHIROLYN役を務めたSHINGO☆(シンゴスター / SEX MACHINEGUNS)が1998年当時のCHIROLYNを思わせる格好をしてベーシストとして参加するというサプライズ演出も用意された。
ロザンナは、SHINGO☆を送り出してから「もう月日も経って、“大ギャル”になりましたけど、気持ちは“子 ギャル”なんで」と話して笑いを誘う。そんな言葉に続き、幻の楽曲「子 ギャル」が披露された。この曲は3rdアルバム「Ja,Zoo」に収録される予定だったが、歌詞のみ存在し、hideのボーカルトラックが残されていなかったため幻の楽曲とされていた。1998年のツアーでは同年11月の北海道・Zepp Sapporo公演でのみ演奏されたが、当時はCHIROLYNがボーカルを取るスタイルだった。2014年にはボーカロイド技術をもとに、I.N.A.の緻密な作業によって生まれた“hideロイド”音声を駆使したバージョンが音源化された。ライブはさらに続き、メンバーの紹介映像が流れたあと、PATAによるアコースティックギターのバッキングから、hideの優しい歌声が印象的な「HURRY GO ROUND」へ。メンバーは在りし日のhideの映像をバックに、気持ちのこもった演奏を観客に届けた。その後、エッジの効いたロックチューン「DICE」でK.A.Zが寡黙にギターをかき鳴らすなど、ストイックなプレイで観客を魅了した。
アンコール終盤、CHIROLYNが「hide! ラストだからね。もうこれが最後だから!」と呼びかける中、PATAはステージ中央にあったhideのギター・イエローハートを手に取り、そのままストラップを肩にかける。ワンマンライブを締めくくる楽曲「TELL ME」では、PATAがイエローハートを演奏するというサプライズが用意され、ファンは熱狂。なお、このイエローハートはhide本人が実際に使用していたもので、ライブで音が出されるのは1997年12月31日に東京・東京ドームで行われたX JAPANの解散ライブ「THE LAST LIVE」以来、実に25年7カ月ぶりのことだ。PATAは相棒であるhideのギターで、スクリーンに映るhideとともにツインリードのソロを奏でた。演奏後、PATAはhideのギターをスタンドに置き、ボディを手で軽くなぞってからしばらく後ろを向いていた。最後はメンバー全員で手をつなぎ、万歳。観客は「hideー!」と何度も叫び、愛すべきロックスターへの思いを爆発させた。去り際にPATAは「俺も楽しみましたわ。ありがとうございました!」と感謝を述べ、KIYOSHIとCHIROLYNが尻を見せながら退場。そしてI.N.A.がイエローハートをだいじそうに抱え、スクリーンに映るhideにギターを掲げてから、ステージをあとにした。オーディエンスの歓声とともに、hideとの“雲の上との2元中継”は終了した。本公演の模様は8月3日18:00~8月16日23:59の期間中、uP!!!にてアーカイブ配信される。
なお12月10日には神奈川・CLUB CITTA'にてhideのバースデーイベント「hide Birthday Party 2023」が行われる。さらにhideの誕生日にあたる12月13日には25年ぶりのワンマンライブに密着したドキュメンタリーフォトブック「hide 30th solo debut & hide with Spread Beaver appear!! Anniversary Photobook」が発売される。
hide with Spread Beaver「hide Memorial Day 2023 "hide with Spread Beaver appear!! in TOKYO"」2023年7月27日 豊洲PIT セットリスト
木村世治(ZEPPET STORE)
01. FLAKE
02. 声
hide with Spread Beaver
SE. SPREAD BEAVER
01. ROCKET DIVE
02. BACTERIA
03. DOUBT'97(MIXED LEMONed JELLY MIX)
04. CELEBRATION
05. 限界破裂
06. FLAME
07. PINK CLOUD ASSEMBLY~ピンク スパイダー
08. POSE
09. BEAUTY & STUPID
10. EYES LOVE YOU(DEATH HOLLYWOOD ver)~EYES LOVE YOU
11. MISERY
12. FISH SCRATCH FEVER
13. ever free
<アンコール>
14. LEMONed I Scream
15. 子 ギャル
16. HURRY GO ROUND
17. DICE
18. TELL ME
SE. Junk Story
hide Birthday Party 2023
2023年12月10日(日)神奈川県 CLUB CITTA'
<出演者>
hide(X JAPAN、hide with Spread Beaver)
Chirolyn(hide with Spread Beaver)/ defspiral / DIE (hide with Spread Beaver、Ra:IN)/ DJ-INA /
※記事初出時より、一部表現を変更しました。
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ー2023年 #hide ソロデビュー30周年ー
7/27(木)に開催されたhide with Spread Beaver 25年ぶり待望のワンマンライブ 東京公演
\アーカイブ配信中⚡️/
■配信期間:8/16(水) 23:59まで
1997年12月31日に東京ドーム で行われたX JAPAN「THE LAST… https://t.co/icK8ZNtJk9 https://t.co/djCumshf6K https://t.co/fHecDhYc6C