フィッシュマンズの歴史をたどる2DAYSワンマン、鈴木真海子や小宮山聖も迎えて新たなバンドの姿を示す

20

392

この記事に関するナタリー公式アカウントの投稿が、SNS上でシェア / いいねされた数の合計です。

  • 78 281
  • 33 シェア

フィッシュマンズが3月1、2日に東京・LIQUIDROOMでワンマンライブ「HISTORY Of Fishmans」を開催した。

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)

大きなサイズで見る(全10件)

昨年デビュー30周年を迎え、ドキュメンタリー映画「映画:フィッシュマンズ」が公開されたことに伴い、再びバンド活動を活発化させているフィッシュマンズ。「HISTORY Of Fishmans」はバンドにとって約6年ぶりの単独公演であり、「[Day.1] 1991-1994」「[Day.2] 1995-1998」というサブタイトルの通り、楽曲の発表年で分けたセットリストによりバンドの歴史をたどるというコンセプトで行われた。LIQUIDROOMと言えば、26年前の1996年3月2日には新宿のLIQUIDROOMでワンマンライブ「若いながらも歴史あり」が行われており、今回のライブタイトルやコンセプトはそれを踏まえたものだろう。ライブの曲間には茂木欣一(Dr, Vo)が中心になって、佐藤伸治ありし日の思い出話に花を咲かせた。

[Day.1] 1991-1994

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:西槇太一)[拡大]

チケットがソールドアウトし、当時のファンから若いリスナーまで幅広い客層でにぎわうLIQUIDROOM。開演前のDJをバンドのオリジナルメンバーである小嶋謙介とエンジニアのZAKが担当し、フィッシュマンズに影響を与えたアーティストの楽曲でライブに向けたムードを作り上げる。そんな中、フィッシュマンズのライブのオープニングナンバーとしてお馴染みの「Oh! crime」が流れると、茂木、柏原譲(B)、HAKASE-SUN(Key / LITTLE TEMPOOKI DUB AINU BAND)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)、関口 ”dARTs" 道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)がステージに登場。茂木はメンバー1人ひとりを紹介し、2007年9月に亡くなったバイオリニストのHONZI、そして1999年3月にこの世を去った佐藤の名も挙げた。温かい拍手の中、演奏を開始したフィッシュマンズは、初期のレゲエナンバー「チャンス」を皮切りに、「いなごが飛んでる」「ひこうき」とポップなナンバーを次々と披露。軽快なバンドの演奏に合わせて観客は心地よさそうに体を揺らし、茂木も「めちゃめちゃ気持ちいいな……」と笑う。原田がメインボーカルを担当した「いい言葉ちょうだい」でムードを変えたフィッシュマンズは「土曜日の夜」を続けてプレイ。この曲のアウトロでは白熱のセッションが展開され、演奏が終わるとひと際大きな拍手が起こった。

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

レアなナンバー「疲れない人」も織り交ぜつつ、「頼りない天使」「救われる気持ち」など前期の代表的な楽曲を次々と届けていくフィッシュマンズ。「Blue Summer」はバンド結成時に佐藤がデモテープを持ってきたという最初期のナンバーであり、茂木はそのデモテープに衝撃を受けた思い出を振り返り、「2022年3月に演奏しても、ものすごく心を持ってかれるし、ずっとこの音楽を届けたいなという気持ちになってます」と語った。またフィッシュマンズが1987年の結成から1991年のデビューまでに4年かかっていることに触れた茂木は、その期間の楽曲を披露する「HISTORY Of Fishmans:La.mama編」も開催したいと発言。彼らが所属した明治学院大学のサークル・ソングライツに話に及ぶと、ソングライツ時代のヒット曲の演奏になだれ込み、この曲は同サークルに所属していたチバユウスケ(The Birthday)も歌えるはずだという小ネタも交えて観客を喜ばせた。

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.1] 1991-1994」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

鈴木真海子(chelmico)を迎えた「Just Thing」の様子。(撮影:西槇太一)

鈴木真海子(chelmico)を迎えた「Just Thing」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

MC後、ドラマのタイアップ曲となるもヒットしなかったというエピソードが「映画:フィッシュマンズ」で語られた「100ミリちょっとの」や、HAKASE-SUN作詞作曲の「オアシスへようこそ」などを演奏したフィッシュマンズは、「感謝(驚)」に続けて前期の代表曲「いかれたBaby」を披露。ここでステージをあとにするが、鳴り止まない拍手に応じて再び現れると、スペシャルゲストの鈴木真海子(chelmico)を迎え入れる。フィッシュマンズの大ファンだという彼女は「Just Thing」でバンドとコラボ。緊張した様子を見せつつも、バンドの演奏に乗せて堂々とラップし、楽曲に新たな彩りを加えた。さらに「Smilin' days, Summer Holiday」では原田がオートチューンを駆使して歌唱。大胆なアレンジでバンドを続けていく意義を示したフィッシュマンズは、最後に「夜の想い」で静謐なムードを作り上げ、1日目の公演を締めくくった。

[Day.2] 1995-1998

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

デビュー以降、作品を重ねるごとに音楽的な進化を遂げ、世界的に評価される唯一無二の個性を確立していったフィッシュマンズ。前期と後期では音楽性が大きく異なり、後期の曲が披露される2日目は、開演前からして1日目とは雰囲気が違い、どこか神妙なムードが漂っていた。そこへ前日と同じ編成で現れたフィッシュマンズは、佐藤が生前書き下ろした最後の作品と言われる「A Piece Of Future」で演奏を開始すると、後期の代表曲の1つである「すばらしくてNICE CHOICE」を早速演奏。とろけるようなボーカルとサウンドでLIQUIDROOMを包み込んでいく。

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

「MAGIC LOVE」では木暮と関口がアグレッシブなギタープレイをぶつけ合って観客を沸かせる場面もありつつ、2日目のライブは浮遊感あふれるスロウナンバーが中心。「バックビートにのっかって」「BABY BLUE」「SLOW DAYS」「ずっと前」といった楽曲に新たなアレンジを加えつつ、フィッシュマンズはじっくりとした演奏で重厚なグルーヴを生み出していく。「1曲1曲好きな曲しかなくて、噛み締めてます」と語った原田がアコースティックギターを手に取ると、彼女の弾き語りから「IN THE FLIGHT」へ。観客はその演奏にじっと聴き入り、心を浄化するような音に浸った。ライブ終盤、「WALKING IN THE RHYTHM」「Weather Report」で強烈なトリップ感をもたらしたフィッシュマンズは「SEASON」からバンドの代名詞と言える「ナイトクルージング」につなげ、ライブ本編を終えた。

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」の様子。(撮影:西槇太一)[拡大]

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」出演者(撮影:西槇太一)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans [Day.2] 1995-1998」出演者(撮影:西槇太一)[拡大]

その後のアンコールには、ソングライツのメンバーとして古くから親交があり、フィッシュマンズのライブツアーにも参加していたザ・カスタネッツの小宮山聖が登場。当時のエピソードを振り返りつつ、フィッシュマンズは小宮山とともにデビュー曲「ひこうき」を1998年のライブツアー「男達の別れ」のアレンジで披露した。「男達の別れ」と言えば、映画でも映像が使用された佐藤のギターソロが印象的だが、この日のライブでは小宮山が熱いソロプレイを繰り広げたかと思えば、木暮とギターバトルを展開。そこに関口までもが加わって、熱狂的な盛り上がりを生み出した。そしてフィッシュマンズは2日間のライブを締めくくるナンバーとして「新しい人」を演奏。大きな拍手の中、改めてバンドメンバーを紹介した茂木は「こんなに夢中にさせてくれる曲をたくさん作った佐藤伸治すごいね」と笑い、「今回は次のレベルっていうか、何か新しいところに行くフィッシュマンズを伝えられたらなという思いでがんばってみました。またライブで新しい音、表現を伝えられたらいいなと思っています」と今後の活動への意気込みを語った。

なおStreaming+では本公演のアーカイブ映像を有料配信中。1日目のアーカイブは3月7日、2日目のアーカイブは3月8日まで視聴できる。またWOWOWでは「2カ月連続!デビュー30周年ライブ放送記念 フィッシュマンズ特集」として、佐藤の命日である3月15日(火)に映画「映画:フィッシュマンズ」とドキュメンタリー「THE LONG SEASON REVUE」、4月29日(金・祝)に今回のワンマンライブの模様が放送される。

この記事の画像(全10件)

フィッシュマンズ「HISTORY Of Fishmans」2022年3月1、2日 LIQUIDROOM セットリスト

[Day.1] 1991-1994

01. Oh! crime
02. チャンス
03. いなごが飛んでる
04. ひこうき
05. いい言葉ちょうだい
06. 土曜日の夜
07. RUNNING MAN
08. 頼りない天使
09. 疲れない人
10. 救われる気持ち
11. Blue Summer
12. 100ミリちょっとの
13. Go Go Round This World!
14. 気分
15. オアシスへようこそ
16. 感謝(驚)
17. いかれたBaby
<アンコール>
18. Just Thing
19. Smilin' days, Summer Holiday
20. 夜の想い

[Day.2] 1995-1998

01. A Piece Of Future
02. すばらしくてNICE CHOICE
03. MAGIC LOVE
04. バックビートにのっかって
05. BABY BLUE
06. SLOW DAYS
07. ずっと前
08. IN THE FLIGHT
09. WALKING IN THE RHYTHM
10. Weather Report
11. SEASON
12. ナイトクルージング
<アンコール>
13. ひこうき
14. 新しい人

WOWOWライブ / WOWOWオンデマンド「2カ月連続!デビュー30周年ライブ放送記念 フィッシュマンズ特集」

映画:フィッシュマンズ

2022年3月15日(火)19:30~

THE LONG SEASON REVUE

2022年3月15日(火)22:30~

フィッシュマンズ “HISTORY Of Fishmans” [Day.1] 1991-1994 / [Day.2] 1995-1998

2022年4月29日(金・祝)21:00~

全文を表示

読者の反応

showgunn @showgunn

【ライブレポート】フィッシュマンズの歴史をたどる2DAYSワンマン、鈴木真海子や小宮山聖も迎えて新たなバンドの姿を示す(写真10枚) https://t.co/JXE67fOBU4

コメントを読む(20件)

リンク

あなたにおすすめの記事

このページは株式会社ナターシャの音楽ナタリー編集部が作成・配信しています。 フィッシュマンズ / LITTLE TEMPO / OKI DUB AINU BAND / ヒックスヴィル / クラムボン / chelmico / ザ・カスタネッツ / 映画:フィッシュマンズ の最新情報はリンク先をご覧ください。

音楽ナタリーでは国内アーティストを中心とした最新音楽ニュースを毎日配信!メジャーからインディーズまでリリース情報、ライブレポート、番組情報、コラムなど幅広い情報をお届けします。