フィッシュマンズ台湾での初海外ワンマン盛況、満員の会場に鳴り響いた「マオ・ムー」コール

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フィッシュマンズが10月11、12日に台湾・Legacy Taipeiにてワンマンライブ「Uchu Taipei Fishmans」を行った。

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」の様子。(撮影:苗嘉澍)

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」の様子。(撮影:苗嘉澍)

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2010年代の中盤より、ネットを中心に海外の音楽ファンの間で草の根的に知名度を高めていたフィッシュマンズ。2018年8月に各種ストリーミングサービスで楽曲配信がスタートすると彼らの楽曲は瞬く間に世界中に広がっていった。フィッシュマンズ初の海外ワンマンとなった今回の台湾公演にも、サブスク解禁以降に彼らを“発見”したであろう20代が中心とおぼしき多くのファンが詰めかけ、満員の会場には開演前から大きな期待が渦巻いていた。本稿では初日公演の模様をレポートする。

「We Are Not City Pop!!」

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」の様子。(撮影:苗嘉澍)

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Nujabesがリミックスを手がけたクラムボン「Folklore」が流れる中、メンバーの茂木欣一(Dr, Vo)、バンドメンバーのHAKASE-SUN(Key)、木暮晋也(G / ヒックスヴィル)、関口“dARTs”道生(G)、原田郁子(Vo / クラムボン)、そして病気療養中の柏原譲に代わりベーシストを務めるミト(クラムボン)がステージに登場。青いバックライトが6人のシルエットを神々しく照らし出す。すると寂寥感漂うギターの旋律に乗せて「いかれたBaby」を歌う佐藤伸治(Vo)のメロウなボーカルが会場に響き渡る。これは佐藤の生前最後のライブを収めたアルバム「98.12.28男達の別れ」に収録されたライブ音源だ。佐藤の歌声に静かに耳を傾ける観客たち。そして佐藤がイントロの一節を歌い終えた刹那、茂木のドラムを合図に楽曲は生演奏に移行し、フィッシュマンズの記念すべき海外初ワンマンはドラマチックに幕を開けた。古い倉庫を改装したという味わい深い会場にゆったりとしたダウンビートが響き、スイートなメロディに乗せて届けられる茂木と原田の歌声を耳に、観客たちは思い思いに体を揺らす。同じくレゲエのリズムを基調とした「MAGIC LOVE」を経て、この日最初のMCへ。茂木は「多謝、台北!」という挨拶に続けて、初めて海外でフィッシュマンズのワンマンライブを行うことができた喜びを満面の笑みで語る。そして一拍置いて彼が「We Are Not City Pop!!」と力強く宣言すると、大きな歓声が沸き起こった。

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:苗嘉澍)

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浮遊感漂う「なんてったの」に続けて、「感謝(驚)」が届けられるとグルーヴィなサウンドに会場の熱気が高まっていく。「頼りない天使」演奏後のMCでは茂木がメンバーの漢字名を現地の読み方で紹介。「グアン・コウ・ダーツ・ダオション(関口“dARTs”道生)」「ムー・ムー・ジンイエ(木暮晋也)」「ユエン・ティエン・ウィーズ(原田郁子)」に続けて、茂木が「マオ・ムー・シンイー(茂木欣一)」と自己紹介すると、原田が観客を煽り、盛大な「マオ・ムー」コールが発生した。

「LONG SEASON」で場内の空気が一変

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」の様子。(撮影:苗嘉澍)

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関口“dARTs”道生(G)と木暮晋也(G)。(撮影:苗嘉澍)

関口“dARTs”道生(G)と木暮晋也(G)。(撮影:苗嘉澍) [拡大]

「ここから、さらにみんなをフィッシュマンズの深い世界に連れて行くよ」という茂木の言葉を合図にライブは中盤に突入。フィッシュマンズは「Smilin' Days, Summer Holiday」「Weather Report」を続けて演奏し、高揚感あふれるサウンドで観客を楽曲の世界に引き込んでいく。そして「Weather Report」のアウトロと潮騒の音が徐々に重なり、この日のクライマックスである「LONG SEASON」の演奏に。関口が奏でる印象的なギターフレーズが鳴り響くと、「ついに来た……!」とばかりにどよめきが起こり、会場の緊張感が一気に高まっていく。一瞬で変化した場内の空気が、「LONG SEASON」が台湾においても特別な楽曲として認知されていることを如実に物語る。張りつめた空気の中、ゆっくりと楽曲は進行していき、スリリングに様相を変えていくサウンドが静かな興奮を生み出していく。

茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:苗嘉澍)

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茂木欣一(Dr, Vo)(撮影:苗嘉澍)

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楽曲の中盤では茂木が壮絶なドラムソロを披露。彼の鬼気迫るパフォーマンスに、観客たちは息をのむように、じっと見入っていた。楽曲は本編に戻り、幾度かのリフレインを繰り返し、やがてフィナーレに向かう。演奏が終わるやいなや、「僕ら半分 夢の中」という歌詞さながら、夢と現実の間をさまようような40分におよぶ音の旅を“体感”した観客たちから、ステージに割れんばかりの拍手喝采が寄せられた。本編最後に届けられたのはデビューシングル「ひこうき」。フィッシュマンズは、ロックステディの軽快なサウンドで祝祭的なムードを作り上げてステージを後にした。

一度は断念した台湾公演への思い

盛大なアンコールに応えてメンバーが再びステージに登場。ここで茂木は「ちょっとだけ、みんなとおしゃべりしたいなと思って」と通訳の“マーちゃん”をステージに呼び込む。海外での初ワンマンを目前にベーシストの柏原が病気療養を余儀なくされ、一旦は台湾公演をあきらめたが、「フィッシュマンズの音楽を届けてほしい」という柏原たっての願いから公演が実現したこと。そんな柏原の代役としてクラムボンのミトが参加することで、今回のステージが成立していることなど、茂木は自らの思いを観客に向けて一言一句、丁寧に届ける。急遽フィッシュマンズのサポートを務めることになったミトは、演奏曲のライブ音源を複数聴き比べるなどして練習を重ね、柏原特有のタイム感を徹底的に体に叩き込みライブに臨んだのだという。そんな彼のプレイを称えるべく、客席から大きな拍手が寄せられた。

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」の様子。(撮影:苗嘉澍)

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茂木は「このステージには僕ら6人はもちろん、佐藤くんも、バイオリンのHONZIも、今がんばってる譲も、みんなで一緒に立ってるつもりで今日は演奏しています」と、ともに歩みを続けてきたメンバーへの思いを伝える。そして「みんなと、とびきりの曲で心をひとつにしたいと思います」という彼の言葉からバンドは「ナイトクルージング」を演奏。「UP&DOWN UP&DOWN SLOW FAST SLOW FAST」というフレーズを観客たちが合唱し、ライブは終盤でさらにエモーショナルな展開を見せる。演奏後のメンバー紹介では再び「マオ・ムー(茂木)」コールが発生。茂木が「マオ・ムーは幸せです!」と笑顔で客席に語りかけたのち、フィッシュマンズは最後に「チャンス」を演奏。記念すべき海外での初ワンマンに晴れやかなムードで幕を下ろした。

バックステージでのメンバー集合カット。(撮影:苗嘉澍)

バックステージでのメンバー集合カット。(撮影:苗嘉澍) [拡大]

セットリスト

フィッシュマンズ「Uchu Taipei Fishmans」10月11日 台北 Legacy Taipei

01. いかれたBaby
02. MAGIC LOVE
03. なんてったの
04. 感謝(驚)
05. 頼りない天使
06. Smilin' Days, Summer Holiday
07. Weather Report
08. LONG SEASON
09. ひこうき
<アンコール>
10. ナイトクルージング
11. チャンス~Epilogue

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読者の反応

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clammbon mito @micromicrophone

先週の #FISHMANS 台湾公演、

初日のレポートがUPされてます。

写真を見た瞬間、

あの時の張り詰めた緊張感が一気に思い出されて

身構えてしまうのは、

それだけ集中して演奏できた

結果なのかもしれないです。

改めて、この機会に心より感謝します。

https://t.co/6umSlzgS4p

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